• ホームHome
  • 教育学部
  • 【開催報告】【2025.9.19】定例オンラインセミナー講演会No.185「実践に活きるメンタリング:教師教育の基礎から現場の具体例まで Teacher Educators as Mentors: Models and Practices」を開催しました

【開催報告】【2025.9.19】定例オンラインセミナー講演会No.185「実践に活きるメンタリング:教師教育の基礎から現場の具体例まで Teacher Educators as Mentors: Models and Practices」を開催しました

広島大学大学院人間社会科学研究科「教育ヴィジョン研究センター(EVRI)」は、2025年9月19日(土)に、定例オンラインセミナー講演会No.185「実践に活きるメンタリング:教師教育の基礎から現場の具体例まで Teacher Educators as Mentors: Models and Practices」を開催しました。大学院生や研究者を中心に32名の参加者が集い、活発な議論が交わされました。今回はイスラエルからリリー・オーランド=バラク教授(ハイファ大学)を招聘し、国際的視野を取り入れた意義深いセミナーとなりました。

はじめに司会の川口広美准教授(広島大学)より、本セミナーの趣旨が説明されました。今回のセミナーでは「メンタリング」というキーワードを軸に、教育実習でよく用いられる従来の理解にとどまらず、ティーチング(「こうすべき」を教える行為)とは異なる、答えのない課題に対して経験を分かち合いながら「どうしたらよいか」を共に考えるプロセスとしてのメンタリングの概念が紹介されました。この視点を通じて、研究授業後の協議会や同僚との振り返り、新任教師への声掛けなど、教育現場における多様な実践にメンタリングの考え方を適用できることが示されました。参加者には、日常の実践を振り返りながら、「どのような教師を育てたいか」を再考する機会として位置づけられました。

趣旨説明をする川口広美准教授

続いて、ゲスト講師であるリリー・オーランド=バラク教授が登壇し、メンタリング概念と教師教育における多様なアプローチについて講演されました。教授は、従来の「経験豊富な教師と初心者教師の間に生まれる専門的成長を促す関係」という定義から出発し、メンタリングを「答えのない問いを共に考え、経験を分かち合うこと」と再定義しました。また、トップダウン型で「有効な教師を育成する」モデル、ボトムアップ型で「個人の成長を重視する」モデル、協働的・社会的構成主義に基づくモデルなど、多様なアプローチが存在することを整理し、それぞれが異なる教師像―「効果的な教師」「省察的な教師」「探究的な教師」「変革的な教師」―に結びつくことを示しました。
講演では、具体的なメンタリング事例も紹介され、言葉で示される理論と実際の実践の間には常にギャップが存在すること、そのギャップを意識化し省察する重要性が強調されました。参加者は、メンターとメンティーがどのように関係を築き、互いの成長の契機を見出していくのかを、実際の会話例を通して理解することができました。

講演するリリー・オーランド=バラク教授

フロアディスカッションでは、「大人数教室でのボトムアップアプローチの難しさ」や「1つのタイプに当てはまらない場合の対応」など、現場での具体的な課題に関する質問が出ました。教授は、単純にトップダウンかボトムアップかを選ぶのではなく、ギャップがなぜ生じるのか、なぜ混合型になってしまうのかを考えることが重要であると回答しました。こうした議論は、参加者にとってメンタリングの理解を深めるだけでなく、自身の教育実践の省察を促す契機となりました。

質問する南浦涼介准教授

ディスカッションの様子

また、吉田成章准教授(広島大学)からは、理論的整理と実証的データが統合された今回のセミナーにより、メンタリングという概念の理解が飛躍的に明確になったとの感想があり、今後も継続的な議論の必要性が確認されました。最後にオーランド=バラク教授は、ギャップに真摯に向き合い、自覚的になることの重要性を強調し、教育実践を支えるメンタリングの意義を改めて示して、セミナーを締めくくりました。
今回のセミナーは、教師教育におけるメンタリングの多様な可能性を明らかにするとともに、日常の教師教育実践における省察と成長の重要性を参加者に示す貴重な機会となりました。国際的視野を取り入れることで、参加者は国内外の教育実践を比較・参照しながら、自身の教育観をより深めることができました。EVRIでは、今後もこのような議論を継続し、教育実践と研究を結びつける場の提供に取り組んでまいります。

コメントする吉田成章准教授

当日の様子はこちらをご覧ください。
 

【問い合わせ先】

広島大学教育ヴィジョン研究センター(EVRI) 事務室

E-Mail:evri-info(AT)hiroshima-u.ac.jp
​※(AT)は@に置き換えてください


up