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広島大学大学院人間社会科学研究科「教育ヴィジョン研究センター(EVRI)」の共催で、2025年10月22日(水)に、定例オンラインセミナー講演会No.187「教科教育学と教育学をつなぐ ―教科教育学における授業研究の意義-」を開催しました。大学院生や研究者を中心に43名の皆様にご参加いただきました。
はじめに、司会の久保研二准教授(広島大学)より、本セミナーの趣旨が説明されました。一般教育学における授業研究と教科教育学における授業研究の違いについて説明され、教科教育学における授業研究の意義や果たす役割、課題について議論していくことが本セミナーの目的であることが共有されました。同時に、WALS2025広島大会で行われるシンポジウムのプレイベントであるという位置づけも説明されました。
趣旨説明をする久保研二准教授
次に、中島寿宏氏(北海道教育大学) より、「子ども理解を軸とした授業研究の再構築:体育科における国際的Lesson Studyの展開」という題で話題提供がありました。発表では、体育授業における言語的・非言語的なやり取りを対面検知データ解析システムによりデータ化・可視化し、児童生徒の相互作用や教師の働きかけの効果を客観的に捉えることで授業改善に繋げる事例について紹介がありました。これらの事例を通して、従来の観察記録を基にした授業省察に加えて、エビデンスに基づく授業省察の可能性について提案がありました。
講演する中島寿宏氏
次に、影山和也准教授(広島大学)ならびに、真野祐輔准教授(広島大学)より、「日本の数学教育研究者は学校での授業研究にどのように取り組んでいるのか」というテーマで話題提供がありました。
影山准教授からは、「大学附属学校および公立学校の事例検討」という副題で、研究者がどのように授業研究に関わるのかについての説明がありました。そのなかで、授業研究への研究者の関与は、校内研修・公開研究大会(地域的、全国的)のような当事者集団のスケールによって役割や仕方が変わるとのまとめがりました。
真野准教授からは、「Boundary objectの視点から」という副題で、異なるコミュニティ間で共有されるが、異なる解釈が可能な概念やモノであるBoundary objectと、異なる社会的・文化的実践の場を横断するプロセス、また、Boundary(境界)に立つ人の学習・変容プロセスであるBoundary Crossingという概念からの授業研究に関する考察がありました。
講演する影山和也准教授
講演する真野祐輔准教授
次に、米沢崇准教授(広島大学)ならびに、渡邊巧准教授(広島大学)より、「日本の小学校教科におけるレッスンスタディの意義の再検討:子どもを中心とした生活科に焦点を当てて」というテーマで話題提供がありました。そのなかで、お二人からは、教師が生活科における授業研究の意義をどのように捉えているのか、また、生活科における授業研究が、「専門家の学習共同体」の形成だけでなく、授業(教材)づくりやその改善にどのように寄与しているのかについて、二人の教師の事例をもとに報告がありました。
米沢崇准教授
講演する渡邉巧准教授
以上を踏まえて、百合田真樹人氏(独立行政法人教職員支援機構) より、「授業研究」の第一義である授業そのものを良くすることをめぐって、各先生へ対してコメントがなされました。
中島氏へは、データ収集の倫理性、煩雑性、負担についてと、他教科への転用性についての問いが共有されました。
影山准教授、真野准教授へは、数学的活動の良さの判断基準についてと、Boundary objectの中でも一定の概念共有は必要ではないかという問いが共有されました。
米沢准教授、渡邊准教授へは、授業研究から導かれた教材の “来歴”をどう記述して共有していくのかといった問いが共有されました。
討論する百合田真樹人氏
また、話題提供者すべてに、授業研究をStudyとResearch、どちらとして捉えるのかということについても質問があり、久保准教授をファシリテーターとして、上記の質問と合わせて各話題提供者とのディスカッションが行われました。
さらに、百合田氏からは、授業研究について授業そのものを良くすることと見直すことは、原点回帰ではなく、拡張的再定位であるとのコメントがありました。
ディスカッションの様子
最後に、久保准教授より挨拶があり、本セミナーが締めくくられました。
当日の様子はこちらをご覧ください。
広島大学教育ヴィジョン研究センター(EVRI) 事務室

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