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【広域交流型オンライン学習】【2025.10.22】「人と人とのコミュニケーション―「やさしい日本語」の本当の「やさしさ」とは?―」をテーマとする遠隔授業を実施しました

広島大学大学院人間社会科学研究科「教育ヴィジョン研究センター(EVRI)」は、内閣府「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」の一環として、「デジタル・シティズンシップ・シティ:公共的対話のための学校」プロジェクトに取り組んでいます。

概要

  2025年10月22日(水)、東広島市内小学校3校9学級(平岩小学校、豊栄小学校、龍王小学校)、広島市立基町小学校1学級、北海道厚沢部町立館小学校1学級、SSR、フレンドスペース、スクール“S”、島われんきゃハウスの子どもたち、計287名が参加し、遠隔授業を実施しました。授業の主題は「人と人とのコミュニケーション―「やさしい日本語」の本当の「やさしさ」とは?―」。本授業では、「やさしい日本語」というフレーズを手がかりに、多言語化・多文化化の進む社会における外国人とのコミュニケーションについて考えました。授業の全体進行は広島大学の南浦涼介准教授と草原和博教授が担当し、各教室の進行は学級担任が担当しました。

授業の全体進行をする南浦准教授と、各学級の進行をする学級担任

ウェビングマップで「やさしい日本語」の「やさしさ」を表現

導入:外国の人とどう話す?

 授業の導入では、日本に住む外国人の数や割合、言語に関する○×クイズを通して、社会が多言語化・多文化化している現状を確認しました。例えば、「東広島市の人口の約20人に1人は外国人だ(○)」「基町小は学校の半分以上が外国につながる友だちだ(○)」などの問いに、子どもたちは驚きや関心をもって反応。自分たちの身近に外国人が暮らしていることが共有されました。
 次に、南浦准教授は「外国の人と話すとき、あなただったらどうやって話す?」と発問。子どもたちは「英語」「日本語」「ジェスチャー」「翻訳アプリ」といった4つの方法を提案。これらの提案をもとに「外国人と話すとき、あなただったらどうやって話すか」アンケートをとりました。結果は「英語」を使うと答えた人が20.2%、「日本語」が11.8%、「ジェスチャー」が17.2%、「翻訳アプリ」が50.7%。授業を参観していた大人にも同じアンケートをとったところ、「英語」が50%,「日本語」が0%、「ジェスチャー」が25%、「翻訳アプリ」が25%でした。子どもも大人も「日本語」を使おうと考えている人が少ないということが分かりました。
 ここで、市役所職員が外国人に対応している動画を視聴。職員が日本語で対応する映像が提示されました。予想とは違って日本語で話していることに気づいたところで、学習課題「私たちはどんなふうに外国の人と日本語で話せばいいのだろう?」が提示されました。

外国人と話すとき、どう話す?

大人は日本語を使わない?!

展開1:どうして外国の人に日本語で話すの?

 導入を踏まえ、児童たちは「どうして市役所の人は外国人に日本語で話しているのか?」という問いに向き合いました。まずは予想を立て、「日本語を話してみて、日本語が通じたから」などの理由が出されました。そのうえで、「日本語がどれくらい話せますか」に関する資料を見て、多くの外国人が「だいたい話せる」「少し話せる」と回答していることを確認しました。
 ここで、市役所に中継をつなげて、動画に登場した職員の方にお話を聞きました。職員の方は、「基本的には日本語で話している」「外国の人と言っても英語を使える人ばっかりじゃない」「英語よりむしろ日本語の方が得意という人が多い」「実は私はほとんど英語が話せない」「難しい言葉を使わないなどの工夫をした『やさしい日本語』を使っている」といったことを教えてくれました。こうして、外国人に対して、なるべく分かりやすく簡単な「やさしい日本語」で話すというコミュニケーションの仕方があることを知ることができました。

「日本語がどれくらい話せますか」から気づくことは?

「やさしい日本語」について教えてくれた市役所の若村さん

展開2:いろいろな「やさしさ」を見つけよう
 

 授業の後半では、「やさしい日本語」の具体的な工夫や「やさしさ」の在り方について、子どもたちは複数の事例を通して考えを深めていきました。まずは市役所職員の動画を再度視聴し、気づいた「やさしさ」をスプレッドシートに書き出していきました。子どもたちは、「難しい言葉を使わない」「手を使っていた」「ゆっくり区切って」といった「やさしさ」を指摘しました。続いて保育園の先生の話し方に注目し、子どもたちは「ゆっくり、はっきり話す」といった市役所職員と似た工夫や、「分かっているか確かめる質問をする」といった新たな工夫を見出しました。
 さらに、少し異なる観点からの「やさしさ」として、水産会社の社長の話し方を検討しました。動画では、社長さんがぶっきらぼうにも聞こえる口調で外国人従業員に指示をしていました。社長さんはやさしいと思うかアンケートをとると、59.1%の子どもが「社長さんの話し方はやさしくない」、40.9%が「やさしい」と答え、「やさしくない」と考える子どもの方がやや多数派であることがわかりました。子どもたちは「注意をしていたのでやさしくない」「厳しい」といった意見もありましたが、「ガミガミ言っていないのでやさしい」という意見もありました。
 ここで、社長に話し方についてインタビューした動画を共有。社長さんは「一番頭に話したい相手の名前を呼ぶ」「分かりやすいように、『今日』『これ』くらい短く」「喜怒哀楽を大事にしている」「標準語よりも方言の方が覚えやすい」などの工夫を語りました。インタビューを聞いて子どもたちは、「働く人のことを考えている」「言い方は厳しいけど心はやさしい」と感想を述べました。このように、児童は複数の立場・状況における「やさしさ」を比較しながら、「やさしい日本語」とは単なる言い換えや簡素化ではなく、相手への親切心や思いやりに根ざしたコミュニケーションであることに気づいていきました。

AIでみんなの意見を紹介するよ!

水産会社の社長さんは「やさしい」…?

「やさしくない」派が多いかも?

実は社長さんは「やさしい」かも!

終結:「やさしさ」って何だろう?
 

 授業の終盤では、ウェビングマップを作成することを通して、「やさしい日本語」の「やさしさ」を自分たちの言葉で整理する活動を行いました。各学級の板書には、「やさしい日本語」というキーワードを中心に、「ゆっくり」「ていねい」「体調を気にする」「笑顔」「相手のことを考える」など多様な表現が書かれていきました。子どもたちはこれまでの学びを踏まえて、「わざ」としてのやさしさから「親切心」としてのやさしさまで、多様な「やさしさ」を表現することができました。
 最後に、市役所の職員と再度中継でつながり、子どもたちが考えた「やさしさ」についてコメントをいただきました。職員の方は、「わざと気持ち,両方大事」「実物を見せながら話す」「外国の人だけでなく、お年寄りや新入生にもやさしい日本語を使ってほしい」と述べました。市役所職員の方のコメントを受けて、南浦准教授は「どんな時、誰に対して、やさしい日本語を使えそうだなって思いましたか?」と問いかけて、授業を締めました。
 

外国につながる子どもの多い学校の「やさしい日本語」

「ふわふわ言葉」という表現も!

みんなのアイデアを短冊に書いてまとめたクラスも!

最後はギャラリービューでお別れ!

多文化共生社会に向けて

 今回の授業では、「やさしい日本語」というキーワードを手がかりに、子どもが他者への配慮を意識しながら、ことばの使い方やコミュニケーションの在り方について主体的に考える姿が見られました。特に、日常の会話の中にある「やさしさ」について多様な立場の話し手から学び、自らの気づきと結び付けて言語化できていました。
 近年、社会の多言語化・多文化化が進行しています。実際に今回の参加校の中にも外国につながる児童生徒が在籍する学校がありました。こうした多文化社会において、児童が「わかりやすく伝える」わざや、「相手に合わせる」といった親切心をもってコミュニケーションしていくことは、多文化共生を支える大切な一歩です。引き続きNICEプロジェクトは、言語的・文化的な背景を越えて人々がつながることのできる社会づくりの学びを提案してまいります。

当日の様子はこちらをご覧ください。
プロジェクト全体についてはこちらをご覧ください。

【問い合わせ先】

広島大学EVRI-SIP運営オフィス

Email:sipstaff-evri(AT)ml.hiroshima-u.ac.jp
※(AT)は@に置き換えてください

電話:082-424-6809


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