Vol.30 「パリ本部でのユネスコインターンシップ報告」
名前: 周 欣トン
所属: 医系科学研究科 総合健康科学専攻 保健科学プログラム 博士課程後期2年
基金を活用し、国際連合教育科学文化機関 (UNESCO)へのインターンシップ※に参加。2024年2月~2024年7月の期間、UNESCOパリ本部で仕事に従事しました。

UNESCOインターンシップへの応募理由をおしえてください
私の研究領域は病院管理で、現在、主な研究プロジェクトとして患者満足度に関連するAIシステムの構築を進めています。専門は衛生統計学で、統計結果に基づく衛生管理や政策制定などを研究しています。
UNESCOの研修プログラムに参加した主な理由は、病院管理を専攻する博士課程の学生として、国際的なプロジェクトをどのように組織し、調整し、管理するかを知りたかったからです。また、UNESCOは統計学に関連する専門知識を持つ人材を求めており、私の得意分野と一致していました。これにより、私はUNESCOに自分の専門知識を提供すると同時に、UNESCOから国際プロジェクトの組織、管理、実行について学ぶ絶好の機会となると考え、インターンシップに応募しました。
UNESCOで担当した業務について教えてください
私はUNESCO社会人文科学部門のスポーツグループの中にある、Fit for Lifeプロジェクトチームに配属されました。インターンシップ期間中に、私は以下4つのプロジェクトと2つの国際会議に参加しました。
ゲームプラン | データ分析を行い、包括的なレポートをまとめました。このレポートは広く採用され、最終的なゲームプラン文書の重要な要素となりました。 |
グローバル調査アンケート | 今後のグローバル調査アンケートの設計と開発に携わりました。初期フィードバックを収集し、サンプルアンケートやデータ例を提供し、分析計画を策定しました。 |
KIN (知識とイノベーションネットワーク) | コンサルタントの選定から始め、プロジェクトの紹介PPTを作成し、今後のサブプロジェクトのトピック提案やアンケートツールのリストを作成しました。 |
QPE (質の高い体育教育) | 統計分析のサポートを行い、10のQPE関連指標の定義セットを開発しました。 |
CIGEPS会議 | 会議のPPTスライドを作成しました。 |
Change the Game会議 | アジェンダの作成に貢献し、イベント中の現地サポートを行いました。 |
私はFit for Lifeプロジェクトチームにおいて、今年最も重要な国際会議である「Change the Game」の準備作業に参加する機会を得ました。運営プロセスについては以下の通りです。
- 会議の開催日を決定し、その日程に基づいてタイムスケジュールを策定しました。「Change the Game」の会議は、2024年のパリオリンピック開幕式の直前、7月23日と24日に設定されました。
- 次に、日程を大まかに決めたら、会議の主旨に基づいて会議の内容やプロジェクトを確定します。この段階で私はいくつかのプロジェクトに参加しました。
- 会議で発表するプロジェクトが決まった後、作業を具体的な担当者に割り当て、それぞれのタイムスケジュールを作成します。
- その後、会議通知の発行、発言者の選定、詳細情報の共有、会議日程の策定、関係者への連絡、会場の設営、リハーサルなどを行います。
- 最後に、会議当日の役割とタスクを割り当て、会議を開催します。

Change the Game会議場
職場の雰囲気はいかがでしたか
UNESCOは、他の国連機関と同様に、17の持続可能な開発目標(SDGs)の達成を目指して取り組んでいる、世界的にトップクラスの非営利機関です。これらの目標をできるだけ早く達成するために、UNESCOの仕事のペースは非常に速く、プレッシャーも大きいです。
チーム内では、一定の競争がありながらも、お互いに協力し合い、共通の目標を達成しています。UNESCOには多くのインターン生やボランティアが在籍しており、私の所属する部署では半数がインターン生です。私たちは世界各国から集まり、異なる文化、信仰、認識を持ち寄ってUNESCOで深い交流を行い、互いの先入観を打破し、世界と自分自身についての理解を深めています。このような助け合いと学び合いの雰囲気は非常に良く、インターン期間中に20カ国以上のインターン生と出会い、深い友情を築きました。
インターンシップを通じて得たことや、その経験を今後どのように活かしていきたいか教えてください
今回のインターンシップで多くのことを学びました。「Change the Game」の準備過程では、前述のとおり、大規模な国際プロジェクトの運営プロセスについて具体的に学ぶことができました。
また、UNESCOでのインターンシップを通じて、世界各地から来た人々と楽しく深い交流を行いました。私たちは昼食や休憩時間に、様々な国際問題についてしばしば話し合い、互いのステレオタイプについても議論しました。その際、私たちはそれぞれの国や主義の「擁護者」ではなく、同じテーマに対する異なる見解を客観的に交換しました。
たとえば、私は当初、西洋諸国で「抗議」や「デモ」、さらにはストライキが頻繁に行われることに対して全く理解ができませんでした。これらは中国ではほとんど見られない現象です。同時に、西洋諸国の同僚も、なぜ中国には「抗議」や「ストライキ」がないのか、理解することが難しかったようです。
彼らは当初、「抗議」と「ストライキ」は自分たちの権利を守り、政府に変革を促すための有効かつ重要な手段であり、中国の人々にはそのような手段がない場合、政府に対してどのように権利を守るのかと私に問いかけました。私の答えは、中国の人々には政府に対して苦情や抗議を行うための多くの手段があり、「抗議」や「ストライキ」を推奨しないのは、それがしばしば集団的な暴力事件に発展し、問題解決に役立たないからだというものでした。その結果を避けるために、中国政府は平和的な手段が効果的に問題を解決できるように努めています。
私の見解は彼らに受け入れられ、彼らは中国の「問題を解決するためにより大きな問題を引き起こさない」という理念を理解しました。同時に、私も西洋の「抗議」が私の持っていた暴力的なイメージとは異なり、問題を解決するための正常で有効な手段であることを理解するようになりました。
このように、私たちは多くの面でイデオロギーの交流を行い、自分自身や他者、そして世界についての見方を変え、心と視野を広げました。
このインターンシップの経験を活かして、将来的にはWHOのような国連関連機関で働き続け、引き続き医療分野で力を尽くし、さらなる成果を上げたいと考えています。
ご寄付くださった方へ向けて
このたびのUNESCOのインターンシップに対するご支援、心より感謝申し上げます。
パリは非常に美しい都市ですが、その物価の高さも有名です。ご支援がなければ、生活費に悩まされるばかりか、財政的な負担からこの貴重な機会を諦めていたかもしれません。
もし、財政的な問題でインターンシップの機会を諦めていたら、今のように世界に対する認識が根本的に変わることはなかったかもしれません。
UNESCOでのインターンシップ経験は、「自分が望むどんな仕事でも得られる」という自信と明るい未来を私に与えてくれました。
ご支援がなければ、私はただの普通の博士課程の学生であり続けていたでしょうが、今ではまるで「繭から蝶へと変わる」ような自信を持っています。
改めまして、この度のご支援に心より感謝申し上げます。

UNESCOの日本庭園
(2024年11月取材/基金室)