vol35「国際学会 東亜詩学青年学者論壇暨碩博国際論壇へ参加して」
名前: 朝霧 健太
所属: 人間社会科学研究科 博士課程前期1年 (人文社会科学専攻 人文学プログラム)
基金を活用し、2024東亜詩学青年学者論壇暨碩博国際論壇へ参加。
参加した学会について教えてください。
本学会は、「東アジア」という視座のもと、中国・日本・韓国・ベトナムの4か国から修士・博士課程の学生および若手研究者が参加し、研究発表を行う学会です。発表内容は、各国における中国唐代(618~907年)の詩の受容(たとえば、日本の江戸時代においては李白の作品がどのように読まれていたのか、といったテーマ)についての研究を始めとし、幅広い唐代の詩に関する研究が取り上げられました。
ご自身の研究内容について教えてください。
六世紀の中国、梁王朝(502~557年)において、『文選』という詩文集が編纂されました。『文選』はとりわけ唐代において高く評価され、多くの人々たちは自らの創作の糧として、『文選』を学びました。その中には、杜甫のように後世に名を残す詩人も含まれています。
また唐代には、『文選』に収録された作品を理解するための注釈も次々と生まれました。唐代の詩人たちは、そうした注釈を参考にして『文選』を読み解き、その語彙や表現を自らの作品の内に取り入れていたと考えられます。したがって、『文選』とその注釈がいかに詩人たちに影響を与えたのか明らかにすることは、唐代の詩をより深く理解するうえで非常に重要です。
しかしこのような視点からの研究は、日本だけでなく中国においてもまだ十分に進んでいません。そこで私は「長恨歌」で知られる白居易(はくきょい)の盟友である、唐代の詩人・元稹(げんしん)(779~831年)を例に取り上げ、彼がどのように注釈を用いて『文選』の作品を解釈し、その語彙を受容していたのかを論証し、先行研究で指摘されていない点についても指摘することができました。幾分かはこの方面の研究の発展に寄与できたのではないかと思います。
今後は、調査の対象を広げて、元稹以外の詩人と『文選』の関係について調べていきたいと考えています。
学会での発表を終えての感想をお聞かせください。
今回の発表は、三分間という限られた時間の中で中国語を用いて行いました。短時間で自分の主張を的確に伝えるために、スライドと原稿の作成には非常に苦心しました。また、その過程で、自分の中国語による表現力の不足を実感することにもなりました。
実際の発表では、緊張や語学力の不足から、スライドをうまく操作できなかったり、原稿を読み間違えてしまったりと、反省点が多く残りました。もっと練習を重ねておくべきだったと痛感しています。
今回、国際学会という場を経験して改めて実感したのは、優れた研究能力はもちろん必要ですが、それだけではなく、研究内容を遺漏なく伝える力、そして海外の参加者と円滑にコミュニケーションを取るための語彙力(多くの場合は英語の能力、私の場合は特に中国語の能力)も非常に重要だということです。
また発表後は、ご臨席の先生方から貴重なご意見をいただき、大変ありがたく思っております。いただいたご助言を、今後の研究にしっかりと活かしていきたいと考えています。
将来の進路や展望を教えてください。
今回の学会では、自身の発表に対してご臨席の先生方から貴重なご意見を頂いただけではなく、他の参加者の発表からも多くの刺激を受けました。また、同世代の学生との交流を通じて、研究に対する多様な視点や考え方に触れることもでき、大変有意義な時間となりました。何より、国際学会の雰囲気を肌で感じることが出来たのは、今後の進路を考える上で良い経験だったと思います。今後研究を継続していく中で、再びこのような国際的な場に参加する機会もあるはずです。その際は、今回得られた教訓(自身の研究の問題点、中国語能力の向上の必要性、など)をしっかりと活かせるよう、日々努力していきたいと考えています。
寄付者へのメッセージ
この度はご支援いただき誠にありがとうございました。
海外へ渡航するには費用がかかるため、国際学会への参加は大変喜ばしいことである一方で、経済的には負担が大きいのも現実です。皆さまのご寄付のおかげで、そうした負担を気にすることなく、安心して国際学会に参加することが出来ました。
今回の学会では、自身の研究に関して貴重なご意見をいただくとともに、他の参加者の発表からも多くの学びを得ることができました。
皆さまのご支援に感謝を申し上げるとともに、そのご厚意にお応えできるよう、今後も研究活動に精進して参りたいと思います。
(2025年9月取材/基金室)

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