支援を受けた学生のご紹介

Vol.4 「思ってもみなかった方向へ人生が動き出す予感」

名前:上條 由建

所属:総合科学部国際共創学科2年

基金を活用し、広島大学短期交換留学(HUSA)プログラムへ参加。
フィンランド・ユヴァスキュラ大学へ2019年8月~2019年12月まで留学。

留学前に目標を設定されていたそうですね。

留学前に3つの目的を設定しました。1つ目は英語力の向上です。特にスピーキング能力がまだまだ低いため、より自然に英語を話せるようになりたいと思っていました。2つ目は、フィンランドの文化や国民の考え方を知り、日本と比較することです。フィンランドは他の欧米諸国と比較しても、コミュニケーション方法で日本と共通する点が多い国です。そのフィンランドの人々の考え方や文化を学び、日本の文化との比較を通じて良い点をフィードバックしたいと考えていました。3つ目の目的は、全く違った環境で自分を成長させることです。これまで長期間海外で過ごした経験がなかった私にとって、様々な文化的背景を持つ人々と交流し、これまでの自分の価値観を超えた視点を得ることはとても重要なことでした。

フィンランドでの生活はいかがでしたか。

私が留学したユヴァスキュラという街は、フィンランドのほぼ中央に位置しており、首都のヘルシンキから電車で3時間ほどの場所にあります。東広島市と同じくらいの人口ですが、中心部に住む人がそこまで多くないこともあり、とてもコンパクトな印象を受けました。夏の時期は天気も安定していて、とても過ごしやすかったです。しかし冬になるにつれて日照時間が短くなり、11月後半には日中が5時間程度となる上に常に曇っている状態でしたので、留学生はみんな日光不足に悩まされていました。ただ気温に関しては、フィンランドは「寒い」というイメージがあると思いますが、昨年はかなりの暖冬と言われており、東広島市の冬よりも少し寒いか同じくらいだったように思います。唯一マイナス20度を経験できたのは、フィンランド最北端の街へ旅行で行ったときです。この旅行では、運良くオーロラを3日連続で見ることができ、犬ぞりやスノーモービルも体験できたので、とても貴重な経験となりました。

設定した目標は達成できましたか。

ユヴァスキュラ大学では教育学部に所属し、フィンランドの文化に関する授業や教育に関する授業、英語力向上のための授業を受講しました。また授業以外では、留学生ネットワークや共通の友人を通じて、フィンランド人の学生や、多様な国からの留学生たちと交流しました。英語学習という点では、フィンランドの第一言語が英語ではないことが心配でしたが、実際は現地の人の多くが英語を流暢に話すことができ、留学生も英語でコミュニケーションを取る意欲がとても高かったため、行ってみるととても良い環境でした。特にヨーロッパ圏からの学生が多く、訛りや表現方法も人それぞれであるリンガ・フランカ(※共通語)としての英語を学ぶことができました。こういった交流を通して、課題であったスピーキング能力が向上し、英語でのコミュニケーションをためらわずに行えるようになりました。フィンランドの文化や教育を知る上では、授業が大きな役割を果たしました。例えば “Big and Small Talk about Finland”というクラスでは、学生が小グループに分かれ、それぞれのグループが自分たちでテーマを設定し、発表しました。他にも “Education in Finland”という授業では、フィンランドの教育に関連する制度・システムの全般的な知識や、それを支える「個別化」「信頼」「参加型」といった根本的な考え方の部分についても知識を深めました。授業以外でも、現地でお世話になった日本人大学院生のミニレクチャーにより、フィンランドの人々が重要視するものが「個人主義」「平等」ではないかと考えられるようになったことで、現地の文化への理解が深まりました。日々の生活では、私のフラット・メートはフランスから訪れた大学院生で、日常的な話題からお互いの専攻分野に関する専門的な会話まで、様々な内容を語り合いました。また料理を一緒に作り、授業のグループ課題を協力して行うなど、互いの文化や考え方を学び合うことができました。多くの留学生と関わることができたことで、様々な新しい価値観に触れることができました。特に日本で生活していた時は当たり前だと思っていたことが、他の国から来た学生には当たり前ではないことも多く、文化の差を強く感じました。「当たり前と思っていることは、何一つ当たり前ではない」。これは私の所属する国際共創学科のフンク教授の言葉ですが、まさにそれを実感しました。これらの経験で、より幅広い視点から物事を見ることができるようになったと思います。

留学を振り返っていかがですか。

今回の留学では、広島大学基金「株式会社ダイクレ冠事業」による海外留学奨学金から支援を受けることができました。奨学金による支援のない国の留学生も少なくない中で、恵まれた環境で留学をより一層有意義なものとできたことに感謝しています。留学中の4ヶ月間で得られた経験は非常に大きく、未だに完全な振り返りは終わっていません。これだけ多様な価値観があることに驚いたのと同時に、新しい情報に触れ、常に勉強し続けなければ「当たり前」の概念に縛られてしまう怖さを実感するものでした。しかし同時にこの経験から、自分の人生が思ってもみなかった方向へ動き出す予感がしています。今までと全く違った環境で過ごしたフィンランドでの留学は、一生忘れることのない経験となりました。

(2020年3月取材/基金室)

 


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