平成27年度講演会

第1回 「シリコンウェーハ技術とLSIの進化」 (平成27年11月7日)
酒井 勲美氏(元株式会社SUMCO 技術本部 技術企画部 担当課長)
平成27年度第1回「卒業生等を通した社会交流事業」講演会

  酒井氏は,1980年に大学院工学研究科材料工学専攻を修了後,日本電気株式会社においてCMOSプロセス開発や大容量Flashメモリの開発等に従事され,2007年から2015年9月まで株式会社SUMCOにて技術調査や顧客対応に携わってこられました。
  シリコンウェーハはスマートフォン等の色々な機器に使用されている半導体の基板となるものであり,シリコンは,安価で,良質な結晶が得られる,加工が容易である等の特長を持っています。
  まずシリコンウェーハの製造技術について,単結晶製造・スライス・面取り・平坦化・歪み除去・鏡面化・洗浄・検査の各過程を,動画を交えて紹介いただきま した。単結晶製造工程の説明では,高純度多結晶シリコンの99.999999999%という純度について,「約36,000人が1年間に食べる米粒の中に 1粒だけ麦が混じっている」という例を挙げて説明されました。
  次に,平坦化・大口径化・結晶欠陥制御・汚染排除・多様なデバイスへの対応といったウェーハ技術について説明されました。現在では,450mmの大口径ウェーハの開発が進んでいるということです。
  まとめとして,シリコンウェーハ技術はLSIの発展とともに高度化・多様化し,LSIの発展を支える重要な技術となっていること,シリコンウェーハはLSI産業にとって必要不可欠のものとなっていることを述べられました。
  最後に,経験から学んだこととして,経験から学んだこととして,英語の上達には英語を使用する環境に身を置くことが重要であること,研究・開発の着手前には特許を十分調査を行うこ と,基礎をしっかりさせた上で専門分野を深掘りしていくこと,人脈を大切にすること,健康を保つことを挙げられました。また,『菜根譚』の一部を引用し, 「若い時に訓練しておかなければ,世に出て立派なリーダーになることはできない」と話され,講演を締めくくられました。

第2回 「ある低温物理屋の閲歴 ~これまでを振り返り思うこと~」 (平成27年11月10日)
井澤 公一氏(東京工業大学大学院理工学研究科教授)
平成27年度第2回「卒業生等を通した社会交流事業」講演会

 井澤先生は、1998年3月に広島大学大学院理学研究科物理学専攻博士課程後期を修了され、東京大学物性研究所 助手、フランス原子力庁 マリーキュリーフェロー研究員を経て、現在は東京工業大学大学院理工学研究科の教授として主に異方的超伝導を研究されています。  博士課程後期を目指す学生には、ドクターとは必ずしもアカデミックポジションではない、必ずしも皆が必要なものではない、将来役に立つかもしれないし、立たないかもしれない、ドクターを取った後の展開を積極的に想像してみるとよいのではとおっしゃっていました。
最後に、次のようなメッセージで講演を締めくくられました。
  ・基礎が大切、その上に独創性
  ・討論のすすめ、独自の意見を持とう
  ・疑問をもとう!思考停止しない。
  ・失敗をしよう!
  ・そして何よりも“楽しもう”!
終始和やかな雰囲気の中、世話教員の鈴木教授との思い出話など楽しく聞かせていただきました。

第3回 「企業研究者としての10年」 (平成27年11月27日)
笹川 哲也氏 (株式会社東芝 研究開発センター 機能材料ラボラトリー 研究主務)(
平成27年度第3回「卒業生等を通した社会交流事業」講演会

 笹川氏は、広島大学理学 部物性学科から、本研究科量子物質科学専攻博士課程前期、さらに博士課程後期に進学し、磁性物理学研究室に所属していました。博士課程後期1年半で博士号 を取得後、学振特別研究員として希土類化合物の磁性研究を1年半継続しました。その間,研究者としての就職先としてアカデミックか企業か迷った末、別の世 界を見てみたいという思いから企業を選び,広大OBから誘いのあったカシオ計算機株式会社に入社されました。カシオ計算機では、水素燃料電池の研究開発に従事されていましたが、2年半後にグループの解散に伴って株式会社東芝に転職し、リチウムイオン二次電池の研 究開発に従事されてこられました。
  企業での研究とは、利益を得るためには完成させなければならないので、優秀な研究者は、新しいものを見出して、それを大きくして事業にするまでを成し遂げる。ご自身もそのようになりたいと述べられました。
また、笹川氏が研究活動で気を付けていることは、以下のとおりです。
○優先順位
○とことん考える、とことんやる
○「できない」とは言わない
  最後に、学生のみなさんへのメッセージとして、恩師である高畠教授から贈られた揮毫「夢」を掲げられ、すべての原動力は「夢」であり、何十年後かの夢を思 い描いて、それを実現するために、3か月後、半年後のあるべき姿を明確にし、今何をやるべきかを考えてみよう、と締めくくられました。

第4回 「栗田工業(株)における研究開発」(平成27年12月18日)
奥津 徳也氏 (栗田工業株式会社 開発本部 装置開発第三グループ 環境技術課)
平成27年度第4回「卒業生等を通した社会交流事業」講演会

 奥津氏は、京都大学を卒業後、2003年3月に先端物質科学研究科分子生命機能科学専 攻博士課程前期を修了し、栗田工業株式会社に入社しました。栃木県にあるクリタ開発センターにおいて、有機塩素系化合物で汚染された土壌および地下水の微 生物浄化、各種(電子、食品、飲料、化学)工場から出る廃水の微生物処理などを研究する傍ら、社会人学生として宇都宮大学で博士学位取得を目指しています。
  奥津氏の所属するクリタ開発センターでは、水の高機能化、資源循環、環境負荷低減、排水回収技術などの研究を行っています。半導体産業に欠かせない超純水の開発や、土壌・地下水浄化技術、液晶パネル工場などの排水回収技術の開発に取り組んでいます。
  また、社会人学生として学位の取得を目指すに至った経緯などをお話しいただきました。企業としては博士号の取得を推進しており、入社して研究部門に配属された時、多くの先輩や上司が学位を持っていたことに刺激され、社内の要件を満たすべく開発実績を上げ、論文を執筆するなど努力されたそうです。これから社会に出る学生たちには、社会人になってから学位を取るのは大変なので、できれば社会に出る前に取得しておいた方がいいとおっしゃっていました。

第5回 「高周波半導体技術:その未来と挑戦」(平成28年1月19日)
渡邊 祐氏 (株式会社デンソー 半導体回路開発部担当部長)
平成27年度第5回「卒業生等を通した社会交流事業」講演会

 渡邊氏は1982年に京都大学を修了後,富士通株式会社に入社され,富士通研究所にて化合物半導体およびシリコン半導体による高速・高周波半導体技術の研究開発を行い,富士通セミコンダクター社ではRF CMOS事業を展開されました。2013年からは,株式会社デンソーにてCMOSミリ波MMICの開発に従事されています。
  最初に,株式会社デンソーの紹介として,安全のための自動車のセンシングシステム等について動画を用いた説明があり,また,同社ではモーターや駆動装置と電子部品を併せて開発する「機電一体化」を推進していることについてお話がありました。
   次に,周波数により使用用途が法律で定められていることから,電波は有限の資源であると言えることや,高周波(ミリ波)応用技術は10年ごとに革新が進んでいることを話された後,ミリ波の特徴について説明されました。
   ミリ波は,大気による減衰があることや,透過性・直進性が特徴であり,空港のボディスキャナや自動車の衝突を軽減するシステム等に活用されています。
   まとめとして,ミリ波技術の動向と技術的課題について次のように説明されました。
   ・応用分野が交通や防犯などのセキュリティ方面に拡大している。
     最近では車載の高周波半導体技術にはシリコンゲルマニウム、そして今後はCMOSの半導体が採用されていく。
   ・低コスト化のためには実装技術や試験技術が鍵となる。
     顧客に対して,安価で信頼性が高く,高性能なものを作ることができるかが重要。

第6回 「最新アナログパワーLSIプロセス技術と次世代への取り組み」(平成28年1月22日)
三冨士 道彦氏 (ローム株式会社LSI生産本部LSI先端デバイス開発部 部長)
平成27年度第6回「卒業生等を通した社会交流事業」講演会

 三冨士氏は平成8年に本学大学院工学研究科博士課程前期材料工学専攻を修了後,ローム株式会社に入社され,平成14年にLSI生産本部 VLSI製造部 デバイス開発プロジェクト プロジェクトリーダー,平成16年にLSI生産本部 LSI先端デバイス開発部 FEプロセス開発G グループリーダーに就任され,その後,LSI生産本部LSI先端デバイス開発部課長,統括課長,副部長を経て,現在はLSI生産本部LSI先端デバイス開発部部長として活躍されています。
 本日の講演では,ロームの技術開発を中心に,社会的課題を解決しつつ企業価値を向上させるCSV(Creating Shared Value,共通価値の創造)や,学生に伝えたい事等についてお話しいただきました。
 最初に,CSVについて,世界は人口増・資源不足が進み,サステナビリティ(持続可能性)が重要になってきているため,半導体によってスマート社会の普及を支え,資源不足や高齢化に対応していくと説明されました。
次に,ロームが掲げる4つの戦略製品(パワーデバイス・LSIシナジー・センサネットワーク・LED)や垂直統合型ビジネスモデルについて紹介がありました。垂直統合型ビジネスモデルは開発から販売までを一貫して行う生産体制であり,これによって高品質な製品を安定して供給することができ,車載メーカー等から信頼を得ていると説明がありました。
 最後に,人生は計画通りにいかないため,行動を起こし,変化を感じ取り,良いと思う方向に自分を信じて動くことが重要であり,それがセレンディピティ(幸運に出会う能力)を生み出す鍵となると話されました。
また,広島大学での経験や環境は社会に出ても役に立っており,広大の環境は力を付けられる環境であると学生に向けて伝えられました。


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