松井駿(M1)

国際協力研究科開発政策専攻-博士課程前期1年(2016年3月現在)

派遣国:ネパール
派遣先:FORWARD Nepal (Forum for Rural Welfare and Agricultural Reform for Development)
派遣期間:2015.9.1~2015.10.10

1)派遣国について

ネパールは南アジアに属し、中国とインドに囲まれた内陸国です。世界一の高さを誇るヒマラヤ山脈を有していることは有名だと思います。しかし、その山がちな地形や資源不足等により、世界的にみても非常に開発が遅れている国の一つです。公用語はネパール語で、ヒンドゥー教徒が80%以上を占めています。また100以上もの民族が共存している国であり、インド系から日本人に似たチベット系の人たちまで様々です。そして、カースト制の慣習が未だに根強く残っており、カーストによる差別はこの国の大きな問題の一つとなっています。政治的情勢は不安定であり、現在でも、「バンダ」というストライキがしばしば起こっています。

 

2)現地での生活や文化について

ネパール人の基本的な食事は「ダルバート」という、ご飯と豆のスープに野菜の炒め物がついたものです。特に村の人たちは毎食これを食べています。日本人好みの味でおいしいのですが、村で1週間食べ続けたときは飽きました・・・。
インフラは整っていません。道路はガタガタで、停電は日常茶飯事です。
また、ネパールの人たちは日本人に対して非常にフレンドリーです。日本に興味がある人が多く、そういう人と仲良く話していたらたまにいいこともあります。そして、原爆のことを学校で習うそうで、広島のことをみんな知っていました。
スリ等に気をつける必要はありますが、全体的に治安は悪くないと感じました。
トイレでは水を汲んで、手を使ってきれいにします。村に行く時はトイレットペーパーを持っていったほうがいいです(ただ水方式の方がきれいになってスッキリするので、私はそっちのほうが好きでした)。
最後に、頻繁に起こるバンダの情報に注意して行動していました。

 

3)派遣先について

FORWARDは1997年に設立されたNGOで、農業支援などを通して、農村の貧しい人々や社会的弱者の生活支援を図ることを主な目的としています。活動場所は主にタライ平野(ネパール南部)であり、FORWARDの本部もチトワン郡という、タライ平野の真ん中に位置しています。
FORWARD本部には20人ほどのスタッフが働いており、皆フレンドリーでアットホームな雰囲気でした。特にトップのDr. Senはインターン生である私の身の周りのことを非常に気遣ってくれ、私の要望も快く聞いてくださいました。

4)研修内容について

主に、私の修論に関連した調査を行いました。ネパールには”leasehold forest”という、貧困層向けに政府から貸し出される森林があります。その管理能力向上のため、お金を使った経済実験と、家計調査の2つの方法を用いて、利用者の社会的な選好と家計の特徴について調査しました。

まず調査地を理解するため、日帰りで村に視察に行き、現地で森林がどのように利用されているかを学びました。その後、本部に戻り、FORWARDスタッフに助けてもらいながら、現地の情報を収集し、質問紙を作成しました。また、FORWARDにて経済実験調査の練習を行い、内容の改善のためにスタッフにアドバイスを求めました。その後、調査地である村に滞在し、調査員2人と協力しながら、96家計からデータを収集しました。調査後は、調査結果や研修のまとめをFORWARDにて発表し、研修を終えました。

全体を通して、多くの人を巻き込みながら進めていった研修でした。自分の意見をはっきりと伝え、人と関係を構築していくことが特に途上国においては重要だと学びました。

5)このインターンで1番得たもの

開発に対する自分なりの心構えを得ることができました。具体的には、「頭の柔軟さとシンプルさ」が開発において特に重要であると感じました。

私が行った経済実験は、村人に簡単なゲームに参加してもらうものでした。そのゲームの説明の仕方や設定は非常に重要な要素であり、「正確なデータを得るためには先行研究に倣って、ネパールでも同じような説明・設定で行わなければならない。」と私は考えていました。しかし、現地で実際に調査を行うと、①何度説明してもゲームを全く理解できないおじいちゃん、②ゲームに飽きて説明を全く聞いてくれない村人、③調査中に他の村人が大勢寄ってきて一時中断したことなど、多くの想定外の事態に直面しました。
結果として調査はうまくいかなかったのですが、このことから、今まで厳密にやろうとしていた自分の考え方が間違っていたことに気付かされました。開発においては、起こりうるあらゆる事態を想定する、またそれらに対応していく柔軟な頭を持つことが大切だと感じました。

また、村人に対するゲームの説明も、調査員に対する指示も、シンプルであることが大切だとも感じました。長々と話していては、飽きてしまって最後まで聞いてくれません。自分の言いたいことを正確に伝えるには、説明はシンプルに、かつその中にも伝えたい重要な部分は含める必要があると学びました。とても難しいことであるとは思いますが。

6)インターン経験を今後どのように生かしていきたいですか?

私は、来年から就職して国際協力に携わっていく予定です。上述しましたが、インターンで得た「頭の柔軟さとシンプルさ」という開発に対する心構えは、今後の仕事にも大いに役立つと感じています。また、仕事においては様々な国籍やバックグラウンドを持った、多くの人々の間に入り、案件をまとめていくことが予想されます。研修を通して学んだ「自分の意見をはっきり伝えることの重要性」が、関係構築に生かせると考えています。

 

7) 未来の派遣学生にむけて、事前準備や注意点などがあれば教えてください。

  • 日本人学生へ、ビオフェルミンを飲んでおいた方がよいです。特にネパールは衛生環境も良くないので、予め飲み続けていると環境に適応しやすいです。
  • 自己紹介程度の現地語が話せた方がいいです。村人は関心を示してくれますし、村人の協力が得られれば調査は進めやすいからです。
  • 上述しましたが、自分の意思ははっきり伝えた方がよいです。途上国では、何も言わないことには相手は動いてくれません。失礼かもしれないくらいにはっきり伝えることが重要だと思います。
  • 調査に関しては、事前に出来る準備はなるべく日本でしておいた方がいいです。途上国ではネット環境が十分でない、質問紙が印刷できないなど、様々な不便があるからです。

8) その他、「これはいいたい!」と思われることがあればご自由にどうぞ・・・

明確な目的を決めて、インターンに取り組んだ方がいいと思います。その方が、有意義な経験ができると思います。
G.ecboインターンは、基本的に研修内容は自分に任せられているため、自分次第で良くも悪くもなります。現地での時間は思ったよりもあっという間に過ぎてしまいますので、インターンの目的に絞って活動した方がよいと思います。

9) 後輩の方々へ一言メッセージを・・・

応募しようと考えている方へ

日本から飛び出して海外に滞在することは発見の連続であり、非常に刺激的です。特に、G.ecboプログラムでは普通の語学留学とは違い、自ら積極的に行動することが求められます。私はこのプログラムを通して深く現地に関わることが出来、視野が広がった気がします。ですので、少しでも興味があるなら早い段階で参加してはいかがでしょうか?

これから行かれる方へ

海外、ましてや途上国では上手くいかないことばかりだと思います。それが普通なので落ち込む必要はないです。そういう時は、自分は試されているのだと思って、前を向いてください!試行錯誤してもがいたその経験が、きっと将来に色々な形で生きるのだと思います。


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