内藤 真理子 副学長(国際研究担当)
私は広島大学歯学部で教育や研究、臨床に携わりながら、国際研究担当の副学長として、大学の国際連携を推進しています。異なる文化や社会背景をもつ人々と連携することで、課題解決の視点が広がり、学問の深化や新たな価値の創出につながります。専門の枠を超えた協働は、新たな発想を生み、組織全体を活性化させる原動力となります。
これまでの歩みをたどると、歯科医師として臨床に約10年携わったのち、臨床疫学を志し、公衆衛生分野の研究者として新たな一歩を踏み出しました。当初、自分がリーダーになることは想像していませんでしたが、一つひとつの仕事に向き合い、目の前の課題に取り組むうちに役割が広がり、今の立場に至りました。なかでも、多施設が協力して人々の健康を長期的に追跡する大規模共同研究の事務局運営に携わった経験は、組織運営を学ぶ第一歩となりました。多様な機関や専門家が連携する中で、調整や合意形成の重要性を体感し、後のマネジメントやリーダーシップの基盤となりました。
振り返れば、どの時期にも多くの方々との出会いや支えがありました。人とのつながりや学びの積み重ねが、今日の自分を形づくってきたと感じます。立場や分野を超えて協働する中で得られた経験の一つひとつが、今も日々の判断や行動を支えています。これまでに受けた多くの機会と学びに、深い感謝の気持を抱いています。また同時に、得た学びや支えを次の世代へつないでいくことが、自分にできる恩返しだと考えています。
管理職として意識しているのは、「聞く力」と「つなぐ力」、そして粘り強く取り組む姿勢です。困難な課題に直面した時、冷静に状況を見極め、対話を重ねながら最善の道を探る粘り強さが求められます。周囲の声に耳を傾け、異なる立場の人々を結びつけながら、組織としての持続的な成長を支えていきたいと考えています。リーダーシップには多様な形があり、強さだけではなく、しなやかさや共感力も求められる時代になっていると感じます。
キャリア形成において大切なのは、歩みを止めないことです。大きな転機は、日々の小さな積み重ねの中から生まれます。迷いや不安を抱くときも、自分の可能性を信じて進んでください。私がこれまで道を拓いてこられた方々から勇気をいただいたように、あなたの一歩が、次の誰かの一歩を支える力になります。多様な個性が輝き、互いに学び合いながら成長できる広島大学で、共に未来をつくっていきましょう。
(2025年10月掲載)
*所属・職名等は掲載時点のものです。