坂田 桐子 副学長(学生支援・ダイバーシティ担当)
私の専門は社会心理学で、大学院生の頃から「リーダーシップとジェンダー」を研究テーマの一つとしてきました。高校までは、生徒会長や部活動の部長を女性が務めることも珍しくなく、男女の間に学力や統率力などの能力差を感じたことはありませんでした。それにもかかわらず、大学進学後に社会へ目を向けると、女性のリーダーが極めて少ないという現象に素朴な疑問を抱いたことが、研究の出発点でした。
こうした研究を続けてきたせいか、40代後半で拝命した男女共同参画担当副理事をはじめ、心理学専門領域長、学生支援・ダイバーシティ担当副学長など、「長」の付く役職を務めることになっても、研究と大学運営を対立的なものとして捉えることはあまりなかったと思います。もちろん、大学運営に携わることで研究に使える時間は少なくなります。しかし、研究で得た知識を実践に活かし、実践から得た新たな知識や経験を再び研究に還元できると考えました。実際、大学運営に携わる中で、次の研究アイデアにつながる経験をいくつか得ることができました。
リーダーシップ研究の分野には膨大な実証研究の蓄積があり、様々な理論が提唱されています。その知識は私の中に蓄積されているのだから、あとは自分が置かれている状況を適切に把握し、それらをうまく活用すればよいのだろうと思っていました。しかし、最初に拝命した男女共同参画担当副理事の職は、教授昇任から1年も経たないうちの着任だったこともあり、右も左も分からないことばかりで、知識の応用どころではありませんでした。
所属部局の組織構造や制度をなんとなく理解している程度で、大学全体の組織構造などほとんど把握できておらず、全学の会議に出席するのも初めてという有様でしたから、苦労するのも当然です。ともかく与えられた役割を果たすことに精いっぱいで、まるで重たくて体に合わない「副理事を象った着ぐるみ」を着ているような感覚でした。失敗も色々ありましたが、学びも大きかったと思います。
あれから十数年が経ち、現在はさらに重たい「副学長」という役割を担っています。しかし心理的には以前より多少の余裕ができ、理論と実践の間を行き来することも、ある程度できるようになりました。また、求められる役割に自分を合わせるだけでなく、その役割の中に自分らしさを出していくことも、少しずつできるようになったと感じています。そのことが組織にとっても良い効果をもたらしていることを願っています。
私の研究テーマは少し特殊かもしれませんが、人文社会科学分野の研究者にとっては、大学運営に携わる経験が研究に新たな視点をもたらすことも少なくないように思います。また、自然科学分野の研究者にとっても、視野を広げ、研究チームの運営やマネジメントに役立つスキルを身に付ける機会になるかもしれません。もちろん、キャリアの選択は人それぞれです。しかし、そのような機会が巡ってきたら、是非一度、前向きに検討してみてはいかがでしょうか。
ちなみに、「リーダーシップ」とは、「組織・集団目標の達成に向けてメンバーの諸活動に影響を与える過程」であり、本来は組織や集団のメンバーであれば、役職の有無にかかわらず誰もが発揮できるものです。これはリーダーシップ研究分野において、ほぼ共通の認識となっています。組織や集団の目標やミッションを理解した上で、どうすればそれを実現できるかを考え、自ら行動を起こしたり、周囲の人々を巻き込んだりしているのであれば、それこそがリーダーシップの萌芽です。もちろん、その結果が組織目標の達成に効果的であったかどうかは別の問題です。しかし、たとえ効果的でなかったとしても、失敗から謙虚に学べばよいのではないでしょうか。まずはリーダーシップが発揮されなければ、目標達成に近づくこともできません。
あなたの知識、あなたの視点を活かして、あなたらしいリーダーシップを存分に発揮してください!
(2026年10月掲載)
*所属・職名等は掲載時点のものです。

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