宇宙で最も明るい爆発現象の謎が明らかに

宇宙で最も明るい爆発現象の謎が明らかに

―超高輝度超新星「SN2006gy」の正体はIa型超新星だった―

【本研究成果のポイント】

通常の超新星の10倍以上という飛び抜けて明るい超新星で見つかっていた奇妙なスペクトル線の正体が、新しい理論計算で判明しました。その明るさの正体は、秒速約1万キロもの速度で膨張するガスと、元々周りに存在したガスとの衝突による加熱によるものでした。

 

【概要】

広島大学宇宙科学センターの川端弘治教授、京都大学大学院理学研究科の前田啓一准教授、ドイツ・マックスプランク研究所およびスウェーデン・ストックホルム大学のAnders Jerkstrand博士の研究グループが、通常の超新星の10倍以上明るく輝いた超新星 SN 2006gy の正体を明らかにしました。本成果は、2020年1月24日に刊行される米国の学術誌「Science」に掲載されました。

 

【背景】

恒星の最期の大爆発である超新星は、宇宙の中でも最も明るく輝く激しい現象の一つです。近年、通常の10倍以上の明るさを持つ「超高輝度超新星」がいくつも見つかり、注目を浴びていますが、その明るさの原因は不明なままです。SN 2006gyは比較的よく調べられた超高輝度超新星の一つで、川端、前田らにより膨張速度が極端に遅い奇妙なスペクトル線も見出されていましたが、どの元素によるものか判らず、観測された特徴は謎に包まれたままでした。

 

【研究成果の内容】

スペクトル形成理論の進展から、上記の未同定スペクトル輝線がイオン化されていない中性の鉄元素によることを、今回初めて見出しました。鉄元素をたくさん生成するタイプの超新星が、大量の星周ガスが漂う中で爆発し、秒速約1万キロメートルで膨張するガスと星周ガスとの衝突で、ガスが高温になり、極めて明るくなったと考えれば、謎であった特徴が自然に解釈できます。

 

【今後の展開】

 このような現象は、小さくて高密度な白色矮星が、連星をなす相手である大きく膨れた赤色巨星の大気に触れることで、公転運動がブレーキを受け、大気をはぎ取りながららせん状に巨星中心に落ち込み、その最後に白色矮星が超新星爆発をすることで引き起こされた可能性があります。宇宙ではこういった星同士のダイナミックな相互作用が予想以上に多く引き起こされてきたのかもしれません。

 

【関連サイト】

 

【参考文献】

  • "A Type Ia supernova at the heart of superluminous transient SN 2006gy" (超高輝度超新星SN2006gyはIa型超新星により引き起こされた) Anders Jerkstrand, Keiichi Maeda, Koji S. Kawabata, Science (24 Jan 2020), 367, pp. 415-418 (2020)
  • "Extremely Luminous Supernova 2006gy at Late Phase: Detection of Optical Emission from Supernova", Kawabata, K. S., Tanaka, M., Maeda, K., Hattori, T., Nomoto, K., Tominaga, N., Yamanaka, M., The Astrophysical Journal, 697, pp. 747-757 (2009)

 

超新星 SN 2006gy の画像

図1.発見から約100日後の2006年12月25日にはSN2006gyが発生した銀河(NGC 1260)よりも明るく輝いているが、爆発後約400日後(最大光度から約300日後)の2007年9月17日は非常に暗くなり、銀河そのものの明るさにほぼ埋もれてしまっている。

図2.SN 2006gyの爆発後約400日経過したスペクトル(赤)と通常のIa型超新星の膨張物質のモデルを減速・圧縮したモデルから予想される理論スペクトル(青)。左上の図は、従来未同定であったスペクトル線群の波長域を拡大し、中性の鉄からの放射モデルと比較したもの。Jerkstrand,  Maeda, Kawabata の図を改編

図3.SN 2006gyが爆発に至る過程の想像図(Credit: Roberto Iaconi & Keiichi Maeda)。白色矮星と大質量星からなる連星系において、大質量星の伴星の進化に伴う膨張により白色矮星が飲み込まれ、外層を放出することで、高密度の星周物質を形成し、残された伴星コアと白色矮星が衝突・合体して超新星爆発を引き起こす様子を示す。


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