【研究キーワード】
うつ病、双極性障害、脳機能画像解析、バイオマーカー、機械学習、ニューロフィードバック
【最近のハイライト】
うつ病脳回路マーカーの再テスト信頼性と前向き汎化性を、脳回路マーカー完成後に取得した新規のデータを用いて行い、検証しました。今回、新規に取得したデータで、脳回路マーカーの信頼性や前向き汎化性を検証できたことは、臨床応用へ向けての大きな前進となります。現在、この脳回路マーカーを臨床現場で実用化するために、広島市内の8医療機関と共同して新たな特定臨床研究を行っています。今後研究が進めば、安静状態での10分間のfMRIの撮像が、うつ病の診断・治療選択に際して、有用な情報をもたらすことができるようになると期待されます。

【研究室主要論文】
・Resting-state functional connectivity disruption between the left and right pallidum as a biomarker for subthreshold depression, SCIENTIFIC REPORTS, 13巻, 1号, 20230418
・Examining the usefulness of the brain network marker program using fMRI for the diagnosis and stratification of major depressive disorder: a non-randomized study protocol, BMC PSYCHIATRY, 23巻, 1号, 20230124
・Verification of the brain network marker of major depressive disorder: Test-retest reliability and anterograde generalization performance for newly acquired data, JOURNAL OF AFFECTIVE DISORDERS, 326巻, pp. 262-266, 20230401
【教育内容】
近年の急速なグローバル化、悪化する雇用状況などを受けてうつ病、自殺が急増しています。また、急速な少子高齢化に伴って認知症が急増する一方で、数少ない子供たちにもいじめ、不登校、虐待、発達障害が社会問題化しています。「こころの問題」の重要性が認識され、精神疾患は5大疾患に位置づけられ、わが国の重要政策の一つとなっています。当科では講義および臨床実習を通じて精神科での基本的面接技法、診断分類法、コンサルテーション・リエゾン精神医学などの総論や、気分障害、統合失調症、不安障害、ストレス関連障害、器質性精神疾患、認知症などの各種精神疾患について教育を行っています。また医学研究実習においては研究を通じて最新の脳科学の知見に触れていただいています。
【研究内容】
気分障害(うつ病、双極性障害)、社交不安症、強迫症、統合失調症および健常成人、その中間段階にあるハイリスクの閾値下うつを対象として、MRI脳画像及び付随する臨床データ等(臨床情報、ゲノム、生体試料等)を多施設共同研究により縦断的に取得し、AI技術を用いたデータ解析により、双極性うつとうつ病の鑑別法、治療反応性(臨床経過)の予測法、併存が多く重なり合いが指摘される5疾患のMRI回路にもとづくバイオタイプなどを提案することを目指しています。また、ハイリスクの閾値下うつから閾値上うつ(うつ病発症)への変化を捉え、そのメカニズムを明らかにします。
うつ病の脳回路バイオマーカーを効率的に調整する非薬物治療法としてのニューロフィードバック治療法の開発や、幼少期の不遇な体験を持つうつ病に特異的な神経回路異常に関して、モデル動物を使った精緻な神経回路情報を取得し詳細なメカニズムを明らかにする研究も行っています。

