【研究キーワード】
ウイルス性肝炎、抗ウイルス療法、脂肪肝、肝硬変、肝がん、門脈圧亢進症
【最近のハイライト】
C型肝炎ウイルス持続感染者に対する抗ウイルス療法は、目覚ましい発展を遂げ、慢性肝炎症例から線維化の進んだ非代償性肝硬変症例まで治療を行うことができるようになり、95%以上の症例でウイルス排除が期待できます(非代償性肝硬変でも90%以上)。一方で、B型肝炎ウイルスの持続感染では、ウイルスの増殖制御は可能なものの、感染した肝細胞から完全にウイルスを排除することは困難です。現在、ウイルスが合成したmRNAを標的としたアンチセンスオリゴやウイルス粒子形成を阻害する化合物、免疫を活性化するようなワクチンなど多数の治療薬候補が同定され、治験が進められておりますが、劇的な効果を示す薬剤開発には至っておりません。そこで、現在、B型肝炎ウイルス感染後の肝細胞でどのような変化が生じているのかを明らかにするため、網羅的な遺伝子発現解析などの研究を進めております。また、治験や特定臨床研究にも積極的に参画しております。愛媛大学を中心としたワクチン療法は、先行研究において、一部のB型肝炎ウイルスキャリアではありますが、HBs抗原低下やHBs抗体獲得が認められました(Hepatol Res,2023)。現在、より多くの患者さんに投与し、効果を検証するための多施設臨床研究を進めており、広島大学病院もB型肝炎ウイルスキャリアを対象とした研究に参加しております。
近年、脂肪肝を合併した患者さんが世界的に増加しており、肝硬変・肝癌への進行対策は急務となっております。そのため、広島大学病院における症例データを蓄積し、肝臓の線維化進展や発癌に寄与する因子の解析を実施中です。
また、肝癌の診療においては、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害剤の開発に伴い、進行癌における治療選択の幅が広がってきました。しかしながら、治療の選択基準には施設によって見解が異なっております。そこで、広島大学病院および関連施設での症例データを蓄積し、最適な治療選択に向けた基礎・臨床研究を進めております。