米澤 隆弘 教授
基本情報
- 所属又は配属:大学院統合生命科学研究科
- 職名:教授
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研究者になるまでの軌跡
幼いころから、恐竜や進化などに大変に興味があり、図鑑や模型などをいつまでも飽きずに見ていました。大学では古生物学を勉強するために地球科学を専攻しましたが、在学中に分子進化学の本を読み、これまで漠然と抱えていた疑問が氷解していくような感覚を覚えました。そこで大学院からは生物科学分野で分子進化学を専攻にするようになりました。大学院では数千万年~数百万年の進化史を対象としましたが、学位取得後は、中国・上海の大学で職を得ることができ、ここで家畜の研究を始めました。そこから集団遺伝学・遺伝育種学へと研究テーマが拓けていきました。このように書くと一見大きく研究の関心が変わったように見えるかもしれませんが、実は「進化」という現象を異なる視点から見ているにすぎません。そして様々な角度から研究対象を見ることができるようになったのは、私自身にとって大きな財産であり、進路に迷いながらも興味を大切にしてきた結果だと感じています。
研究の魅力
現在は、世界の在来家畜や野生動物のゲノム情報を手がかりに、その集団の起源や歴史を解明する研究に取り組んでいます。自分自身の解析によって、これまで誰も知らなかった生物の歴史が見えてくることは非常にエキサイティングです。そしてまた同時にゲノム情報だけからは分からない様々な疑問もわいてきます。そこで形態学や古生物学、生態学、考古学などの専門家と議論を深めていきますが、それもまた研究の楽しさです。自分自身が研究指導をする立場になって思うことは、ぜひ学生たちにこの楽しさを実感してもらいたいということです。
ワークライフバランス
私は大学で研究・教育に携わる一方、二人の幼い子どもの父親でもあります。「研究と子育ての両立」について執筆を依頼されましたが、正直に言えば、「うまく両立できています」と胸を張って言える状況ではありません。むしろ日々感じているのは、両立とは完成された状態ではなく、崩れかけながら何とか維持されているプロセスだということです。
研究者の仕事には締切や評価指標といった明確な枠組みがあります。一方、子育てには予測不能な要素が多く、子どもの体調不良や感情の揺れ、家庭内の小さなトラブルは計画通りに進むことがほとんどありません。いくら時間管理を工夫しても、どちらかを優先すれば、もう一方に必ずしわ寄せが生じます。
特に子どもが小さい時期には、家庭内の役割分担が固定化しやすくなります。忙しさの中で「察してくれるだろう」と考えてしまい、結果として一方に負担が偏ることもあります。私自身、仕事を理由に家庭での役割を後回しにしてしまった場面があり、そのたびに問題の本質は能力や意欲ではなく、疲労によって互いの余裕が失われていることだと気づかされました。
私たち夫婦が意識しているのは、「無理をしない」ことよりも、「無理をしていることを言葉にする」ことです。時には子どもの前で言い争ってしまうこともありますが、その場合は必ず、子どもの前で仲直りするようにしています。衝突が避けられないなら、修復する姿も含めて見せることが、家庭の安定につながると考えているからです。
完璧な分担や理想的なバランスを目指すのではなく、その都度調整し直す。「今日は何とか回った」と感じながら一日を終える、その積み重ね自体が、今の私にとっての両立です。「うまくやれていない」と感じることは、真剣に向き合っている証拠であり、その感覚を否定せずに語れる環境が、研究者にとっても家族にとっても必要なのではないでしょうか。
学生へのメッセージ
私は、国内外の研究機関で、古生物学から分子進化学、ゲノム育種学まで、いくつかの分野を行き来しながら研究を続けてきました。必ずしも最初から明確な道筋があったわけではありませんが、自分自身の専門を深めつつ、隣接する様々な学問分野にも目を向けることで、気がつけば専門の見え方が広がり、理解も深まっていきました。皆さんもいま自分が取り組んでいることを精一杯深めていくと同時に、隣接するいろいろな分野の専門家と話してみましょう。研究対象を様々な角度から俯瞰することで、理解がより一層深まると思います。大学とは、それを存分に試すことができる環境です。フィールドに出て、実験をして、データを解析する。手と脚と頭をフルに使って、科学を楽しみましょう!
(2026年1月掲載)
*所属・職名等は掲載時点のものです。

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