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広島大学関東ネットワーク 第5回『フェニックス医療講座』実施報告

広島大学関東ネットワークと広仁会(医学部医学科同窓会)関東甲信越支部会は7月29日16時より、広島大学東京オフィス(東京・田町)の408号室で第5回目のフェニックス医療講座(今回より講座名にフェニックスを冠するように変更しました)を開催しました。

病気や健康は誰もが気になる話題です。
この医療講座は、病気とは何か、病気とどう向き合ったらいいのかというテーマでの卓話を、広島大学医学部出身の現役医師にお願いする会です。
それぞれがお持ちになっている専門分野の最新の知識と現場のご経験をお話しいただくことで、より広く深い医療の知識と正しい問題意識を持てるようになる、そんな場になることを目指しています。

第5回目の講師は、国立国際医療研究センターで国際医療協力局運営企画部長の要職にある仲佐保先生(1980年医学部医学科卒)にお願いしました。
「海外旅行時の予防と対処 こんな病気に気をつけろ!」という演題で、なにかと気がかりな海外での病気への対応についてご講演いただきました。

仲佐先生は広島大学を卒業後、ジョンズホプキンス公衆衛生大学校にて公衆衛生士(MPH)取得。
外科医として医師のキャリアをスタートさせます。

1981年の第8次カンボジア難民救援医療 チームへの参加を皮切りに、ボリビア、パキスタン、ホンジュラスなど20か国以上へ派遣され、現場で医療活動に従事。
現在は、多くの国で保健医療プロジェクトの団員として活動し、国際協力を担う 人材育成にも力を入れています(もう20年くらいメスを持っていないので、診療はちょっと、、、とも)。

最貧国での医療の現実に向き合い過酷な現場で人命を救う、ギリギリの経験を積んできた、いわば「ひとり国境なき医師団」です。
医者になった動機がまさしく世界での医療支援だったというのですが、夢の実現と引き替えに熱帯地域ではあらゆる病気にかかったと、冗談めかして経歴を語ります。
本当の意味で命がけの仕事だと、まずはそこに驚かされます。

講演のテーマは、旅行先での健康管理です。
どんな病気が起きるのか、ご自身の体験も踏まえながら事例と対策が語られます。

タイやカンボジアでは蚊に気をつけなければなりません。
マラリアやデング熱にかかるからです。

マラリアは発熱とともに頭痛と震え、デング熱は発熱が主だが、関節痛も伴います。
マラリアの蚊はきれいな水、デング熱は汚い水に多いので、特に都市部ではデング熱に警戒が必要です。

デング熱は有効な薬がなく、3日ほどで回復するのでひたすら静養すること。
マラリアは種類によっては死ぬ場合もあるので、症状が似ている風邪にかかったと思われたら医者にかかることです。

先生がエチオピアから帰国した際には、食欲がなくなり体がだるく、黄疸の症状が出たといいます。
これは食べ物が原因のA型肝炎の症状で、ひどいときは肝臓の細胞の95%が死にます。
ただし、肝細胞は再生力が強く、一方で有効な薬はないので、じっとして自然治癒を待つことになります。

高度4,000メートルの高地にあるボリビアの空港に行くことがあるならば、空港で走ったり、荷物を持とうとしてはいけないと警告します。
空気が薄いために高山病にかかるからです。
ゆったり行動して、荷物はポーターに任せることです。
カネをケチるためではなく、健康管理のためなのです。

びっくりするのは狂犬病です。
狂犬病の菌は世界中の地中にいるので、どこにいてもイヌには警戒しなくてはなりません。

では、万一噛まれたらどうするか。
正解は「噛んだイヌを捕まえて1~2日様子を見ること」なのです。

えっ! なぜ?

狂犬病を発症したイヌは間違いなく1日で死にます。
もし噛んだイヌが死んだら、狂犬病の予防接種をせねばなりません(しかも、1年に7回)。
死ななければ、傷の手当てで済みます。

狂犬病は発症すると確実に死ぬとされている病気です。
野犬の多いところでは、追い払うための棒や木の枝を手にして歩くこと、これが狂犬病を防ぐために多くの国で指導されている対策です。
このリアルは、現場を知っている人ならではのものでしょう。

しかしながら、海外で一番多いトラブルは交通事故なのだとか。
病気以上に警戒すべきは交通安全なのですというのが今回の話のオチです。

話を聞いていて気づくのは、国際協力の現場において医療が目標とする達成基準はどうやらわれわれの感覚とは違うようだということです。

デング熱は、通常は死なないから我慢して寝てましょう。
A型肝炎も自然治癒を待ちます。

要するに死に至るかどうか、そこが判断基準になっていることが想像されるのです。
日本で生活している豊かさとは、痛いと痒いの騒いでいられることなのだと再認識しました。

P.S. 先生が虫よけとして推奨する商品があります。
有効成分が国内最高濃度で配合されています。
熱帯を旅行する予定のみなさん、指名買いしましょう。

アース製薬 サラテクトリッチリッチ30
http://www.earth-chem.co.jp/top01/mushiyoke/saratekuto/rich30.html

次回は9月30日16時より、大井裕子先生(1992年医学部医学科卒)にご来駕いただき、「<暮らしの中の看取り>準備講座 ~自分のそのときのことを考えてみる~」と題してご講話いただきます。
みなさま、ふるってご参加ください。

【2017/9/30 第6回フェニックス医療講座へのお誘い】
https://www.hiroshima-u.ac.jp/tokyo/news/40794

(広島大学関東ネットワーク 代表 千野信浩)


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