家族の形にあわせた住まいとお金の話

広島出身の私は、東京にでてきて14年目を迎えた。
14年の間に、結婚して二人の子供に恵まれた。家族の形がかわるごとに、住まいを見直し、4回の引っ越しを重ねてきた変遷を振り返ってみる。

住まい その1

当時広島に住んでいた私は、東京在住の彼氏と4年間の遠距離恋愛を経て、憧れと期待に胸を膨らませ、結婚と同時に東京に出てきた。

最初に住んだのは、住みたい街ランキング上位常連の吉祥寺。「自分達がときめく街に住もう」をテーマに選んだ、大好きな街だった。

住まいは、リビングが広めの1LDK、家賃は10万円台前半だった。

結婚直前期は実家に居候しており、東京までの引越し代をけちろうと、ダンボールに荷物を詰めて宅急便で送る準備を進めていたのだが、見かねた両親が引越しパックを頼んでくれ、甘えさせてもらった。5万円程度だっただろうか。桐ダンスならぬ、大事に使っていた風呂桶が大きな段ボールから出てきたことを、「風呂桶をもって嫁に来た」といまだにからかわれている。

毎週末、街に繰り出しては、おいしいものを食べ歩いた、思い出の場所。

住まい その2

結婚して1年程経った頃、子供を授かった。1LDKではさすがに手狭かなあ、ということで、試しにお向かいの世帯用マンションの家賃を調べたところ、20万円もして動揺した。

それもそのはず、周りは100坪は下らない豪邸ばかり、吉祥寺の中でも高級住宅街と呼ばれる地域だった。

そんなハイソな雰囲気も、吉祥寺の街も大好きだったけど、20万円の家賃は払えそうにもなかったので、ようやく馴染んできた中央線沿線の物件を探しはじめた。そして、吉祥寺より数駅西の駅に、2LDKのテラスハウス(2階建ての部屋が数軒連なるタイプ)を見つけ、臨月のお腹を抱えて引っ越した。

家賃は10万円台前半、一部屋増えたけれど、家賃は少し安くなった。中央線沿線だと、西に行けばいくほど都心から遠ざかるので、当然家賃が下がる傾向がある。

住みたい街ランキング上位からの脱落?ということで、やや都落ち感を味わったのだが、子供が入園した保育園には、「吉祥寺に住んでいたけど、子供が生まれたことをきっかけに西に流れついた」という人がわんさかいて、なんだみんな一緒じゃん、と笑いあった。

引っ越しにかかった費用は、確か3万円程度。もちろん複数社に見積もりをとり、中には20万円程度の業者もあった。破格の提示をしてくれたA社の営業マンは、奥さんが出産のため北海道に里帰りしているとのこと、関西出身で値切ってなんぼの主人から価格交渉を請け負っている私を憐れみ、「妊婦さんの大変さはよくわかるので、この金額で安心して引っ越ししてください」と言ってくださった。

住まい その3

2年ほど経ち、2度目の妊娠。しばらく2LDKに住めなくもないけど、子供たちが成長しても住み続けるには、広さが十分ではないのではと、同じ市内で物件探しを始めた。

子供たちが通っている保育園がとても気に入っていたし、せっかくできたお友だちとさようならをさせるのはつらすぎるので、同じ保育園に通える範囲内であることが大前提だった。

幸い、賃貸で新築戸建て3LDKの掘り出し物件に出会い、また臨月のお腹を抱えて引っ越した(まじできついのであまりおすすめしない)。

家賃は10万円台前半で、今までとほぼ同額。大家さんの敷地内に建てられた家で、お子さんが家庭を持たれた時のために建てたのだけれど、当分お嫁にいきそうにないからその時が来るまで、ということで賃貸にだされていた。キッチンが大理石仕様の立派な家だった。

引っ越しにかかった費用は、今回も3万円程度。前回の破格の見積書を大事に保管しており、見積もりにこられた同社の方にご提示したところ、当時の営業マンの方が支店長になられており、同じ価格で請け負ってくださった。

住まい その4

大理石仕様のキッチンはとても立派で使い勝手は抜群だったけれど、二人の子育て、保育園通い、都心への通勤で、朝から晩まで時間に追われる毎日を過ごしていたので、10分の時間を捻出するためにどうしても食洗機を導入したくなった。

業者に見積もりに来てもらったところ、特別な仕様のキッチンなので、食洗機を取り付けるには水栓ごと取り換える必要がある、とのことだった。

さすがに賃貸の家でそこまでできないしなあ、ということで、食洗機問題をきっかけに、自分たちの家を持つことを考え始めた。

上の娘は保育園の年長となり、小学校への入学が近づいていた。学区を決めるなら今しかない、ということで、数か月間、毎週末のように不動産屋めぐりや物件内覧を重ね、ようやく気に入った物件にめぐりあうことができた。

ところが、めぐりあうまでに時間がかかってしまい、引っ越しより前に、娘が1年生になることが避けられなくなった。

あいにく、住んでいる地域と、めぐりあった物件のある地域は、小学校の学区が異なる。とても繊細な娘のことを思うと、転校はどうしても避けたかったので、新しい家がある小学校の学区内に、敷金や礼金の不要なUR賃貸物件を見つけ、家が完成するまでの数か月間住むことになった。

実家が戸建てだったのをはじめ、生まれてこの方2階建て以上の家に住んだことがなく、はじめて住む5階の家は、なんだかふわふわしていて、地に足がついていない感覚のある毎日だった。

娘の入学前、同じ階のお宅からお手紙をいただき「同級生なのでよかったら一緒に学校に通いましょう」と誘ってもらったのには、飛び上がるほど感激した。

引っ越しは、懲りずにA社に例の見積書を提示し、支店長決裁で5万円程度だったと記憶している。

住まい その5

上の娘が小学校に入学した年の秋、台風が猛威をふるう中、現在住んでいる家に引っ越してきた。

家族がどこにいてもつながりを感じられる家に住みたい、そんな思いで作った自分たちの家。しばらくは、ここに暮らすことになるだろう。ちなみに、忘れずに食洗機は取り付けた。

購入にあたっては、定年を超える年齢までの住宅ローンを組んだ。

どれぐらいの借り入れができて、どれぐらいの金額の家を購入できるのか、まったく想像ができていなかったところ、ファイナンシャルプランナーの無料アドバイスを受ける機会があった。二人の子供を公立学校に通わせる場合と私立を受験する場合、毎年大阪と広島に帰省する場合の費用、年に数回のレジャー費用等を勘案して、借り入れ可能な金額を提示してもらったことで、自分たちが持つことのできる家のイメージを大いに沸かせることができた。

将来的な両親の介護問題も気がかりだったが、日本は公的支援が充実しているので、子ども世代からの特別な費用援助がなくてもきちんと支援を受けることができるとわかり、安心もした。

ちなみに引っ越しは、またもやA社への見積提示で、同じ結末をたどる。10年以上も効果を発揮してくれた、黄ばんだ見積書に感謝したい。

最後に

家族が増えるたびに、引っ越しを重ねてきた。引っ越し時の出費は、敷金、礼金、仲介手数料、口座振替等がはじまるまでの数か月分の家賃、で100万円程度と、毎回通帳とにらめっこだ。数回引っ越しを経験しているので、数百万円の大金が飛んで行った。引っ越しのたびに無駄な出費を繰り返してきたような気もするが、最初から家族が増える前提で広めの部屋に住むことも、なかなか勇気が必要だ。

また、公立小学校に通わせるなら、できれば同じ幼稚園や保育園のお友達が通う学校の学区がよい、とか、できれば落ち着いていると評判の学校の学区に住みたい、などもでてくる。

その時々の家族の形にあわせて、住まいの形もかわる。我が家の場合、そういうことだったのかな、と振り返る。

(パンジー田中 大学勤務 1998年文学部卒)

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