2015年6月11日,当研究科量子物質科学専攻の鈴木孝至教授,低温物理学の受講者をはじめとする当研究科の学生13名が,東広島市鏡山のサイエンスパーク内にある中国電力エネルギア総合研究所を訪問しました。
今回訪問する中国電力エネルギア総合研究所は,平成6年に技術研究センターと経済研究センターとの統合により設立されました。その後,知財担当(旧エネルギア事業部門)も統合され,エネルギア総合研究所は中国電力において研究開発の役割を担っています。
当日は12:30に当研究科を出発し,ジャンボタクシーに乗り10分程で中国電力エネルギア総合研究所に到着しました。
エネルギア総合研究所に着くと,社員の方々が温かく出迎えてくださいました。まず,私たちは社員の方にホールまで案内していただき,そこでエネルギア総合 研究所の研究の概要をお話ししていただきました。その内容は以下の通りで,エネルギア総合研究所が広範囲に研究を展開されていることがわかります。
・安定供給技術… 遮断器一括監視装置,配電線故障点標定システム,発電所取水路に流入する付着生物幼生の検出キットの開発,発電所ボイラ配管余寿命診断技術等々。
・環境技術… 屋上緑化システム,含水性バイオマスの超臨界水ガス化技術,非食用系植物油脂の燃料化技術の研究等々。
・情報・通信技術… 待ち時間予測システム,高精度の位置・方向検知システム等々。
特に興味深かったのは,HTS-SQUIDによる非破壊検査に関する研究,また,中国電力が再生可能エネルギーの導入拡大に向けて行っている,隠岐諸島におけるハイブリッド蓄電池システム技術実証事業です。
SQUIDとは,Superconducting Quantum Interference Device (超電導量子干渉素子)の略称であり,高感度な超電導磁気センサです。SQUIDは,医療,航空をはじめ様々な分野で実用化や研究が進められていますが, 中国電力ではECT(Eddy Current Testing:渦流探傷法)とSQUIDを組み合わせた電力設備の非破壊検査システムについて研究することで,設備の欠陥等が簡易かつ高速に診断できる ようになると期待されています。
研究開発のお話を伺った後,私たちはエネルギア総合研究所の研究設備を見学しました。
雷インパルス電圧発生装置の前で社員の方にご説明頂いている様子です。ここでは,実際に鉄塔模型への雷放電を見ることができました。この装置は50万Vもの高電圧を発生でき,その放電の様子はすさまじいものでした。
社員の方に,ボイラ配管のクリープ余寿命評価法についてご説明頂いている様子です。火力 発電所のボイラ配管は劣化により粒界にクリープボイドが発生し,それらが増えると小さな亀裂が発生します。最終的に,それらの亀裂がつながり,配管は大き く破裂します。エネルギア総合研究所では,配管のクリープ破壊試験を行い,損傷メカニズムに基づいた寿命評価曲線を作成し,ボイラ配管の余寿命を評価して います。
社員の方に潮流発電についてご説明頂いている様子です。中国電力では,新しく潮流発電に 取り組んでいるそうです。潮流発電とは,海中に潮流発電機を設置し,潮流による運動エネルギーを電気エネルギーに変換して発電するものです。これは,二酸 化炭素を排出しないクリーンエネルギーであり,かつ天候に左右されないため,比較的安定供給が見込めます。また,潮流は,陸地に挟まれた狭い海(瀬戸)や 水路(海峡)で増幅されることから,瀬戸内海は地形的なポテンシャルが高く,潮流発電は絶好の発電方式だそうです。
研究設備を見学した後、もう一度ホールに戻りました。そこで質疑応答の時間を設けていただき、社員の方に様々な質問に答えていただきました。
その後、私たちは帰途につき、14:20頃に大学に到着しました。
今回、お忙しい中お時間を割いてくださったエネルギア総合研究所の皆様に深く感謝しております。この度の企業訪問で、電力会社の研究内容、ならびにエネルギア総合研究所独自の研究の一端を知ることができ、大変貴重な経験となりました。