知ることの楽しさを求めて・子育てこそ不可欠

小出 哲士 准教授

基本情報

  • 所属又は配属:ナノデバイス・バイオ融合科学研究所
  • 職名:准教授

 

研究者になるまでの軌跡

 私が科学に興味を持ったのは、いま思い起こすと、小学校時代に読んでいた学研の科学の冊子についてくる付録を使っていろんな実験や採集をしたことが始まりだったと思います。当時、郵便ポストに毎月届く付録を楽しみにしていたのを思い出します。例えば食品や飲み物の性質を調べるために、付録についていた薬品をつかって夏休みの化学実験の課題をした記憶があります。昆虫採集キットもたいへんおもしろく、当時は自宅のすぐ近くに野山や川や海などもあり、いろんな生き物を捕まえては、標本にしました。この虫はどういう構造になっているのだろう、名前は何だろう、当時家にあった百科事典や図書館で借りてきた図鑑をみながら探しました。また、父親が買ってくれた顕微鏡を用いて、いろんな物の結晶や微生物のミジンコやミドリムシなどを観察しました。小さな生き物にも心臓があって動いているのを見たときの感動をいまでも忘れません。今ではお店で売られているカブトムシなどは、毎年山に行って採っていました。卵から 幼虫になって、やがてさなぎから成虫になる様子は、たいへん不思議でしたが、そうやって大きくなって、卵を産んで1年で死んでゆく姿を見て、生死の尊さを学んだ気がします。
 小学校6年生の時に、当時は将棋少年だった私は、将棋クラブに入り、みんなから一目を置かれるほどで、腕をふるっておりましたが、当時の担任の先生に「科学クラブに入って研究をやってみなさい」という半ば強制的にクラブを変更させられたのを覚えています。しかし、科学クラブに、授業では味わえないたくさんの化学実験を体験したり、自分で電子回路を作成したり、天体望遠鏡で星の観察をしたり、また、鮒の解剖や鶏や蛇の卵の羽化などを経験していくにつれて、科学のおもしろさ「なぜだろう、どうしてだろう」という疑問からはじまり、それを「こうなんだ」と探求していくことの楽しさを知らず知らずのうちに体験していたように思います。特に、鶏の卵がだんだん細胞分裂をおこし、ひよこに成長していく観察では、途中の様子を観察するのに、生きている卵を割って調べます。そのため、割った卵の雛は死んでしまうのです。最後まで成長して、殻を割って出てきて泣いた時のあの感動はいまでも忘れられません。また、これにより命の尊さや大切さを教えられました。この小学生時代の体験は今の研究の石杖になっていると思います。近年は「ゆとり教育」や「受験」という名のもとに、たくさんの「実際に体験すること」が授業のなかから消えてしまっていることはたいへん残念です。
 私は、大学院修士課程を卒業後に、助手として大学での研究者への道に入りました。工学系の分野でキャリアを形成していくためには、博士の学位が必須になりますが、すぐに助手となった私には博士の学位がないため、いろいろ苦労しました。しかし、私の経済的な事情を理解してくださった教授が、学位を持たない私を助手にしてくれたことを私は重くうけとめ、自分の研究をしながら、学部、大学院生の教育指導に頑張りました。研究自体は企業でもできますが、大学での研究の違うところは、企業でも行うことができる研究に加えて、自分に興味があること、世の中で役に立つようなこと、新しくてチャレンジングなこと、並びに企業では扱えないような基礎研究も自分の責任で研究することができることだと思っています。また、学生と一緒にやりながら、研究と教育を同時に行っていけるところ、この点も企業での研究とは違うと思います。私達の研究グループに入ってくる学生の場合、4年生から大学院修了までの3年間が標準的な研究期間ですが、この間に学生達がそれぞれの目標に対して研究成果をあげられるように、国内の学会、国際会議での英語での発表、論文誌へ投稿をしながら日々努力して、共に研究・教育に頑張っています。大学の使命として、特に私が所属する工学系では、世の中、特に工学の発展のために次の時代のリーダーとなる学生を世に送り出していきたいと常々思っております。理想は高く持って、現実をどのように遣り繰りしていくか悩ましいところが本音ですが、研究者を目指すみなさんなら、その解決策が浮かぶかもしれません。
 大学の研究の職場での女性の出産や子育ての意識改革は必要不可欠であると思っています。女性が出産や子育てを不利にならないような環境をつくるためには、パートナーの支えも必要です。そのパートナーも同じように子育てで不利にならないような環境を整備していくことは、大学などの研究現場では重要ではないかと思っています。また、子育てをサポートする地域における仕組みや、市による補助の制度などを良くすることも必要です。保育所不足の解消や就学前の子どもの医療費の軽減措置などいろいろ整備する課題があります。東広島市も少しずつ改善されてはきていますが、私達経験者が今後も声をあげていき、これから生まれてくる子ども達や育児する家庭をサポートする仕組みを作っていかなければいけないと思っています。広島大学内にも「ひまわり」保育園ができました。これは非常に大きな一歩だと思っています。また、平成20年度には夏季子どもクラブも発足し、利用させていただきましたが、東広島のいきいき子どもクラブでは預かってもらう事ができない子ども達を預かっていただけたのは、大学において研究者として育児に関わる者として、たいへんありがたく思っています。
 長い間研究を進めて行くためには、自分の周りにいる方々の協力がいります。特に、パートナーや家庭、そして、子ども達の協力が必要になるでしょう。逆に、研究者として一人前になるためには、家庭や子ども達をちゃんと面倒見ていかないといけないのではないかと思っています。子育てといいますが、私の経験からすれば、育てられているのは、「親」です。そういう子育てを楽しみながら、また、研究も楽しみながら、人生を楽しんでいきたいと思います。
 とりとめのない文章になりましたが、「知ることの楽しさを求めて」研究し、その成果を社会に還元できるような研究者になりたいと思って頑張っています。研究者を目指すみなさんも肩の力を抜いて、「自分がやりたいこと」を見つけてやってみてはいかがでしょうか?人生何度でもやり直しはできますから。ただし若い間ですが(笑い)。

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