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【研究成果】若者世代は本当にSDGs世代か?~SDGsに関連するライフスタイルにおける世代効果や若者の就職際の会社選びを分析~

本研究成果のポイント

  • 若者世代(18-30歳)は、上の世代よりも社会や会社にSDGsに積極的に取り組むことを期待する。
  • 若者は、低い所得でもSDGsに積極的に取り組み企業で働くことを選好する。
  • 若者世代は、SDGs世代としてSDGsの達成に導く世代となりえる。

概要

広島大学FE・SDGsネットワーク拠点 山根友美研究員、金子慎治拠点長・大学院人間社会科学研究科教授・副学長(グローバル化推進担当)は、若者世代はSDGs世代かを検証するために、2つのインターネット調査を実施しました。日本全国規模の調査のデータを使ってSDGsに関連するライフスタイルにおける世代効果を分析した結果、若者世代(18-30歳)は上の世代よりも社会や会社にSDGsに積極的に取り組むことを期待することやSDGsに配慮した消費行動をすることが確認されました。また、大学生の就職の際の会社選びにおける選好を分析した結果、推定年収が低くてもSDGsへ積極的な取り組みを行っている企業を選好することが確認されました。このことから、若者世代はSDGsをより推進する世代になりえることが示唆されました。これは企業が優秀な人材を獲得するためにはSDGsに積極的に取り組む必要があることを示唆します。

本研究成果は、Journal of Cleaner Productionに掲載されました。

背景

持続可能な開発目標(SDGs、エス・ディ・ジィーズ)は、2015年に国連で採択された国際目標です。環境・社会・経済の諸問題を包括的に扱った17個の目標から構成され、2030年までに、先進国も途上国も、国も企業も個人も、みんなが協力し、誰一人として取り残さない持続可能な世界を実現することを目指しています。特に、若者世代(ミレニアル世代、Z世代)は、SDGs世代、SDGsネイティブと呼ばれることも多く、若者世代の積極的な関与が期待されます。一方で、学術的な研究はあまり行われておらず、SDGs実施の観点から世代効果を科学的に検証したものは見当たりません。

研究成果の内容

広島大学FE・SDGsネットワーク拠点 山根友美研究員、金子慎治拠点長・教授は、若者世代は本当にSDGs世代かを検証するために、2つのインターネット調査で得たデータを分析しました。この2つの研究の結果、若者世代はSDGsをより推進する世代になりえることが示唆されました。つまり、このことは企業が優秀な人材を獲得するためにはSDGsに積極的に取り組む必要があることが示唆されます。

(1)SDGsに関連するライフスタイルに世代効果があるか
2019、2020年に日本人成人を対象に実施したインターネット調査のデータ(サンプル数: 12,098、平均年齢: 47歳、男性49.93%、女性50.07%)を使って、SDGsに関連するライフスタイル・価値観に世代効果があるかを検証しました。具体的には、SDGs実施に対する社会への期待度、仕事に関する価値観、サステーナブルに配慮した行動に関する指標が、若者世代(18-30歳)が上の世代(31-75歳)より高いかを機械学習の手法を使って分析しました。結果は、多くの指標で若者世代が高いことが確認されました。一方で生きがいや社会貢献などの仕事に関する価値に関しては統計的に有意な効果は確認されませんでした。【参考資料1】

参考資料1

(2)大学生の就職に関する選好
就職の際の企業選びに、企業のSDGsへの取り組みは評価されるかを検証するために2020年に大学生(サンプル数: 668)を対象にコンジョイントサーベーとランダム化比較試験(RCT)を組み合わせたオンライン調査を実施しました。その結果、SDGsに積極的に取り組む企業が支持されることが確認されました。また、SDGsを積極的に実施し、推定年収が高い企業が一番人気のある選択肢であることもわかりました。一方、推定年収が高くてもSDGsへの積極的な取り組みを行っていない企業の支持率は高くなく、逆に推定年収が低くてもSDGsへ積極的な取り組みを行っている企業を選好することが確認されました。また、被験者をSDGsの本質に関する情報を与えるグループ(トリートメント群)と与えないグループ(コントロール群)にランダムに割り当て、情報を与えることで、選好に影響があることを確認しました。SDGsに関する意識向上を図ることで、年収が低くてもSDGsへ積極的な取り組みを行っている企業への支持が上がることがわかりました。一方で、意識向上によって、推定年収が高い企業への支持が下がることが確認されました。【参考資料2】

今後の展開

本研究では多角的な観点から若者世代がSDGsの達成に導く世代となりえるという貴重なエビデンスを示すことができました。推定年収が低くてもSDGsへ積極的な取り組みを行っている企業を選好することが確認できたことは社会的な意義があります。一方で、SDGsに関するライフスタイル間の関連性を示すことが出来ませんでした。今後検証を進める予定です。

論文情報

  • 掲載誌: Journal of Cleaner Production
  • 論文タイトル: Is the Younger Generation a Driving Force Toward Achieving the Sustainable Development Goals? Survey Experiments
  • 著者名: 山根友美, 金子慎治
  • DOI: 10.1016/j.jclepro.2021.125932
【お問い合わせ先】

広島大学 FE・SDGsネットワーク拠点(NERPS、ナープス) 
研究員 山根 友美
TEL: 082-424-7640
E-mail: tomomi*hiroshima-u.ac.jp (注: *は半角@に置き換えてください)


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