第46回 岡村好子准教授

バイオのつぶやき第46回岡村好子准教授「かごしま水族館にいってきました」
岡村好子准教授
岡村 好子 准教授

細胞機能科学研究室

(2019年9月)

 先週、夏休みの旅行でかごしま水族館に立ち寄りました。何の計画もなくフラリと立ち寄ったこの水族館に、ちょっとした感動と沢山のワクワクを貰いました。
このたびの「バイオのつぶやき」のお当番には、前々より候補として考えていたトピックもありましたが、この感動をみんなに伝えたい!という衝動があるうちに、文章にしてしまおうと思います。

 かごしま水族館は、県内および鹿児島近海の魚たちが展示されています。
入ってすぐの黒潮大水槽にはジンベイザメを目玉に、クロマグロ、カツオ、シマアジ、カタクチイワシ、そのほかブダイやエイ、大型、小型の魚たちが悠々と泳いでいます。
食卓に載る魚に目が行ってしまう自分にガッカリしつつも、被食者カタクチイワシが捕食者マグロ・カツオをかわしながら泳いでいる姿をみて、同じ水槽で飼えていることにちょっと感動。
ちなみに、ジンベイザメの食事時間、という企画があり、定時にお客さんが水槽前に集まって来た頃、水槽の魚たちの動きもソワソワに変わってきて、餌の時間だ!と分かっているのかなと思います。柄杓でオキアミを撒くと、ジンベイザメが大きな口を開けて吸い込み、こぼれたオキアミをカタクチイワシたちが追いかけて食べ尽くしていました。カタクチイワシ、さっきまで中層から低層を泳いでいたのに、やっぱり餌の時間がわかっているんだと確信しました。

 南西諸島の海の展示はサンゴと熱帯魚の水槽。あ、これも鹿児島県内なのかー、南国なんだなー、と多様多彩なサンゴに目を凝らして・・・・ん?サンゴ?
魚をみていないのはなぜ?・・・・・そうか!ここ(水族館)のサンゴはここ(地元)のサンゴだからだ!!
つまり、他の水族館のサンゴはディスプレイ用に入れているので、背景でしかないのですが、ここのは本物(?)なのです。珊瑚礁が織りなす生態系を持っている鹿児島の海とかごしま水族館はすごい!

 つぎに錦江湾と周辺の海の展示。大好きなキビナゴ(美味しいから!)がキラキラしながら泳いでいる姿を初めて見ました。
そして、エラブウミヘビ。まずはその大きさにびっくり。コブラ科のへび。コブラ科だったのー!?それじゃあ猛毒も納得です。ハブの70-80倍の毒性。
奄美から沖縄の方では、素手で捕獲するんですって。食すると美味しいという説明でした。
そうそう。海の生物は毒をもっているものが多くて、海の中の多様な生態系の中で生存していけるのです。そして毒の研究は創薬の研究につながっています。海を分離源とする医薬品は実に多いのです。
錦江湾には熱水噴出口があるのだそうで、そこから新種のハオリムシ、サツマハオリムシが発見されました。ハオリムシは深海の硫化水素が吹き出すところに生息する動物ですが、口も目もなく、胃も肛門もなく、体内に共生している細菌が硫化水素を酸化したエネルギーをもらって生きています。錦江湾は世界で一番浅い熱水噴出口。そして独特なハオリムシ。
鹿児島の海は、珊瑚礁やら深海環境やら環境多様性に富み、黒潮に乗ってやってくる多様な魚たちも加わって、ものすごーく多様で沢山の種類の生き物が生息している場所なのです!

 海も魅力的でしたが、水族館の工夫を凝らした展示や解説もワクワクで、いつしか子供達は夢中になってタッチプールのナマコや浅瀬の魚をさわりまくり、フロアは叫声に満ちて活気があり、私も子供達に紛れてあれこれ感触を楽しんできました。
特にアクアラボという名の一角は、学芸員さんの研究の展示でした。見事なウミウシのコレクション(鹿児島限定)の壁(写真)。あんなところにもこんなところにもウミウシは隠れているのに、素人目にはなかなか見つけられない。それをこの数!
そして、ウミウシの戦略も教わりました。盗んだ刺胞で刺す!盗んだ葉緑体で光合成!!
ウミウシすごいぞ!ってなりますよね。子供たちも夢中でした。

 

ウミウシのコレクション

ウミウシのコレクション

ウミウシの戦略

ウミウシの戦略

 こういう研究、誰かがやってくれないと私たちは研究ができません。
たとえば、カイメンの共生細菌から新規の酵素遺伝子を取ったという研究があります。論文を書くときには、緯度・経度を小数点以下4桁まで詳細にカイメンを採取した場所を書き、細菌の宿主であるカイメンの種も特定しなければなりません。今、日本にはカイメンの系統分類ができる研究者がいないので、海外の研究者にサンプルを送って種同定して貰って・・・ということが必要でした。アメフラシやウミウシもこういう研究対象なので、種同定してくださるかもしれない!覚えておこう!!と、心底思いました。

 夏休みの自由研究を提案するコーナーが最後にあり、お子様たちは夢中でクイズに答えたり、大喜びで海の生き物に触れ、そしてその生き様を垣間見ていました。
初めは静かな海から始まった展示が、階を上がる毎に子供たちの興奮する声が聞こえ、最後は盛大な叫声に変わっていました。そんな子供たちを掻き分けて、私もヒゲクジラの髭をさわったり、大いに楽しかったです。

 私が生まれ育った地元の水族館は、池袋サンシャイン水族館。魅せる・癒やしがテーマの、この水族館も大好きですが、ふるさとの海を学ぶということは尊い事だと改めて感じました。
地元の海を紹介するという、かごしま水族館の使命と意気込み、確かに受け取りました。
みなさんもあちこちの水族館に是非行ってみてください。
日本の海はいろいろな顔があって、本当に面白いです。

 


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