【研究キーワード】
脳血管障害、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病、神経変性疾患、免疫性神経疾患、神経超音波検査、バイオマーカー
【最近のハイライト】
広島大学で同定した筋萎縮性側索硬化症の原因遺伝子optineurinの研究を進めています。筋芽細胞においてoptineurinをノックダウンして検討したところ、optineurinは筋の分化に関与していることが新たにわかりました。筋萎縮性側索硬化症は神経の変性によって発症する疾患として広く知られていますが、筋においても何らかの異常が生じていることを示唆するものであり論文報告しました。
筋萎縮性側索硬化症の神経細胞に蓄積するリン酸化TDP-43が末梢神経の軸索中にも異常沈着していることを筋生検組織内の神経束で見出し、さらにこのリン酸化TDP-43の蓄積はまだ臨床診断基準を満たしていない早期のALS患者においても認めたことを論文報告しました。
アルツハイマー型認知症の原因タンパク質のひとつであるアミロイドβのオリゴマーが、マクロピノサイトーシスという機序で神経細胞内に取り込まれ、内在化することを示しました。病態機序解明の一助となるものとして論文報告しました。
次世代シーケンサーを用いた解析により、日本人のパーキンソン病患者の遺伝的リスク要因を明らかにしました。
当研究室は歯科と連携して口腔内環境と脳卒中の病態、転帰に関わる因子を検討しており、脳卒中の転帰、脳小血管病の状態、脳出血の血腫拡大、心房細動の有無などに関わる様々な特異的な歯周病菌種の同定を行いました。また脳卒中の栄養状態や歯の欠損状態が脳卒中転帰に関わることも明らかにしました。多施設共同の疫学研究も積極的に行っており、広島市内の関連病院での脳卒中登録研究(HARP study)を立ち上げました。また悪性腫瘍関連脳梗塞の多施設共同研究も行い、病態や予後に関わる血液バイオマーカーの報告をしています。
神経疾患では摂食嚥下障害を来たすことが多く、そのリスク回避を目的とした臨床研究でも多くの成果を出しています。特に脳卒中における、誤嚥リスク評価のための舌圧測定、咳テストの有用性を報告し、安全な食形態を提供するための舌圧値の指標を提案しました。
神経超音波の研究では、以前報告した上肢末梢神経の基準値に加えて下肢末梢神経エコーにおける神経断面積の基準値を神経の分岐や合流などの解剖学的側面に注目して明らかにしました。