【研究室主要論文】
・Muguruma K, Takahashi T, Tagane Y, Nazere K, Hara N, Nakamori M, Yamazaki Y, Morino H, Maruyama H. Intracellular anionic substances cause tau liquid-liquid phase separation. Biochem Biophys Res Commun. 2025 Apr 9;757:151605. doi: 10.1016/j.bbrc.2025.151605.
・Naito H, Nakamori M, Nishi H, Toko M, Muguruma T, Yamada H, Sugimoto T, Yamazaki Y, Ochi K, Kawaguchi H, Maruyama H. The periodontal pathogen Fusobacterium nucleatum is associated with disease severity in multiple sclerosis. Sci Rep. 2025 Nov 3;15(1):38316. doi: 10.1038/s41598-025-22266-x
・Ishikawa R, Yamazaki Y, Nakazawa N, Li X, Tazuma T, Takebayashi Y, Nakamori M, Sotomaru Y, Maruyama H. A novel conditional knock-in mouse model for APOE4-to-APOE3 switching. Neurobiol Dis. 2026 Jan;218:107244. doi: 10.1016/j.nbd.2025.107244.
・Takenaka M, Sugimoto T, Hironaka A, Naito H, Nakamori M, Yamazaki Y, Ochi K, Maruyama H. Ultrasonographic reference values of the brachial plexus cross-sectional area in healthy Japanese adults. Muscle Nerve. 2026 Feb;73:277-282. doi: 10.1002/mus.70093.
【教育内容】
急速な少子高齢化に伴い、脳血管障害、認知症、てんかん、パーキンソン病、神経免疫疾患、末梢神経疾患など、脳神経内科が担う疾患はますます増加しています。一方で、神経画像、神経超音波、遺伝子診断、分子標的治療、核酸医薬、血管内治療、デジタルヘルス、AI解析などの進歩により、脳神経内科診療は大きく変化しています。当科では、幅広い神経疾患に対する診療能力を養うとともに、臨床現場の疑問を研究へ発展させる姿勢を重視しています。病歴聴取、神経診察、画像・生理検査の読影、救急対応、慢性期管理、多職種連携、リハビリテーション、栄養・嚥下管理までを含め、脳神経内科医として必要な総合的能力を身につける教育を行っています。また、大学院教育では、臨床研究、基礎研究、橋渡し研究のいずれにも参加できる体制を整え、次世代の神経疾患診療・研究を担う人材育成を目指しています。
【研究内容】
1.脳卒中
脳卒中領域では、神経画像、血液バイオマーカー、口腔内環境、栄養状態、自律神経機能などを用いて、脳卒中の病態解明、予後予測、再発予防に関する研究を行っています。広島市内関連病院との連携による脳卒中登録研究や、多施設共同研究にも積極的に参加しています。近年は、合成MRIを用いたミエリン定量解析による急性期脳梗塞患者の転帰予測や、急性期脳疾患における脳機能評価、脳波解析などにも取り組んでいます。
2.神経変性疾患
アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、脊髄小脳変性症などの神経変性疾患を重点研究領域として位置づけ、臨床研究から分子病態解析、治療法開発まで幅広く取り組んでいます。 アルツハイマー病研究では、最大の遺伝的リスク因子の一つであるAPOEに特に着目しています。APOE4からAPOE3へのアイソフォーム切り替えを可能とするノックインマウスモデルを作製し、アルツハイマー病病態への影響を解析しています。また、アミロイドβやタウ蛋白の細胞内輸送機構、神経炎症、脂質代謝異常との関連についても検討を進めています。近年は、APOEスイッチモデルや血液脳関門通過型ベクターを用いた新規治療戦略の開発にも取り組んでいます。 パーキンソン病研究では、運動症状のみならず、嚥下障害に注目しています。頸部電気刺激を用いた非侵襲的ニューロモデュレーション研究を展開し、嚥下・咳機能改善の可能性を検討しています。一方で、αシヌクレイン凝集機構や蛋白凝集抑制に関する基礎研究も進めています。 ALS研究では、optineurinをはじめとする原因遺伝子やTDP-43病理に注目し、細胞モデル、動物モデル、患者由来細胞を用いた病態解析を行っています。さらに、中国地方を中心とした多施設共同観察研究(CARP Study)を通じて、病状の縦断的解析を進めています。 脊髄小脳変性症研究では、新規病原遺伝子探索や機能解析に加え、カルシウムチャネル異常、シナプス輸送障害に着目した研究を行っています。CRISPR-Casシステム等を用いた病態解析や創薬研究にも取り組んでいます。
3.てんかん
てんかん領域では、難治てんかんに対する広帯域皮質脳波を用いた脳機能マッピングやてんかん焦点解析を行っています。また、急性期脳疾患におけるcritical care EEG、density spectral arrayを用いた脳機能評価にも取り組み、中毒性・代謝性脳症や非けいれん性てんかん重積状態の早期診断への応用を進めています。
4.神経免疫・末梢神経疾患
慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー、ギラン・バレー症候群、重症筋無力症、多発性硬化症、視神経脊髄炎スペクトラム障害などを対象に、病態解析、治療反応性評価に関する研究を行っています。また、神経超音波を用いた末梢神経・神経根・腕神経叢評価を積極的に推進しており、遺伝性トランスサイレチンアミロイドーシスを含む各種ニューロパチーにおける神経形態変化を解析しています。電気生理検査を補完する非侵襲的診断技術としての神経超音波の有用性を検討しています。
5.摂食嚥下・栄養
神経疾患に伴う摂食嚥下障害、栄養障害、誤嚥性肺炎リスクに関する研究を疾患横断的に行っています。舌圧測定、咳テスト、嚥下造影検査、高密度多チャンネル表面筋電図、電子聴診器による嚥下音解析などを組み合わせ、多面的評価を行っています。近年は、AIを用いた嚥下機能定量評価、DPC・診療情報ビッグデータ解析による誤嚥性肺炎リスク解析、病院全体での嚥下スクリーニング体制構築にも取り組んでいます。