広大OB田中太郎~リアルを語る~第3弾 「いまの仕事がワタシに合っているのかどうか、不安です」

 

いまの仕事がワタシに合っているのかどうか、不安です。

 

はっきりいいましょう。正解なんて、だれにも分かりません。仕事なんてテキトーに選ぶしかないので、とりあえず、いけるところまでがんばりなさい。心や体が悲鳴を上げそうになったら、そのときにやり直しを考えましょう。

就職活動の世界では、自分が向いている会社を選び、そこで自己実現に向けて努力を重ね、、、などという指導、言説があふかえっています。

ほんと、いつも思います。

アホか。

 

そうしたタワゴトを語っている、その本人だって、学生時分にどんな仕事に向いているか、どんな会社を選んでいいかなんて分かっていなかったのに、少しいいキャリアを手にして、迷える羊に上から目線、実に見苦しい以上にバカですな。

 

なぜそんなことになったのかというと、根元は2000年前後、空前絶後の就職難の時代に遡ります。

有効求人倍率が1を割り込み、大学を出ても仕事がない、選べない、そんな時代に突入してさすがにマズイと、大学業界は慄然とした。出口対策にも取り組まなければならない、少なくとも何らかの指導をしなければ、「あの大学に入ったら就職で苦労する」と風評が広まり、志願者数と偏差値が奈落の底に落ちてしまう。学生の将来がどうのというより、大学の教職員の自分の身がカワイイでコトが一気に進んだのですな。

 

それでも、大学ができることなんか、そう簡単に見つかるはずもない。そこでムリクリ持ち込んだのが、人生の計画づくりであり、自己分析から適職探しというメソッドです。ところが残念なことに、こうした手法は転職市場で生まれ育ったものであり、新卒者にはほとんど使いようがない代物です。

 

考えてもみてください。仕事の経験もないあなたが、自分を分析したところで、何が分かるでしょう。野球のゲームをやり倒した人間が、カープの入団テストを受けようとするようなものです。100の要素のうち、2くらいは分かるでしょうけど(野球のルールとか、そもそも野球が好きかとか)、だからといって、残り98の適性が分からなければ、菊池の後釜としてセカンドを守るなんてできるはずもないでしょう。

 

仮にあなたが大学を卒業して間がないとしたら、リアルを知っている仕事って、いまの仕事、親の仕事と、学校の教職員くらいのもののはずです。そのほかの仕事(とか会社とか)については、せいぜい、学生ほしさに嘘八百を並べ立てたパンフレットやホームページの情報しか手にしようがなく、向いているかどうか本当のところは、やってみるまで分からないのです。

 

それは皆さんの先輩諸氏もまったく同じでした。たまたま入れた会社で、手がけた仕事がうまくいった、一所懸命になれた、その結果、少しは見栄えのする社会人になれた。そんな人が一定の確率で生まれます。幸運に恵まれた人が、成功者として後輩たちに諭すようなことを語っているのです。問われたから格好のいいことをしゃべっているだけで、心の中では「でも偶然なんだけどさ」と思っているものです。社会人って結構ずるくて見栄っ張りな人種です。

 

このテーマについては何度も言っておかねばなりませんが、

人生はたまたまです。

 

これはワタシ田中のヒネクレたもの言いではありません。スタンフォード大学の高名な社会心理学者が、2000年前後にそういう分析を初めて手がけ、それが少なくともキャリア開発の学問世界では常識となっている理論なのです。興味のある方は、J.D.クランボルツという名前で調べれば、さらに深い内容を知ることができます。

 

株式市場への上場が一流企業の条件だとしたら、その企業は4000社もあります。新卒採用でだれもがあこがれる人気会社なんて、そのごく一部です。就職先を、そのごく一部の企業以外、の一流会社からテキトーに選ぶので何の不満がありましょうや。

 

スタートはどこでもいいのです。偶然の出会いがあった会社で与えられた仕事、それをがんばるだけです。

「置かれた場所で咲きなさい」。

仕事と人生の本質をみごとに言い当てた名言です。

 

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