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「心臓・血管病の予防・早期発見、そして最新外科治療」 第9回フェニックス医療講座実施報告

広仁会(医学部医学科同窓会)関東甲信越支部会と広島大学関東ネットワークは2017年からフェニックス医療講座を定期開催しています。

病気や健康は誰もが気になる話題です。
この医療講座は、病気とは何か、病気とどう向き合ったらいいのかというテーマでの卓話を、広島大学医学部出身の医師にお願いする会です。
専門分野の最新の知識と現場のご経験をお話しいただくことで、より広く深い医療の知識と正しい問題意識を持てるようになる、そんな場になることを目指しています。

3月31日16時より、広島大学東京オフィス(東京・田町)の408号室で、獨協医科大学で心臓・血管外科教授を務める福田宏嗣先生(1986年医学部卒)においでいただき、「心臓・血管病の予防・早期発見、そして最新外科治療」の演題で講座を開催しました。

病院だけでなく、さまざまなところで健康指導に出会います。
その内容は大同小異、「1日30分ほど、会話の出来る程度の強度で運動をしましょう」「塩分は減らしましょう」「たばこは止めましょう」などなど。

「分かっているよ、そんなこと。だいたい、その程度のことで健康になるんだったら苦労はしないよ、うざいなぁ」。
心のどこかで、こう思っていませんか。
福田先生は、心臓や血管の専門家の立場から、そうした健康管理がいかに重要かを解き明かしていきます。

というのも、一連の循環器の疾患は、よっぽど悪くならない限り症状が自覚できず、しかも医療ができることは、悪くならないようにするところまでで、健康な状態に戻すことは難しいからです。

どういうことか。

「ざっくりいうと、心臓や血管の病気は、心臓弁膜症、大動脈瘤、虚血性心血管病の3つが大半を占めます。
よくサイレントキラーと呼ぶことがありますが、まったく無症状のまま、突然、死に至るケースも多いのです」

順番にみていきましょう。

心臓弁膜症とは、心臓の弁の機能が低下して、全身を巡る血液が足りなくなる症状です。
発生する原因は、まだよく分かっていないといいます。
疲れやすいとか足がむくむという、素人には心臓に問題があるとは思いもつかない症状なので放置されやすく、ひどくなってから病院に行ったのでは元に戻らなくなります。
この病気は聴診で心臓音に雑音がないかを調べることで発見できます。

もっとも怖いのは大動脈瘤です。
司馬遼太郎やアインシュタイン、最近では阿藤快、声優の鶴ひろみ、大滝詠一など、突然死のニュースに驚くことが多いのですが、これらは大動脈瘤の破裂によるものです。

心臓から腹部にかけて太い動脈が伸びていますが、この血管の一部がときに膨らんでしまいます。
それが突然破裂して大出血を起こすのです。
発症したら手術以外に救命手段がありません。
病院にたどり着くまでに時間がかかってしまったら助かりません。
この病気の恐ろしいところは、破裂するまでまったく症状を自覚できないことです。

原因は動脈硬化。
加齢とともに、特に男性に患者(といっても自覚症状はありません)が増えていき、65歳以上では5~8%が問題を抱えています。
触診や超音波エコーで血管の太さを調べることで見つけることができます。
通常の倍、6センチくらいになったら治療をせねばなりませんが、動脈は年に数ミリしか太くならないので、一度検査したら数年は大丈夫だといいます。

虚血性心血管病とは、心臓を取り巻く血管が細くなったり詰まったりして、心臓に十分な血液が運ばれなくなって発症します。
血管が細くなると狭心症、詰まると心筋梗塞と呼ばれますが、心臓がある左胸が痛くなるのが一般的な自覚症状とされます。
しかし、時に胃が痛くなると感じることもあり、病院でも見逃されることがあります。

いずれにしても、高血圧、糖尿病、ストレス、脂質異常、ストレス、喫煙などが血管にダメージを与えて発生します。
これらの因子を複数持つようになると、リスクは飛躍的に高まっていきます。

現在は治療から予防へと、医療の方針が変わってきています。
心臓の病気は、命取りになる場合が多いだけに、まずはそうならないことがなにより重要なのです。

そのための減塩であり、軽い運動、禁煙なのです。
そうした対策も、生活習慣にとりいれて毎日行うことで効果が高まります。

福田先生は「NEATになろう」と締めくくります。家でごろごろしているNEET(Not in Education, Employment or Training)ではなくNEAT(nonexercise activity thermogenesis)、運動以外の家事や通勤通学など日常生活における身体活動でエネルギー消費を高めることです。
掃除を一所懸命したり、一駅分歩いたり階段を使ったりという、日常生活の習慣を少し変えることで消費量をあげるのです。

心臓や血管の病気を通じて健康管理の重要性を説明されると、おっくうな気持ち、軽んじる姿勢も吹き飛んでしまう気がします。

次回は5月26日16時より、菊地 博達先生(1968年医学部医学科卒)にご来駕いただき、【麻酔無しで手術を受けられますか?―麻酔は危険?―】と題してご講話いただきます。
みなさま、ふるってご参加ください。

【麻酔無しで手術を受けられますか?―麻酔は危険?―】 第10回フェニックス医療講座
https://www.hiroshima-u.ac.jp/tokyo/news/44289

(広島大学関東ネットワーク 代表 千野信浩)

<お問い合わせ先> 
広島大学東京オフィス                    
Tel 03-5440-9065  Fax 03-5440-9117
E-mail  liaison-office@office.hiroshima-u.ac.jp(@は半角に変換してください)


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