市町村一周の旅

青色のスーパーカブに乗って、国内をあちこち巡りました。「市町村一周の旅」として、カブはまさにわたしの相棒です。走行距離4万キロ(地球一周相当)を超える旅でした。

思い出すのは、旅の初日です。砂利にスリップして転倒してしまい、膝に全治3ヶ月の怪我を負いました。もちろんカブも大きな衝撃とともに倒れたのですが、カーブミラーがひとつ割れただけで、ほとんど無傷だったのです。わたしは大変な治療費がかかりましたが、カブはたった600円でなおってしまうという頑丈さ。そのとき、「なんてすごいな乗り物なんだ」と実感して、尊敬の念を抱かざるをえませんでした。

それからの旅は、いつも「カブファースト」の日々でした。とにかくカブにとって、負担の少ないように、無茶な乗り方をしないように。オイル交換もマメに、車体に負担のかからないようにと。

カブとの旅も終わりが近づいたとき、最後のオイル交換を、熊本県のちいさなバイク屋さんでお願いしました。そのとき店主の方に「大切に乗っているね。」と褒めてもらったことが、ほんとうに嬉しくて。カブと旅できたことを心から幸せに思いました。

晴れの日も雨の日も風の日も、ともにあたらしい町へ訪れた相棒として、カブはわたしの人生の宝物です。旅が終わり、カブは実家で休んでもらっていますが、そろそろもう一度、乗りたいという気持ちもあります。大切な相棒ですし、それが、わたしの人生のような気がするからです。

(仁科勝介 経済学部 2020年卒 フリーランス/写真)

(Photo by 仁科勝介)


up