感銘を受けた3つの話

とある自動車会社に勤めていますが、実は進路選択と仕事でホンダさんに感銘を受けたことが幾度かあります。
今回はそのなかで3つほどお話をさせていただきます。

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まず初めに、ホンダとの出会いは案外普通で、昔一時期、実家で乗っていたのがホンダ車だった。
広島市の実家から、西条と東千田キャンパスの通学に使う日々。
だから点検のときにお店に行くのも決まって私だった。

ホンダのお店に行くと、いつも決まって整備の方が挨拶してくれる。
整備後に「よく走っていますね~!」と嬉しそうな整備士の方と話すのが、ディーラーに行く細やかな楽しみだった。

お店の裏に停めてあるS2000やCivic typeRは、どれもドレスアップがされていて、一目でホンダディーラーの従業員のものだとわかる。子ども心にワクワクする。時折整備場を見せてもらった。
当時クルマの構造やイベントに関して知る機会を得られたのは、間違いなくそのホンダ整備士の方のおかげだ。

そうして学生時代も終盤になり、就職活動では自然とクルマに関係する仕事を選んだ。
海外赴任できる仕事を探していたなかで、自動車関係を軸に据えたきっかけの一つはホンダにあったのだと思う。

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2つ目は、就職後。入社当時は、サプライチェーンの仕事で工場生産部門の仕事をしていた。
あるとき、ホンダとの公式な意見交換を行った時のこと。
私はその場にいなかったが、我々の一団が埼玉の工場を見学させて頂いていた時、生産ラインで数十台ほど、同じ紫色のクルマが一度に流れてきたという。

これは例えば買い物をするときにまとめ買いするか、小分けに買うかの違いのようなもので、会社によって考え方は様々だが、ホンダ生産方式では同じ車を一気にまとめて作る。
だからこうして珍しい色のクルマでも、一気に大量に流れてくる。

「紫色のクルマたくさん作っちゃうと、長期在庫で残りそうですね※」と我々側が何の気なしに水を向けたそうだ。
それに対してホンダの社員さんたちは、驚いたように「●●さんでは在庫になるんですか?我々は営業が売ってくれるから、安心して造れるんですよ」と胸を張って答えていたとのこと。

自分たちの領域外の部署のことでも、ワンチームとして胸を張って答える。
その自信のありようは、強いブランドがある会社だからこそできるのだと思う。負けていられないと思った。

(※弊社の場合は受注生産方式なので、そもそも在庫は存在しません)

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3つ目は、公募で販売部門の仕事に移り、ディーラーの販売企画に携わるようになってからのこと。
勉強半分興味半分で、新型フィットが発売されたとき、プライベートで横浜のホンダのお店に伺った。

ディーラーでの応対やクルマの説明というのは、メーカーによって特色がある。
営業マンが接客と説明を兼ねている会社もあれば、接客専門のスタッフを抱える会社もある。
説明だって先進機能を中心に押す会社もあれば、デザインや製造国の取り組みを話す会社もある。
それでも最後はスタッフの方の勉強や熱意次第だ。

そのとき私が話した営業の方は、とても明るく知見の深い方で、ボンネットの切れ込みが衝突時の安全のために設計されていることや、塗料の重さとクルマを軽くするためにこだわりを持って設計されているお話など、ホンダのクルマがお客さんを重視して気を遣って設計している部分を、わかりやすく丁寧に説明してくれた。
説明を聞いているだけで、自然と「これはよいものだ」と思えたのは国産では初めてかもしれない。

私も販売教育資料は何度か作ったし、他社の発表内容や書籍も目を通している。
それでも、その営業の方には珍しいお話が多く、おそらくこれは独自に勉強した内容に思えた。
身に着けているネックストラップもF1関連のもので、おそらくは私物だろう。

知識は教えられても、熱意は教えられない。
この熱意はどこから来るのだろう?ホンダにある独特のフィロソフィーのようなものがあるのだろうか。
モノづくりの仕事から、人に関わる仕事に移って、とても興味を持った経験だった。

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というわけで、ホンダさんに関わる3つのお話でした。
もし機会が頂けるのであれば、直接お話を伺う機会があると嬉しいです。

(匿名希望 法学部 2014年卒 自動車メーカー勤務)


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