家ごもり教養課程ブックガイド その1 人類史と台湾と建築と

出版関係者によると、各種の在宅の要請が出てからというもの、書籍が結構売れているようです。
にわかに生まれた自分の時間を有意義にすごそうという人も少なくはないようで、日本もなかなか捨てたもんじゃない。ならば、その気持ちに応えるべく、各分野の目利きたちに大人の教養を身につけるための入門書を紹介してもらいました。
ここでお願いがひとつ。社会人のみなさんなら、だれもがなにがしかの専門家。このプロジェクトにふるってご参加ください。

※外部サイトにリンクしています。

新型コロナウイルス感染症関連

『みんながヒーロー:新がたコロナウイルスなんかにまけないぞ!(子ども版)』

『みんながヒーロー:新がたコロナウイルスなんかにまけないぞ!(子ども版)』 「機関間常設委員会(IASC)」(1991年の国連総会にて創設)

おススメコメント:
新型コロナウイルス感染症が世界を席巻する中、その怖さから、子どもも大人も大きな不安にさらされています。そのような中、国連が主導する心理ケア担当グループが、子ども向けに絵本を作りました。この度、日本語版も出来上がり、公式サイトで無償配布されています。実際、大人もこのような厳しい時にいかに心のバランスを保つか、考えさせられます。(谷口博子 文学部1991年卒 この絵本の翻訳担当)

絵本の紹介サイト「My Hero Is You: how kids can fight COVID-19! 」<英語> 約100ヵ国語の翻訳がラインナップされる予定です。
https://interagencystandingcommittee.org/iasc-reference-group-mental-health-and-psychosocial-support-emergency-settings/my-hero-you  

人類史

『哲学と宗教全史』

『哲学と宗教全史』 出口 治明 ダイヤモンド社

内容:
還暦で世界初のインターネット生保(ライフネット生命)を立ち上げ、古希で日本初の学長国際公募により立命館アジア太平洋大学学長に就任した稀代の読書家が、古代ギリシャから現代まで100点以上の哲学者・宗教家の肖像を用いて日本人最大の弱点、「哲学と宗教」の全史を体系的に語る。

おススメコメント:
生命保険会社創業者という、学問世界からは遠い人だからこそ書けた、いまもっとも分かりやすい哲学と宗教の入門書。人間とはなにか、究極の教養を磨くための土台を作るのに好適。(千野信浩 総合科学部1985年卒)

『仏教 第2版』

『仏教 第2版』 渡辺 照宏 岩波書店

内容:
死ねば戒名をもらい、葬儀や法事は仏式で営まれることが多い。私たちの生活の中に仏教は広く深く入りこんでいる。それでいて、私たちは、仏教についてどれほど知っているだろうか。仏教を生んだインドの精神風土、仏陀とその弟子たちの生活と思想を明らかにし、その後の流れの根源と展開を追って、仏教理解に必要な基礎知識を提供する。

おススメコメント:
仏教を基本的なところから学術的な裏付けのある学びを求めるならコレだと、奈良の有名古刹の貫首。(千野信浩 総合科学部1985年卒)

『銃・病原菌・鉄』

『銃・病原菌・鉄』 ジャレド・ダイアモンド 草思社

内容:
アメリカ大陸の先住民はなぜ、旧大陸の住民に征服されたのか。なぜ、その逆は起こらなかったのか。現在の世界に広がる富とパワーの「地域格差」を生み出したものとは。1万3000年にわたる人類史のダイナミズムに隠された壮大な謎を、進化生物学、生物地理学、文化人類学、言語学など、広範な最新知見を縦横に駆使して解き明かす。

おススメコメント:
病原菌が世界の動きを止めている今だからこそ読まれている人類史の名著。(千野信浩 総合科学部1985年卒)

『ギリシア・ローマ名言集』

『ギリシア・ローマ名言集』 柳沼 重剛 岩波書店

内容:
カエサルが「賽は投げられた」と言ってルビコン川を渡ったというのは有名だが、彼は実はこう言ったのだという―「賽を投げろ」。ギリシア・ローマの名句から三三七句を選び、編者が自在に語る。見出しでさがして拾い読みしても、通読しても楽しめる一冊。

おススメコメント:
西欧文明の発祥となったギリシアと、それを世界に広めたローマ帝国の精神性の真髄。各名言には邦訳とともにギリシア語、ラテン語の原語が併記されているので、語学の勉強にも最適?(千野信浩 総合科学部1985年卒)

『サピエンス全史』

『サピエンス全史』 ユヴァル・ノア・ハラリ 河出書房新社

内容:
なぜホモ・サピエンスだけが繁栄したのか?国家、貨幣、企業…虚構が文明をもたらした!48カ国で刊行の世界的ベストセラー!

おススメコメント:
私たち人間=ホモ属サピエンスは、太古からあらゆる生き物の「種」の頂点にたっていると思いがちだ。しかし、地球が誕生したのは45億年前、「人類」の意味は「ホモ属に属する動物」で、同じホモ属に属している「ネアンデールタール人」が絶滅したのは3万年前。サピエンスが唯一の人類になったのは、たった3万年前のことなのだ。そして今、遺伝子工学の発達により、サピエンスを設計しなおすことすらできる。つまり、サピエンスの歴史に幕が下りようとしているのかもしれない。では、私たちは何になりたいのか。人類史全体をあらゆる角度でたどり、これからの在り方を考える、非常にエキサイティングな本。(北池ゆかり 文学部1998年卒)

台湾

大陸の差し金でWHO支援ままならぬ中でもCOVID-19に上手い対応を見せている台湾のタピオカや小籠包だけじゃない姿を読める硬軟4冊を紹介します(三田耕介 総合科学部1986年卒、2000年代台湾駐在5年)

『図説 台湾の歴史』

『図説 台湾の歴史』 周婉窈 平凡社

内容:
台湾の歴史を、中国漢人史の一部ではなく、先住民も含めた多様な民族からなる台湾人の歴史として描き上げた。多彩な図版を掲載し、歴史を固定的で単線的な物語ではなく、現在に想起すべき多様な記憶の場として再現することに成功した。台湾初版未収録の「戦後篇」に加え、日本統治時代の台湾の政治・文化運動も増補し、日本統治と東アジア現代史の連関について、さらに深く一貫した視座を可能にした。親しみやすい文体によって、台湾でのロング・ベストセラー、東アジア出版人会議編「東アジア人文書100」に選定されるなど、東アジアのスタンダードな歴史書としての地位を獲得した。「知識人の反植民地運動」「台湾人の芸術世界」を増補し、台湾と日本の関係をさらに広く深く省察。

おススメコメント:
16世紀に「発見」したポルトガル人からIlha Formosa(美麗島)と呼ばれ、国姓爺合戦でオランダ統治を脱し、清朝からは化外の地とされ、50年の日本統治を経て、蒋介石の根城とされた台湾の成り立ちを台湾女性歴史学者に教わる。

『台湾 日本統治時代の歴史遺産を歩く』

『台湾 日本統治時代の歴史遺産を歩く』 片倉佳史 戎光祥出版

内容:
台湾は終戦までの半世紀、日本の統治下にありました。そして、現在も、各地に日本人が絡んだ遺構が数多く眠っています。本書ではそういった遺構の姿を紹介しています。台湾の人々と日本の関わりを訪ね、台湾の人々が戦前、そして戦後の時代をいかに生き抜いてきたかを紹介しています。本書では100あまりの物件を紹介していますが、それは官庁建築や神社遺跡、駅舎、石碑、校舎に至り、観光地となっている物件から、地元の人々でも知らないというものまで、多岐にわたっています。今までほとんど知られてこなかった台湾の歴史世界に触れられる一冊。

おススメコメント:
太平洋戦争後、国民党による排斥と戒厳令の数十年を経ても島内各所に遺る日本統治時代の名残りを、台湾に住みつき取材を続け記事を書き続ける著者目線(カメラ)を通して台湾と我が国の繋がりを想う。

『台湾と山口を繋ぐ旅』

『台湾と山口を繋ぐ旅』 栖来ひかり 西日本出版社

内容:
山口出身で台湾をベースに活躍する作家が描く故郷への旅。明治維新を彩った山口出身の志士たちが、台湾で総督を歴任。その記録をなぞりながら山口の街をめぐると、目の前に現れるそこかしこに残る台湾の記憶。明治・大正・昭和・平成の時代を越えて山口と台湾で交錯する。

おススメコメント:
台湾人男性と結婚し台北に暮らす著者がふるさと山口と台湾の繋がりに気づいて書いた本。台湾総督に乃木希典はじめ5人が名を連ねる長州閥パワー健在。

『路』

『路』(ルビ:ルウ) 吉田修一 文藝春秋

内容:
ホテルの前でエリックからメモを渡された。彼の電話番号だった。「国番号も書いてあるから」とエリックは言った。すぐに春香も自分の電話番号を渡そうと思った。しかしエリックが、「電話、待ってる」と言う。「電話を待っている」と言われたはずなのに、春香の耳には「信じてる」と聞こえた。春香は自分の番号を渡さなかった。信じている、あなたを、運命を、思いを、力を―。商社員、湾生の老人、建築家、車輛工場員…台湾新幹線をめぐる日台の人々のあたたかな絆を描いた渾身の感動長篇。

おススメコメント:
NHKが公共電視台と共同でドラマ化し2020年5月に放送。一押しは商社女子社員役の波瑠なのは間違いないが、巨大プロジェクトに絡めたストーリーは秀逸で台湾迷(ファン)や台湾新幹線プロジェクト関係者の間で話題沸騰中。

建築

『建築の現代思想―ポスト・モダン以後のパラダイム』

『建築の現代思想―ポスト・モダン以後のパラダイム』 杉本 俊多(※本学名誉教授) 鹿島出版会

おススメコメント:
冒頭からの地球共栄圏、ガイヤ説は、次期パラダイムの予言であるが、今まさにあるウィルスの脅威、AI革命に人類がどう立ち向かうか、その後に地球規模での原点回帰、デザイン回帰が当然のように現れると杉本氏は読んでいる。すでに出版されてから35年が経つが、その洞察は歴史を見るかのように未来を予言するものである。(永田周太郎 工学研究科2009年修了)

『夢と魅惑の全体主義』

『夢と魅惑の全体主義』 井上 章一 文藝春秋

内容:
ヒトラー、ムソリーニ…独裁者たちは「建築」を通じて民衆へうったえかけ続けた。一方、「日本ファシズム」が生んだ風景はバラックの群れだった。建築が明らかにする全体主義の正体。

おススメコメント:
独裁者の登場によって、理想的な都市建設が可能になった。ドイツやイタリアの夢想的ともいえる都市建設の足跡をたどる。(千野信浩 総合科学部1985年卒)

※作品の内容は amazon サイトより引用

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