家ごもり教養課程ブックガイド その2 人文系の周辺

ブックガイドの第二弾は文学部的な教養書を集めてみました。

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文学・評論

『ゲド戦記』

『ゲド戦記』 アーシュラ・K・ル=グウィン 岩波書店

内容:
アースシーのゴント島に生まれた少年ゲドは、自分に並はずれた力がそなわっているのを知り、真の魔法を学ぶためロークの学院に入る。進歩は早かった。得意になったゲドは、禁じられた魔法で、自らの“影”を呼び出してしまう。

おススメコメント:
アーシュラ・K・ル グウィンのSF小説です。物語としてとても面白く引き込まれます。世界観や哲学的要素も感じることができます。個人的には思考へのきっかけを得られたり、自己思想を再確認することができました。(久保和樹 2000年工学研究科修了)

『暗約領域 新宿鮫XI』

『暗約領域 新宿鮫XI』 大沢在昌 光文社

内容:
信頼する上司・桃井が死に、恋人・晶と別れた新宿署生活安全課の刑事・鮫島は、孤独の中、捜査に没入していた。北新宿のヤミ民泊で男の銃殺死体を発見した鮫島に新上司・阿坂景子は、単独捜査をやめ、新人刑事・矢崎と組むことを命じる。一方、国際的犯罪者・陸永昌は、友人の死を知って来日する。友人とは、ヤミ民泊で殺された男だった―。冒頭から一気に読者を引き込む展開、脇役まで魅力的なキャラクター造形、痺れるセリフ、感動的なエピソードを注ぎ込んだ、八年ぶりのシリーズ最新作は、著者のミステリー&エンターテインメント作家としての最高到達点となった!

おススメコメント:
ネットが幅を利かせる中、記者の基本動作は今も警察担当から始まります。殺人事件があれば現場に行き、近所の人に話を聞く。手がかりがあれば、過去の資料や関係者にあたり、警察幹部から捜査の筋立てを確認して記事を書く。この作業はあらゆる取材にあてはまります。人に会って話を聞き、役所や図書館でその裏付けをして取材を進める。

さて、新宿鮫は30年前から続く人気シリーズです。官僚と地元採用公務員との関係。警察組織の仕組み。性善説に基づいて生きていない人々の存在。社会に出る前、とくに報道の仕事に携わろうとする学生は、読んでおきたい教科書的1冊です。格闘シーン以外は、ほぼリアリティがあります。シリーズ11冊目です。遡って10冊も読んでほしいですね。(道場主アオキ 1985年法学部卒)

『思い出トランプ』

『思い出トランプ』 向田邦子 新潮社

内容:
浮気の相手であった部下の結婚式に、妻と出席する男。おきゃんで、かわうそのような残忍さを持つ人妻。毒牙を心に抱くエリートサラリーマン。やむを得ない事故で、子どもの指を切ってしまった母親など―日常生活の中で、誰もがひとつやふたつは持っている弱さや、狡さ、後ろめたさを、人間の愛しさとして捉えた13編。直木賞受賞作「花の名前」「犬小屋」「かわうそ」を収録。

おススメコメント:
向田は1970年代、テレビドラマが娯楽の王様だった時代に、数多くの名作を生み出した天才脚本家。その天才が何の気まぐれか、小説誌に短篇を発表したら、単行本にまとめられるまえに短篇3作で直木賞を受賞した。その受賞作はじめ短篇13作を収載した、向田唯一の小説著作。唯一というのは、直木賞受賞した翌年に1981年に台湾で航空機事故で死去したから。女の情念が脚本はじめ向田作品に共通したモチーフであるが、その情念にとりつかれた生き方、心の明暗を短篇の制約の中で多重構造的に作り込む力量は、神の所行としか言いようがない。(千野信浩 総合科学部1985年卒)

文化人類学・民俗学

『忘れられた日本人』

『忘れられた日本人』 宮本 常一 岩波書店

内容:
昭和14年以来、日本全国をくまなく歩き、各地の民間伝承を克明に調査した著者(1907‐81)が、文化を築き支えてきた伝承者=老人達がどのような環境に生きてきたかを、古老たち自身の語るライフヒストリーをまじえて生き生きと描く。辺境の地で黙々と生きる日本人の存在を歴史の舞台にうかびあがらせた宮本民俗学の代表作。

おススメコメント:
市井の民俗学者が世に認められた代表作。学問世界からは一切光が当てられることがなかった庶民の生活史を足で掘り起こしている。(千野信浩 総合科学部1985年卒)

『私の体験的ノンフィクション術』

『私の体験的ノンフィクション術』 佐野 眞一 集英社

内容:
新世紀になろうと、IT時代に突入しようと、人間が生きるうえで調査し、情報を集め、それらを評価して自分のものとする道筋に大きな変化はない。ノンフィクションの方法とは、ある意味で、社会に生きるうえで必要なそれと驚くほど似ている。私淑する民俗学者・宮本常一の「野の取材学」を導きの糸に、節目節目の自作を振り返って率直に検証し、そこに込めた思いを語る。著者がすべての「歩き」「見」「聞き」「書く」人に向けて初めてまとめた、「自伝の面白さ」の文章・取材・調査論。

おススメコメント:
数多くのノンフィクション作品で知られる筆者の魅力は、徹底的に冷徹な視線で対象と向き合う姿勢。本書で明かされる手法とは、とことん現場に立ってみること。切り捨てられた情報の中に真実のカギがあるという。(千野信浩 総合科学部1985年卒)

『菊と刀』

『菊と刀』 ルース ベネディクト 越智敏之・越智道雄訳 平凡社

内容:
多くの事実誤認をも含むこの日本文化論が、なぜ強い説得力をもって我々に迫るのか?ベネディクトの論理の神経叢までも浮き彫りにする精確にしてかつ読みやすい翻訳によって、長く誤読にさらされてきた問題の書を、いま読む・読みなおす!!

おススメコメント:
言わずと知れた日本文化論の新訳版。親子で訳されていますが、親は広大院卒です。著者は来日せず、文献と聞き取りだけで分析しています。新しい翻訳でぜひお読みください。(浦川美代子 1986年総合科学部卒)

人文・思想

『石橋を叩けば渡れない』

『石橋を叩けば渡れない』 西堀 栄三郎 生産性出版

内容:
幼少のころの環境や体験、学生時代の恩師や友人との交流、研究生活、技術者となってからの現場の人たちとの接触、隊長としての南極越冬生活やヒマラヤ登山など様々の体験から生まれた著者の講演をまとめる。

おススメコメント:
著者は日本の実験計画法の草分けで、初代南極越冬隊長、雪山賛歌の作詞者です。世の中はどんどん変化していて、今回のコロナウィルス禍のような問題も出てくる。そんな中でも前例にとらわれず、果敢にチャレンジしてゆく精神はとても大切なのだということを考えさせてくれる本です。(江本知正 1978年理学研究科修了)

『スヌーピーのもっと気楽に』

『スヌーピーのもっと気楽に』 チャールズ・M・シュルツ 朝日新聞出版 

内容:
「自分以外の人間になりたいと願いながら、人生を送るのは耐えがたいって」「私は自分自身の欠点を見過ごすコツを知ってるの」スヌーピーと仲間たちは、思うようにいかなくても、気にしない、無理しない。彼らの生き方を参考にすれば、明日からもっと前向きになれる。

おススメコメント:
説明不要ですね、ハッピーになれます。幼少期は家にあり、大学時代にも読んだ記憶があります。大学の時の印象は大分違い、スヌーピーから色々と学んだと思います。何れにしても老若男女にとって良本かと思います。(久保和樹 2000年工学研究科修了)

歴史・地理

『夜と霧 新版』

『夜と霧 新版』 ヴィクトール・E・フランクル みすず書房

内容:
ユダヤ人精神分析学者がみずからのナチス強制収容所体験をつづった本書は、わが国でも1956年の初版以来、すでに古典として読みつがれている。著者は悪名高いアウシュビッツとその支所に収容されるが、想像も及ばぬ苛酷な環境を生き抜き、ついに解放される。家族は収容所で命を落とし、たった1人残されての生還だったという。

おススメコメント:
4月21日はホロコースト記念日。著者は実際の収容所での過酷な状況の中を通して生き延びるために必要なことを心理学者として分析しています。先の読めない今のこの時代に大切なことを与えてくれると思います。(浦川美代子 1986年総合科学部卒)

※作品の内容は amazon サイトより引用
※シリーズものは第一巻の解説を引用

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