「君がため」-百人一首に重ねる、親としての願い

君がため 惜しからざりし 命さへ ながくもがなと 思ひけるかな

百人一首50番にも採用されている恋の歌である。

現代語訳:あなたと逢うためなら惜しくもなかった命までもが、今では長くあってほしいと思うようになったよ。(一般社団法人 全日本かるた協会)

読み人:藤原義孝、出典:後拾遺集 恋二 669


2026年がスタートして間もなく、我が子の通う小学校では、百人一首が国語の授業に組み込まれ、休み時間に遊び感覚でカルタをする光景が見られたほか、学年ごとにクラス対抗、個人での大会を催し、白熱した時を過ごしたそうだ。

小学2年生の冬。初めての百人一首。
我が子も学内の流行りに乗り、家でも「百人一首をやる!」と言い出した。

最初は、張り切る様子を嬉しく思う一方、たいそう泣き虫で、勝負事は苦手なため、どうせ続かないだろうとたかをくくっていた母。
(保育園に通っていた頃は、負けるのがイヤだからとじゃんけんもしたがらなければ、鬼ごっこは見学、幼児用カルタは進んで読み手をやっていたくらい、徹底して勝負事を避けていた。)

しかし、子どもの成長はいつも親の予想の斜め上を行く。

負けると悔し涙を流し、一時的にいじけたり、拗ねたりしながらも、諦めはしなかった。
少しずつ決まり字を覚え、反射神経を磨き、勝負に手応えを感じるようになると、がぜんやる気になったのだ。

百人一首をわかりやすく解説した学習本はもちろん、読み札をランダムに読み上げるアプリなど、時代の恩恵にあやかりながら、柔らかな脳みそに一句、また一句と記憶していき、仕舞いには、「ママは弱すぎて練習相手にならない!」とのたまうまでに。
「今日の学校での勝負では、○○君に1枚差で勝った」など報告してくる姿は得意げそのもの。日ごとに自信をつけているのが伝わってきた。

最終的に個人戦では、160人の同級生のうち12位と入賞には届かず、悔しい思いをしたようだが、「来年こそはもっと!」と、今から息巻いている。

練習に何度か付き合ったものの、幼少期に百人一首に触れていなかった私は、結局片手で数えられる分しか、歌は覚えられなかった。

しかし、冒頭の「君がため」の句は、恋の歌とはいえ、子を思う我が心と通ずる気がして、強く印象に残っている。

子どものためなら、自分の命など全く惜しくない。けれども、一瞬一瞬を全力で生き、喜怒哀楽、表情をコロコロ変えながら、しなやかに成長していく子供の様子はできるだけ長く見ていたい。

本来の現代語訳とは異なる解釈ながら、たった31文字に、よくこれだけ強く深い想いを込めたものだと古典の力に感服する。

現実は、どれだけ我が子が大切でも、自分の心身に余裕がなく、イライラと八つ当たりすることもあるし、きれいごとで語れる話ばかりではないが、改めて、この歌の願いを少しでも長く叶え続けられるよう、日々のたわいない時間や小さな思い出をこれからも丁寧に積み重ねていこうと思う。

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