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夏休み、家族でハワイ旅行に行ってきた。
娘は来年高校受験、家族よりも友人と過ごす時間の方が楽しい年頃。最後の家族旅行かもしれない、とハワイ行きを提案したところ、中2娘、小5息子ともに、ことのほかハワイがささったらしく、主人と私の想像をはるかに超えたワクワク感とともに現地に上陸した。
決断した時は1ドル160円と、円安の暴風が吹き荒れていた。だが、子供がある程度自分のことができるようになり、親の方が「そろそろ家族で旅行にでも」と思った頃には、家族より友達優先になっていたり、学校や習い事や忙しくなっていて結局行けない、とのあるある話を先輩から聞いて、今を逃したらもうチャンスはないかも、と、やや決死の思いだった。
さて、私は生きた英語がまったく使えない。大学入試センター試験の英語は奇跡の満点で、翌日の新聞の解答で採点し終え、号泣した。おかげでかろうじて広島大学の二次試験を受験する土俵に立つことができたわけで、難しい文章題を解くのは苦手ではなかったが、オーストラリアに行った時も、妊娠中にヨルダンに行った時も、主人の金魚のフンで、自ら英語を発した記憶はほとんどない。
今回の旅行では、がんばって現地の人と英語でコミュニケーションをとるのが密かな私の目標だった。
成田からホノルルに到着、さっそく入国審査が待ち受ける。
「行ってこい」
私が家族の先頭に立たされ、現地での滞在目的や日数を確認される。職業を質問された時点でしどろもどろもいいところになり、気がつけば全て主人が対応していた。
まあ、予想どおりの展開。
現地での食事は、お店で食べるとチップが必要になることもあり、テイクアウトをよく利用した。
ある日のお昼、サーフィン目的でビーチに行く前に、主人がデリのお店でジェノベーゼパスタやサンドイッチをテイクアウトするのを遠目に見ながら待っていた。買ったものを受け取って、飲み物を買うためにABCストアへ移動する途中、主人が「あー!」と天を仰ぎ「ごめん、COKEを2本受け取り忘れた。レジの横にあったから取ってきて。こっちはABCストアにいるから。」と。
よし、いってやろうじゃないの。で、なんて言えばいいんだっけ。と知っている限りの英単語を頭に思い浮かべながらお店に戻った。
My husband left 2 cokes.
頼む、伝わってくれ。祈りながらカタカナ英語で店員さんに話しかけた。お願い、COKEを2本、私にちょうだい。
Youre husband did'nt buy coke.
まじ。買ってない?でもなんて返事していいか、まったくわからん。しかたない、ごまかして立ち去ろう。
Thank you!
笑顔で立ち去る私。
「あの、あなたのご主人、COKE買ってないって言われたんだけど」
「はー?フォーク忘れたからもらってきて、って言ったんだけど。フォークないとパスタ食べられんし。」
ひぇー、COKEじゃなくてFORKか!ほんで、私またあの店にいかんといけんの?
Excuse me,Can I get 2 forks?
Sure,you can get 2 forks!
はたして、動揺して1本多い3本のフォークを手にして家族の元に戻ると、案の定、冷たい視線を感じる。
「なんやねんな、この状況考えて、フォーク忘れたに決まっとるやないか。なんでレジの横にCOKEあると思うねん。」
「いや、サンドイッチとCOKEがセット商品で、レジ横に置いてもらったのをもらい忘れたんかと思って。」
生きた英語は、学校やテキストでは学べない。仕事でも年に何回か英語で話しかけられることがあるけど、日本語で「どういたしまして」言うてる場合じゃないで、私。恥をかいてもいい。どんどん使っていこうじゃないの、英語。そう誓った、今年の夏休み。
(パンジー田中 大学勤務 1998年文学部卒)