東京で働きながら子育てをするということ

広大を卒業して、東京で就職、そして結婚し、子育てをするということ。それはつまり、自分の親には頼ることができない可能性が高い、ということを示している。

広大への関東地区からの入学者数は、5%にも満たない。実家は、はるか彼方。助けを求めようとして叫んでも、多分、その声は届かない。

私自身、広島生まれの広島育ち、夫の実家は大阪で、近くに頼れる身内がいない状況であった。本当に仕事を続けながら子育てができるのだろうか。不安は大きく募った。それでも、家族で協力し、自分自身は育児時短制度を活用しつつ、これまでなんとかやってきた。

なにより、通り過ぎてきた道を振り返ってみると、周りには助けてくれる人がたくさんいた。私なりの経験談を、少しだけご紹介したいと思う。

夫と両家の両親

実家の近隣の病院に出産の予約を入れ、産前休暇に突入してから、実家に帰省して出産する方も多いと思う。

私は、出産予定日の少し前から、夫の母親と自分の母親に交替で自分の家に来てもらい、普段の生活を続けながら、里帰らない出産をした。

夫には、出産の苦しみを分かち合ってもらい、産後の寝たきりの日々、授乳や夜泣きで眠れない夜をともに過ごした。産後のボロボロの体では厳しい沐浴の大役を果たしてもらい、そしてなにより、生まれたての我が子の日々の成長を一緒に見届け、ともに子育てレベルをあげていくことができた。

もっとも、夫は起業したてで、事務作業の手を必要としていたため、私は慣れない育児に追われながら、確定申告や社会保険の手続きをするため、パソコンに向かう時間も多かった。ゆっくりしたい気持ちもあったが、社会との断絶感に絶望する暇はなかったように思う。

両家の母には、多大なる負担をかけたことと思うが、私も、自分の娘が同じように里帰らない出産をのぞむなら、喜んで力になりたい。その日のために、腹筋背筋を鍛え、体をメンテナンスしているところだ。自分自身、授乳による腱鞘炎に非常に悩まされた。おばあちゃんには、孫が走り回るようになれば、追いかける役目も果たしてもらえるとありがたいものだ。子守は、十分な筋力が必要とされるタフな役割だ。

「ファミリー・サポート・センター事業」を利用しよう

産後、地域の方の力をお借りする、という面では、各市区町村で制度化されている「ファミリー・サポート・センター事業」の利用をおすすめしたい。

地域の中で、「子育ての援助をお願いしたいです」という人が、「子育ての援助をしますよ」という人に、支援をお願いできるサービスだ。

私は、病院に行きたいのに夫の都合がつかない時などに、利用させてもらった。1時間500円程度の安価な料金設定(当時)のため、わりと気軽に利用することができた。請け負ってくださる方は、とにかく子供が好きで地域のために役に立ちたい、という善良な方ばかりなので、安心感も大きい。

二人目の出産後の育休中は、突然弟にお母さんをとられてナーバスになっている姉のため、保育園への送迎時に弟を預かってもらった。娘だけを迎えに行き、つかの間の二人きりの時間を過ごした。

また保育園や学童はもちろん、習い事の送迎なども依頼できるので(私の住んでいる地域の場合)、おじいちゃんやおばあちゃんが近くにいなくても、平日夕方のフォローしきれない時間帯に、やりたいことをかなえることができる。

ご近所づきあいはセーフティネット

ご近所づきあいも、セーフティネットとして大切だと痛感した出来事があった。

姉が小学校2年生、弟が保育園児のころ、弟がインフルエンザにかかり、私と夫が交代で仕事を休んだり、キャンセル待ちの病児保育に8時過ぎに空きがでて、慌てて預けて出勤したり、てんやわんやで過ごしていた。

脳みそのキャパが完全にオーバーし、娘に予定が変更になったことを伝え忘れ、学童にお迎えに行くと「もう帰宅しましたよ」と言われ、体中から血の気がひいた。鍵を持っていない娘が、玄関先で号泣している絵づらを想像し、娘の名前を大声で叫びながらママチャリをこいだ。帰宅すると、ポストに「うちにいます」の張り紙があり、なんとも、当時引っ越したてのお向かいのおうちの方が、娘を預かってくださっていた。

娘が玄関先でしくしく泣いていたので、声をかけてくださったとのことだった。お引越しの際に、ご挨拶していたので、娘も顔を知っており、お邪魔させてもらった様子だった。

私が住んでいるのは、郊外と呼ばれる地域で、すぐ近くに大きな都立公園があり、農家も残っているような場所だ。通りがかりにご近所の方とあいさつを交わしたり、野菜のおすそ分けをいただくこともある。

東京のどこにでも、ご近所づきあいが残っているとはいえないかもしれないが、ご近所の方に子供の顔を知っておいていただけるのは、日中家を留守にする者として、大変心強い。

ちなみに、近所の神社の氏子、町内会、子供会にもすべて加入しており、町内のお祭りや子供お神輿、子供会の芋ほりから慰労会まで、いろいろ参加し、顔を売ることに専念している。身近に頼れる身内がいないので、いざという時のために。

突然の子供の発熱、自分の体調不良など、家族だけで乗り切るのは難しいこともたくさん起きる。そんな時、自分だけでなんとかしようとするのではなく、誰かに頼る、ということ、その選択肢がいくつかあるということ。地域の方に子供の成長を見守っていただくということ。

親元を離れて、働きながら子育てをするには、覚悟が必要なことも事実だけど、周りの人に支えてもらって生きているんだなあ、と深く実感する瞬間でもある。

(パンジー田中 大学勤務 1998年文学部卒)

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