正しく間違っている初任給

気になりますよね、給料のこと。いくらもらえるのかが、企業選択の要素として重要なものになっていること、就活生と話していてもよくわかります。学生の頃の私もそうだったかもしれません。超売り手市場の昨今、採用側もみなさんが初任給を気にしていることがよぉくわかっていて、連日のように初任給の大幅アップが新聞の紙面をにぎわせています。

結論から申し上げると、初任給は無視することです。「あぁ、お給料いただけるのね」程度の認識でいることです。なぁに、それなりの規模で安定的に事業を営んでいる企業であれば、普通に生活できます。心配はいりません。

長きにわたったデフレ、家計の疲弊からすれば、給与アップはいい話です。それはそれとして、昨今の採用のための初任給引き上げ競争に私は危うさを禁じえないのです。

たとえば、25万円と30万円、学生の立場からしたら、とてつもない差に感じるだろうと思いますよ。

アルバイトに例えてみましょう。時給が300円違う、十分に魅力的ですよね。この300円の差、月に30時間働くとして9000円くらいのものかと思われます。バイトの9000円が魅力なら、5万円は信じられないくらいの高収入に見えて当たり前です。正しい感覚ではあります。

私が感じる危うさとは、その5万円が就職先の決定要因にしてしまっているのじゃないかということです。

初任給の5万円は大した差ではないって言える理由を説明しましょう。

なによりもまず、あなたが高いモチベーションをもって初期キャリアを積む環境があるかどうか、それが企業を選ぶうえでの最優先事項だからです。転職の時代にあっても、一番仕事(と収入)が充実する30代40代になれるかどうかは、社会人になって4~5年の初期キャリア形成がカギを握ります。
氷河期世代、50歳前後の非正規労働者の問題が指摘されていること、ご存じでしょう。人手不足が極まっているのに、なぜ氷河期世代が非正規のままなのか、不思議に思いませんか?

これこそ、初期キャリア形成の機会がなかったゆえの不運が生んだ状況でもあるのです。油断していると、あなたもそうなりかねません。20代をどう過ごすか、これが決める生涯賃金の差は、単位が億円です。たかが数万円の初任給の差なんて誤差に過ぎません。

そして、福利厚生。生活を成り立たせるものは、正味の現金収入だけではありません。一番大きな要因は、社員寮、社宅、家賃補助の有無。自ら住まいを用意して家賃光熱費ほかを負担したら、都内なら最低でも12~3万円はかかるでしょう。社員寮に2万円3万円で入れるとしたら、それだけで10万円の違いが出てきます。5万円の差なんて一発逆転です。でも、そうしたトータルな収入は初任給の数字には現れてきません。

最大の問題であり、声を大にして警告しておきたいことは、初任給引き上げ競争のなかで、禁じ手を使う企業が出始めていることです。
ある有名メーカーは、冬のボーナスを廃止して月齢賃金を引き上げました。仮に3か月分のボーナスを毎月の給料に上乗せしたら、給料は25%アップになります。25万円の初任給は31万円超になります。

別の老舗企業は退職金制度をなくして、その分を給料に上乗せすることにしました。最初のうちは退職金は少ないにしても、60万円としてそれを月にならせば5万円の上乗せになります。

しかも、この両者とも給与原資はまったく変わっていないのがミソ。会社の負担はまったく増えておらず、年収や生涯賃金も同じ。募集要項の初任給の欄に並ぶ数字だけが大幅アップしているのです。待遇の欄に「賞与あり(夏)」とか、「退職金」の文字がないだけで、書かれていないことに気づくことは難しいでしょう。

情報弱者の就活生に対して、こんな手を許していいのか。キーボードを打つ私の指は怒りで震えています。

なので、改めて結論。初任給に惑わされると会社選びを正しく間違ってしまうことになりかねません。多少踏み込んだことを申し上げるとしたら、20代は借金を恐れず、自分の経験値を増やすことをためらわないことです。ちゃんと管理ができていたら、30歳を過ぎるころには借金は返せています。

若いうちの経験は間違いなくプライスレスです。初任給の格差とは比べものにならない価値があると考えてください。

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