採用確率を高める自己アピールの作り方

言うまでもありませんが、企業が人を採用する基準というのは、極めてドライです。計算ずくです。突き詰めて言えば給料を払って、それに見合う分の利益をもたらしてくれるか、そのコスパが絶対的な判断基準です。

世に出回る都市伝説では

「学生時代の体験談に興味を持ってもらえた」
「面白そうなヤツだからと評価が高かった」
「自分の研究テーマが企業の事業に合致していた」

なんて、いろんな基準があるじゃないかと思われるかもしれません。こうした言説の後ろには隠された言葉があります。

学生時代の体験談に興味を持った、、「のは、その体験を通じた学びが会社の課題解決に近いものだったから」
面白そうなヤツだと評価した、、「のは、そのキャラクターが会社の事業展開に必要とするカラーだったから」
研究テーマが合致した、、、「のは、職場での不適合になる確率が低いと知っていたから」

採用側が意識している、していないに関わらず、重要なのは後ろの部分なのです。
「そんなことは分かっているよ」、意識高い系くんなら、訳知り顔でそういうかも知れませんね。

そこで指摘しておきたいのは、会社に提出書類や面接の場において、自己アピールが中途半端に終わっているということです。分かってんだったら、なぜできないんだと、いつもそう思います。

中途半端というときに、しばしばエピソードが具体性に欠けていて説得力がない、といったことが指摘されます。それはその通りなのですが、もうひとつの中途半端さはあまり指摘されません。

それは「採用したい」と思わせるところまで、志望学生がアピールポイントを消化し切れていない中途半端さです。

「世界中でバンバン自動車を売りたいと思っています」という学生がいたとします。
面接する人は必ず聞くでしょう。「ほう、どうやって?」
何気ない会話のようですが、ここが極めて重要なポイントです。

「バンバン売る」というのは、あなたの一方的な主張です。だれだって同じことを口にできます。
どうやって、それを実現するのか。もし、あなたの言葉が実現可能性を感じさせるものだったら、あなたのコスパは高い=採用したいという結論に結びつきます。

そこで、自己アピールが判断材料になります。

×「子どもの頃からクルマが好きで、雑誌やプラモデルがいまも家に山ほどあります」、、それじゃ、自分は「いい顧客になる」と言っているだけです。

○「子どもの頃からクルマが好きで、これまでの流行の変遷から分析すると、アメリカ、ヨーロッパ、アジアそれぞれにヒットする車種が違うように思います」、、いいですね。自分なりの市場分析ができています。

×「旅行が好きで、世界中を旅した経験があって、どんな街に住むのも苦ではありません(すいません、この2年間は海外に行けませんね。ひとつの事例としてお読み下さい)」、、それとクルマと何が関係あるのでしょうか。

○「世界中を旅した経験から分かったことは、どんな国の人とも信頼関係を結ぶ方法はひとつだけだということです」、、いいねぇ、営業のポイントを押さえています。まずは5年ほど中東に行ってもらおうかな。

要するに、アピールポイントの視点が会社の視点になっているかどうか、そこまで消化できるかどうかなのです。

「本が大好きなので、この手でベストセラーを生んでみたい」
「テレビ局でお笑い番組を手がけたい」
「航空会社で人や物の交流を増やしていきたい」
「全国の子どもたちにおいしいものを届けたい」
「商社マンとして得意な外国語を活かして貿易で貢献したい」

どんな業界に対しても、出発点はそんなものです。ただ、それは自分がファンであること、つまり優良顧客であることの表明でしかなく、その一員になることとは、ある意味真逆です。自己アピールでは採用したい=コスパが高いと思わせる材料を提示せねばなりません。

「ほう、どうやって」

この問いに採用企業の立場に立って答えられるか、自問自答してみてください。いま時点では恐らくは何も言葉が出てこないでしょうから、ここが頭を使うべきポイントです。

ずいぶんハードルの高いことのようですが、採用の現場では、相手をうならせるようなアピールができる学生なんてほとんどいないので、採用側が勝手に自己アピールの内容からコスパを想像しているのが現状です。ときどき大外れします。そんな中であなたが自己アピールで一歩踏み込むことができれば、採用の確率は飛躍的に高まると思いませんか?

具体的には業界や企業をできるだけ深くまで調べ、そこで必要とされる能力や人物像は何なのかをあぶり出す。そこに自分のアピールポイントを結びつけることです。もちろん、ビジネスのリアルを知らない学生なのですから、多少間違った認識でもいいんです。どれくらい研究したのかは、言葉の端々に出てきますので、それはそれで評価されます。できるだけ多くの文献や新聞・雑誌記事にあたり、OB訪問などを通じて、リアルに近い感覚を得ることが重要です。

(出版社勤務 編集者 総合科学部1985年卒)

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