最適な就職を見つけなければならないのか

「最適な就職を見つけなければならないのか」

 なんだか最近の就活状況を見ていると、いまの学生さんたちがとてもかわいそうに見えてきます。50歳代のワタシたちの時代よりもスタートが1年も早く、自分探しから職業体験、セミナー、エントリーシートをこなして、はじめて面接にたどり着く。

 しかも外野がとてもうるさい。自分を見つめ直せだの、人生プランがどうのだの、適職を見つけなければならないだの、ほんとーに余計なお世話な人間が山ほど登場します。

 話をさらにややこしくしているのは、たまたま適職に出会った人間が、たまたまの就職活動をさもすばらしい成功体験のように語っていて、それを持ち上げる人間も出てくるので、うぶな就活生は「ああならねば」とストレスはレッドゾーンに入ってしまうのです。

 30年前は、スタートは早くて4年生の春、多くは4年生の夏休みで、実質的な選考は秋です。年明けというか卒業間近まで採用活動は続いていきます。インターンシップもセミナーもありません。会社説明会も、パンフレット配って終わり、みたいなもので、会社の内容なんてざっくりとしか分かりませんでした。いまの就活システムからすれば、やたら乱暴、じつに大ざっぱです。行き当たりばったりです。

 じゃぁ、30年前は「進路を間違った」とか「人生やり直せねば」と死ぬほど後悔する人間がたくさんでてきたのかというと、いまと大差ありません。最近は3年後に3割が辞めるというデータが持ち出されますが、むしろ近年の3年3割は多いなという感じがします。

 それはなぜか。適職は「見つかる」「見つける」ものではなく、「仕事に適した自分になる」ものだからです。社会に出て10年も経てばよく分かります。学生時代とは雰囲気がガラッと変わって、銀行員、商社マン、新聞記者、営業マン、それぞれの色にしっかり染まっています。つまり「適職になって」いるのです。人間には極めて柔軟な対応力があることが分かります。

 それでも、どうにもこうにも仕事に適した自分になれない、そういう人間は今も昔も出てきます。これは確率論でしか語りようがなく、いつの時代も一定数が出てくるのだと考えるのが自然です。

 究極的には就職活動とは、3年3割にならないために、「自分にそれは無理」という職業を外す作業なのです。「無理」を除いたら、あとはすべてが志望先です。そのなかで第一志望は、「自分はそこなら速攻で染まることができるな」という業界であり企業であるのが望ましいと言えます。

 細かいことゴチャゴチャ考えたところで、無駄です。社会人経験もなければ社会のこともよく知らないアナタが、何を学んだところで、だれに相談したところで、どんな就職先に向いているかなんて分かるはずもありません。

 でも「それは無理」を見つける方法はあります。OBOGに会うことです。10年くらい先輩がいいでしょう。会って話をする。10分もすれば、その人となりが分かってくるものです。それは10年後のあなたです。「あれはいやだ」「ああなりたくはない」と思ったなら、その会社や業界は向いていません。そうした部分をそぎ落としていって、OBOG訪問を重ねて「なんとなくここなら」という会社との出会いを求めましょう。将来の自分の姿を確認した上での企業選びをしたのだから、そんなに外れてはいません。選考に進んで面接で志望動機を聞かれたら、「先輩にあこがれる気持ちを持てました」。

 これ以上の正しい志望動機はありません。

(チノ 出版社勤務 編集者 総合科学部1985年卒)

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