正しく間違いがちな内定先の絞り込み

空前の売り手市場、大手有名企業から中小まで、新卒採用市場は血みどろの戦いが繰り広げられている印象があります。そのせいか、あるいは現役広大生が優秀すぎるからか、いくつももらっている内定先からどこを選んだらいいのか、そんな相談を受けることが増えています。人生を決めるターニングポイント、迷う気持ちは尽きることがありませんよね。どうしたらいいか、考えてみました。

まず大前提として二つのことを頭に入れてください。

1 どんな職業人人生であれ、すべては偶然から逃れようもない
2 やった後悔は時間が癒やしてくれるが、やらなかった後悔は一生残ってしまう

まずは1。みなさんはこれまでの人生で偶然に左右された経験を思い当たるはずです。友人との出会い、夢中になった何かを知ったきっかけ、高校や広大を選んだことも偶然なら、この拙文に出会ったことも偶然ですよね。これからの人生は、その何倍もの偶然によってあなたの人生はいい方向にも苦労の道にも直面することになります。仮に念願叶って第一志望の会社に入ったとしても、不本意な職務を命じられたり、まったくソリの合わない上司や同僚と一緒になるかも知れません。逆に、とてもいい出会いから思いもよらなかった道が開けることもあります。それはすべて偶然のなせる技、神の気まぐれなのです。

この人生における偶然性は、学問的にも研究されて久しいテーマです。興味のある方は計画的偶発性理論、あるいはPLANNED HAPPENSTANCE THEORYで調べてみてください。

つまりは、元も子もない言い方になりますが、あれこれ考えても将来が見えてくるわけじゃないってことです。

さて、2番目。みなさんの中にいろんな後悔があるのではないかと思います。「あのとき、あれをやっておけばよかった」「あとから考えたらまたとないチャンスだったのに気づかなかった」「もうひと頑張りが足りなかった」などなど、巻き戻しができない時間を恨む気持ちは私もたくさん抱えています。しかし、やらかしてしまったこと、最大限の努力をしたのだけど無念に終わったことはむしろ思い出になっているのではないでしょうか。あるいはもう忘れてしまっているかも知れません。

就活でも同じです。内定先の絞り込みでも、後悔を残してはいけません。その後悔とは、自分の本当の気持ちに正直になれなかったことです。詳しくは後述します。

あなたがいくつかの内定先を持っています。どうやって決めましょうか? 業績の好調さでしょうか。ヒット商品の存在でしょうか。安定性? それとも初任給? 与えられた材料はそんなに多くはありませんね。それら元に突き詰めていくことは、正しく間違っているのかも知れません。

最終的な進路を決める上で考えて欲しいポイントは、またまた二つあります。
ひとつは、自分が譲りたくないものをはっきりさせることです。

選考の段階では、志望動機としていろんなことをアピールしたはずです。「○○で社会に貢献したい」「人々の生活を変えるものを生み出したい」「ここでしかできない仕事がある」。どれもこれも大変立派です。あなたはそうした前向きな動機が評価されて内定に至っています。
しかし、それだけではないはずです。就活の場では口に出せないこと、自分のアピールにならないこと、人に知られると恥ずかしいこともまた、あなたを動かす動機になっています。

たとえば
・友人にすごいと言われたい。マウントを取れる会社名を選びたい
・異性にモテる肩書きが欲しい
・恋人と離れたくない
・少しでも高い給料が欲しい
・一生、安定した仕事でのんびり暮らしたい
・渋谷のかっこいいオフィスで働きたい

こんな、ある意味、人間くさくていやらしい動機は、心の中にあっても口には出せませんよね。だれかに相談することなんて、とても恥ずかしいことです。でも、それは本当のあなたの志望動機であることには変わりがありません。自分を騙してまで、その本当の志望動機をどこかに追いやっていたら、必ず後悔することになります。

やらなかった後悔とはそういうことです。なので、自分の本当の気持ち、譲れないことは何かを洗い出し、整理して判断の材料にしてください。

もうひとつは、出会った社員の人となりで判断することです。

業種によって、あるいは会社によって、求められる人となりは大きく変わります。新卒のまっさらなあなたは、20代の初期キャリア形成の時点で、会社で求められる色に染まっていくことになります。銀行員は銀行員に、マスコミ業界はマスコミ人らしく、あるいは伝統的な大企業はその社風に、ベンチャー企業は創業者のコピーのようになっていくのです。仕事が早いか、のんびりしているか。細かいところに厳しいか、大らかでおおざっぱでも許されるかという仕事の基準の違いも同じです。
つまり、採用の過程で出会った人、それは将来のあなたの姿に他なりません。あなたは出会った社員みたいになりたいか、そこに憧れが持てるかは重要なファクターです。

この二つの要素を思い浮かべながら、いくつか獲得した内定先から「これはないな」と消し込んでいきます。最後に残った会社こそが、第一巡選択候補です。

2007年にiPhoneが世に出るまでは、アップルは明日をも知れないと言われていました。グーグルは設立されてまだ30年経っていません。最先端の技術を取り入れて人気の車を世に出していたあの自動車会社は、いま存続の危機にさらされています。多くの人を熱中させたゲームを作っている会社も、その後は鳴かず飛ばずという例は枚挙にいとまはありません。優良企業と呼ばれていたのにある日突然倒産、そんなことだって起きています。

近しい人に相談することもあるでしょう。その人はあなたの心までは分からないのだから、とかく現状の評価、あるいは昔の価値観で無難な答えしかできないものです。これだけ社会の動きが激しくなっている昨今、20年後30年後のことなど分かるはずもありません。どんなことも偶然から逃れようがありません。

将来性は偶然と割り切り、あなたの本当の気持ちに嘘をつかないこと。出会った社員に自分を重ねてみること。
あなたの人生の重大な選択です。軽々しくこれがまったくの正解と言うつもりはありませんが、取り得るベターな選択方法だと私は考えています。

 

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