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・人権侵害や名誉棄損にかかわるもの
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・品位の劣るもの
・その他常識的に不適切と思われるもの
(2018.1制定)
就活生のみなさんは、どのように業界・企業研究を行っているのでしょうか。業界地図?就職四季報?グーグル検索?
ここでは、”興味ある業界・企業について自分なりの見立てをもつ”ことをゴールとします。
業績や平均年収といった情報は調べれば誰でも手に入れられますし、「自動車 業界研究」で検索すれば自動運転・EVなどのトレンドや各社の競争動向をまとめたサイトも見つかるかと思います。
でも、誰もが手に入れられる情報で、他人と違うことが言えますか?
「業界・企業研究ここまでやったし大丈夫、あとはなるようになるさ」と自信をもちたくないですか?
業界・企業研究を説明したセミナーや記事はすでに数多あるため、この記事では広大生が使えるツールに焦点をあてて”こういう風に使えばこういうことができる”ということをお示ししたいと思います。
当然、志望先が事務職か研究職か、製造業か金融業か、といった状況に応じて「ここまでやる必要ないよね」と思われる方もいらっしゃると思います。ただ、”調べて自分なりの見立てをもつ”ことは社会人に必須であり、その点でこの記事は就活が終わった学生にも役に立つのではないか、と考えています。
じゃあお前は他人に教えるほどエライのかよという話ですが、私の経歴を簡単に申し上げると広大卒業後に国内のMBAへ進学、その後コンサルファームに新卒入社してM&Aを手がける部署に4年在籍しています。
経験したプロジェクトはベンチャー出資から大企業の再編など様々で、その都度新しい業界・事業を調査分析しておりノウハウは相応に知っていると自負しています。普段使用しているツールのなかに広大生も使用できるものがあるとわかり、紹介したくて執筆の機会を頂戴しました。
紹介したいツールとは、日経テレコンです。広大生は、下記URL先にログイン情報があり使えます。
https://www.lib.hiroshima-u.ac.jp/?page_id=257
このツールは、就職活動など、調査研究以外にも利用可能ですので、どんどん活用しましょう。
(※以下、広島大学中央図書館からのお願い)
ご利用の際は、学内ネットワークよりログインをお願いします。(学外からはVPN接続必要)
同時アクセス数が3で、利用の多いデータベースのため、つながらない場合は、時間をおいてアクセスしてください。また、利用後は必ずログアウトするよう注意してご利用ください。その他、大量ダウンロードの禁止等、利用上の注意点もご確認ください⇒https://www.lib.hiroshima-u.ac.jp/?page_id=291
さて、それでは自動車を例に展開していきたいと思います。
流れとしては、(1)業界動向を把握、(2)各社の差分を把握、(3)見立ての導出という3ステップで考えます。
ここでのゴールは2つ、(1)これまでその業界は儲かっていたか、(2)将来も稼ぎ続けるために何をすべきか、を知ることです。
日経テレコンの画面左に「記事検索」とあるので、そこから出てくる検索窓で「自動車 業績」と打ち込んでみます。すると、検索結果が一万件以上出てくるのではないでしょうか。
リサーチは設計が重要で、日経テレコンでは検索対象と期間、検索ワードを工夫します。
業界動向は新聞よりも週刊のビジネス雑誌にありそうなので、媒体を「ビジネス総合」にのみチェックをつけ、期間を一年とします。すると、700件弱(執筆時点)になりました。
これでもやや多いので、次は検索バーの下にある「絞り込みキーワード候補」から、それらしいものを選択します。今回は「特集」>「経営戦略」と2段階で絞り込んでみたところ、検索結果は45件になりました。
ここでようやく見出しを表示します。ざっと眺めただけでも、
・「【第2特集 マツダの試練】-米国販売改革の最前線 マツダの試練」(2020/02/15 週刊東洋経済)
・「特集 自動車 最終決断(3/6)」(2019/11/23 週刊ダイヤモンド)
など、それらしいものが見つかります。
すでに「業界地図」やグーグル検索で各社のなんとなくの情報は頭に入っていると思いますので、ここでは一点目のマツダにフォーカスした記事を読んでみることにします。
(著作権の都合上内容の記載はできませんが、下記から一部無料で読めます→https://premium.toyokeizai.net/articles/-/22880)
どうやら、自動車業界には「販売店インセンティブ」なるものがあるようです。
また、足元の製品ラインナップを示すものとして、「SUV」や「セダン」という切り口があることもわかります。
ここでは記事の核心を記載しないでおきますが、後段、マツダは「○○○○」を意識した経営を行っていると書かれています。「○○○○」は誰しも聞いたことのあるビジネス用語で戦略の一要素として語られるものですが、この記事を読んだことで、みなさんは販売店インセンティブやSUVといった、「○○○○」に紐づくキーワードを知ることができました。
そこで次のステップとして、競合他社の情報を探しに行きます。「トヨタ ○○○○」と検索してもよいですが、件数が多い場合は「トヨタ ○○○○ インセンティブ」とか「トヨタ ○○○○ SUV」で絞り込んでみましょう。
このとき、検索対象がビジネス雑誌だけでは限界があるかも知れません。その場合は検索媒体に業界紙・業界新聞を含めると見つかることがあります。
自動車について日経テレコンのなかには例えば「日刊自動車新聞」というものが収録されており、そこにはビジネス誌よりも深い情報が落ちていることがあります。おすすめの使い方は、担当者インタビューを探してみることです。
日経ビジネスなどのビジネス誌では、インタビューの相手が社長クラスであることが多く、事業の細かい話を語らないことが多いです。それに対して、業界新聞は主にその業界で働く人がほしいと思う情報を掲載しているので、例えるなら”マツダのSUV事業の担当者”のような、部長クラスがインタビューを受けていることがあります。
以上のようなプロセスを経て、業界各社の「○○○○」に関する理解を深めていくことができたと思います。その次は差分を見出していくステップです。例えば販売店インセンティブや試乗キャンペーン・TVCM放映・SNS等はどの企業も行っている施策と考えられるものの、実はその背景にはそれぞれ異なる思想があり、見方を変えると実はきちんと棲み分けているのだ、ということが説明できる状態を目指します。
マツダについて言えば、記事から、シェアが高くないなかでどうやって戦っていくべきかという発想が根底にあり、だからこそ「○○○○」を工夫している、ということがわかっています。では、シェアのより高いホンダや、そもそも手掛ける事業が自動車だけでないトヨタは、どのように「○○○○」を意識しているのでしょうか?
これはあくまで回答例として、一つの思考実験を示したものですが、
・「シェアの高くないマツダは、広告宣伝に費やすお金も限られるため、車種ではなく企業イメージを打ち出すことに注力している」
・「これに対して、トヨタは、(中略)のため、車種ごとに宣伝している」
・「ホンダは、(略)」
ということが各社で整理できたとします。
このうちマツダについてこの見立てが正しいかどうか、見受けられる具体的な事象からみていきましょう。例えば、
・本当にマツダは企業イメージの訴求を重視しているのだろうか?→実際に車種別のCMは少なく、また、”Zoom-Zoom”という歌を訴求するCM(10年前くらい?)や奥田民生氏の歌でドライブが楽しそうに感じるCM(5年前くらい?)、果ては野球場の名前も”MAZDA Zoom-Zoom スタジアム”という風に、確かに企業イメージとしての”Zoom-Zoom”推しが強そうだ!
・では、マツダ車に関するイメージとは?→自動車の顔といえるフロントマスクは、何だか似ているものが多い気がする。もしかしてこのことは、街なかで見かけたときにマツダ車と認識しやすくするためではないか!
・フロントマスクを同じにすることのメリットは?→テーマが絞られているということは、開発・製造が効率的に済むのではないか!(ここでは行いませんが、売上原価率を他社と比較したり研究開発費の実績額推移をみてみると裏付けできるかもしれません)
一旦この辺で止めておきますが、以上の通り、一点目のTVCMの話一つ取り上げてみても”TVCM自体はどの自動車メーカーもやっているが、マツダは特に企業イメージに特化して展開している。その背景は、広告宣伝費という資源が限られているから”という話が確からしいように思えてきます。また、その前提でみていくと生産や販売といった数々の施策の一つ一つにそうした背景が見え隠れするような気がしてきます。
ここで、思考実験として書いてみた上の話ですが、実はマツダの開示資料に要点がすでに書いてあります。
https://www.mazda.com/globalassets/ja/assets/investors/individual/pre201912.pdf
・p.6:マツダブランドのありたい姿
・p.12:一括企画・コモンアーキテクチャー(共通・最適構造の実現)
なんじゃそりゃ、と思われるかもしれませんが、果たして初見でこの資料をご覧になった際に、掲げられたメッセージの背後にある施策についてまで思いを馳せることは難しいのではないでしょうか。
また、上場していて株主の多い大企業であればこのような資料が開示されているものの、必ずしもみなさんが受ける企業の全てが資料を開示しているとは限りません。したがって、記事検索を通じて見立てをもつ力を養うということは、どなたにも必要だと考えます。
見立てをもつことによって、字面だけを捉えてあれこれ語るよりも、多少の手触り感をもって企業を捉えることができたのではないでしょうか。
ESや面接の攻略法はここでは語りませんが、見立てをもつことによって戦い方の根底をわかった上でOB訪問で組織風土を聞いてみたり、何社も会ううちに各社の将来への危機感の違いを比較できたりし、就活の納得感を高めることにつながると考えています。
(なお、見立ては正解することが重要ではなく、あくまで話題のとっかかりみたいな位置づけでお考えください。間違っても現役の社員さんに向けて講釈を垂れるような一方通行のコミュニケーションはやめましょう)
ここで紹介したステップは、おそらく就活生にとってはかなりディープなものと理解しています。ですが、就活サイトにありがちな3C,5Forcesまとめに比べれば「やる意味」は感じ取っていただけたのではないでしょうか。
もちろん、ここまでやらないと内定がとれないという話では決してありませんが、ここまでやれば就活生が一人で行う情報収集としては最大限だと考える方法論をお伝えしてみました。
(本稿のタイトルも、ある程度時間をかけて取り組んでほしいという思いから「週末商学部」としています)
ご質問・ご相談や感想があれば、東京オフィスまでご連絡ください。
私の本業が忙しくなければ、特定の業界を一緒に考える、ということにもお付き合いできるかと思います。
おそらくシリーズ最長の文字数となってしまいましたが、ここまでお読みくださり本当にありがとうございました。
(イノウエ コンサルティングファーム勤務 戦略コンサルタント 総合科学部2014年卒)
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