おもしろそうと思えたら、あとはなんとかなる!

「おもしろそうと思えたら、あとはなんとかなる!」

ちょっと長くなりますが、まずは私の就活話から聞いてください。

30年近く前、工学部第四類は1年次の成績をもとに2年から建築、土木、船舶と専門が分かれるようになっていて、なんとなく土木をやりたいなと思って広島にやってきた私は、今はなき市民球場に通いすぎたこともあってか、その希望叶わず船舶の道を歩むことになりました。ちょうどそのころ、「沈黙の艦隊」という漫画にはまってしまい、気が付いたら土木なんてすっかり頭から消えて“僕は潜水艦を造るんだ!”という実に単純な発想でやりたいことが早々に固まってました。
 
その思いを持ち続けて迎えたM2の春、たまたま現れたNTTのリクルーターに“会社説明会やるから興味があったら来てみて”と声をかけられ、NTTへの興味ではなく社会人への興味と流行り始めたインターネットへの興味もあって顔をだしたところ、なぜかそこで会う人会う人との波長があったようで、トントンと話が進んでいきました。

その当時、理系の就職活動は学校推薦が主流だったのですが、その枠で潜水艦を造っている会社の推薦をもらえることになってNTTの就活を一度は断りました。それからその会社の最終面接に挑んだのですが、無意識のうちにあれやこれや言い過ぎたようで、翌日、その会社のOBだった先生に呼び出され、“おい、昨日の面接で何を言った?謙虚さがないからダメだと言われたぞ!”と終了宣告を受けたのでした。

宣告を受けた直後はさすがに落ち込みましたが、“そういう理由でダメと言われるなら会社に入っても馴染めないだろうな”とすぐに頭を切り替えて、もしダメだったら電話くださいと言われてたこともありNTTに電話を入れたところ、“明日幹部面接するから来てくれるかな”ということになりました。でも、昨日まで潜水艦を造りたいと言ってた人間が急にNTTの幹部に向かってなんて語ればいいんだろうと悩んだものの、“インターネットは世界がつながる、だったら、海底ケーブルをたくさん敷設しなければならんよな、船や海中工作ロボットが要るじゃないか!”と線がつながり入社の道がひらけたのでした。

いざ会社に入ってみると、外から見てきたイメージとは違うことばかりで、“難しそうだけど、なんかおもしろそう!”と思えることもたくさん見えてきました。入社早々、新人研修を共にした同期と“こんなことできたらさらにおもしろいね”と盛り上がり、支店長に直訴してカリキュラムを変えてもらったりもしました。

でも、何もかもが思い通りにいくほど社会は甘くなく、研究所に本配属されてからは情報通信を専門に学んできた同期との競争が始まり挫折の日々が続いたのでしたが、そんな時でも、技術を創ることの楽しさより、使ってもらって喜んでもらえることのおもしろさに目覚め、“僕は研究に興味がないです、活用を追求する道を歩みたいです”と上司に訴え続け、結果そのような道を歩みながら今に至ってます。

話が長くなりましたね。

私がみなさんに言いたいことはただひとつ、「おもしろそうと思えたら、あとはなんとかなる!」ということです。みなさんのまわりにもおもしろいと思えることがたくさん転がっていると思います。それを専門にして研究している人はとても幸せでしょうし、それが仕事につながればなおさらでしょう。

でも、アナウンサーやパイロットのような仕事を特定して募集するいわゆる「ジョブ型採用」というのは、残念ながら今はあまり多くありません。政府や経団連はその採用を増やしていこうという議論をしていますが、浸透するまではもう少し時間がかかるでしょう。

となると、総合職に応募して入社してから具体的な仕事が決まる従来型の「メンバーシップ型採用」でどう勝ち進んでいくかということを考えることになりますが、厳しいことを言ってしまうかもしれませんが、志望動機で言った「やりたいこと」に最初からずっと携われるしあわせな人はほとんどいないと思いますし、みなさんが即戦力として期待されることもまずないでしょう。

では、会社は何を期待してみなさんを採用しようとしているのでしょうか。私見になりますが、それは皆さんが学生時代に得た専門知識ではなく、この会社で「皆さんが成長する伸びしろ」がどのくらいあるのか、つまり、人としてのバイタリティだとか、物事の考え方だとか、そういう部分だと私は思います。多くの会社はみなさんを育てることを前提に採用するのです。

言葉は変ですが、その「伸びしろ」は普段の学生生活で十分身に着けることができると思います。仕事は一人でやるものではありません。いろんな人が助け合ってゴールを目指します。ゼミやサークル、バイトだってそうですよね。“自分はこう思うのだけどあの人とは意見が合わない”だとか、“あ、この人いいこと言ってる”だとか、人と接して気づくこと、得ることはたくさんありませんか?そういったものを大切にしながら、何でもいいのでひとつのことをやり切ってみてください。そうすれば、困ったときにどうすればいいのか、みんなが同じ思いになるにはどうしたらいいのか、そういったことを自分で考える力が身につきはじめ、それが専門知識を吸収して社会人としてどれだけ大きく成長できるかの「伸びしろ」になるのです。

仕事に必要な専門知識は研修で学ぶこともあるでしょうし、先輩方がやさしく、時には厳しくたくさんのことを教えてくれるでしょう。会社は皆さんの成長に期待するわけですから、その仕事のプロとなる手助けをしてくれるでしょう。

私の興味の記憶をたどってみると、パイロット⇒公務員⇒土木⇒潜水艦⇒インターネット⇒研究開発⇒技術活用というように流れてきました。会社に入ってからは会社の中で仕事の興味がかわってきて、今になって、やっと定位置に腰を据えることができました。みなさんも応募するからにはその会社に何らかしらの興味を少なくとも持ったのでしょうから、入社して思うような仕事につけなくても成長の過程でおもしろいと思えること、やってみたいと思うことにきっと出会えるはずです。

そうなればしめたもの、あとはなんとかなります!

(ヒョウドウ 通信事業会社勤務 研究開発 工学研究科1997年修了)

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