週末商学部:3C,4P,5Forcesはいつ使うのか?

週末商学部:3C,4P,5Forcesはいつ使うのか?

はじめに

前回は、業界・企業研究に必要な情報収集の手段についてお伝えしました。
【週末商学部:業界・企業研究とは】
https://www.hiroshima-u.ac.jp/tokyo/syukatsudojo/commerce

今回は、就活生が陥りがちな3C,4P,5Forcesのワナについて取り上げたいと思います。
3C,4P,5Forcesは経営学における有名なフレームワークで、グループディスカッションやケース課題では考える手助けをしてくれる一方で、しばしば“これ何のためにやってるんだっけ”と方向性が迷子になっている場面も見受けられます。

特に東京での就職活動では、商学部を擁する有名私大の学生が議論をリードするためにこれらを持ち出してくることがあるため、対処方法を知っておく必要があります。対処できるようになれば、雰囲気に飲まれるのを防ぐのみならず、場合によっては「それ使いどきを間違えていませんか...?」と指摘することであなたの高い評価にもつながります。

そして、もちろん、これらのフレームワークは就職活動で使って終わりというものではありませんから、正しい使いどきを心がけることで仕事の質を高めることにもなると考えます。
巻末には参考図書を載せていますので、興味のある人は学びを深めていただければと思います。

3C,4P,5Forcesを使ってみよう

紙面の都合上用語の説明は省きますので、3Cなどをご存知でない方は「3C分析」のように“分析”を語尾につけて検索してみてください。Googleで画像検索すると比較的わかりやすいものが見つかると思います。

それでは本題に入ります。
以下のお題について、あなたならどのようにしてレポートを作成しますか。

「最新作のどうぶつの森がなぜ過去最大のヒットとなったか理由を明らかにするとともに、あなたなら続編をどうするか、考えを述べよ」

(念のためですが、本記事で議論したいのは“あなたならどのようにしてレポートを作成しますか”の部分です。
調べて書く、と一言で終えるのではなく、どういった手順でどのようなことに気をつけながらレポートを作成するか、を設計してみてください。)

回答編

まず、お題「どうぶつの森」について私なりの回答をお示しします。(本筋ではないため簡素にしています)

・どうぶつの森が過去最大のヒットとなっている理由は2点、(1)巣ごもり需要と、(2)前作の売り逃しを踏まえた供給体制構築が功を奏したため。(理由の詳細は省略)
・続編については、ぶつ森シリーズはキラータイトル(=本体を買う理由となるソフト)であるため引き続き家庭用ゲーム機向けを主軸としつつも、顧客層をさらに広げるためにはスマホにも展開を広げ、高齢者層の獲得を狙うべきではないか。

では、どういった手順でこの回答を作ったかですが、ざっくり示すと以下の通りです。

(1)まず3Cを念頭に、情報収集
→市場:巣ごもりという追い風が吹いていた。これは理由として妥当かも!
→競合:他社ソフトの話はあんまり関係なさそう。。。
→自社:過去作と何が違うのか?そもそも何を比較したら説明できるのか?よくわからない。。。

(2)そこで4Pを使って、過去作との差分について考えてみる
→Price:差分を生むには至らなさそう。。。
→Place:オンライン販売は今や主流となりつつあるな。また、前作は基板が不足して供給が止まったようだ。すると今回は、売り逃しが少ないのかもしれない!
→Product:(省略)
→Promotion:(省略)

(3)レポートに何を記載するかの整理
→モレなくダブりないか?:3Cの観点でみれば競合の情報が抜け落ちているといえるものの、今回においてそもそも競合は重要な情報ではなさそう。むしろその代わりに「需要/供給」の二元論で論理構成ができそうで、その方がわかりやすくもある。
→メッセージにインパクトはあるか?:前段についてあまり面白い発想ができなかったが、後段(続編の話)については何か深掘りできないか。例えば、近年家庭用ゲーム機を脅かしつつあるスマホゲームと棲み分ける道筋を考えてみてはどうかな。(なお後段の手順は割愛)

以上のようにこれらのフレームワークは、分析に着手する際の切り口となるだけでなく、整理する際のチェックの目的でも用いられます。それは、単に抜け漏れを防ぐということにとどまらず、俯瞰することで小項目ごとの重要性を比較でき、最終的には大項目としてのメッセージが明確になるという機能をもつのです。

終わりに - 3C,4P,5Forcesスライドの多くが無意味

私が採用イベントのスタッフとしてグループワークを見守る立場となる際、学生から「レビューしてください」と3Cや4Pに沿って箇条書きに整理された紙を渡されることがあります。

ここで、『回答編』冒頭の「ぶつ森」に関する私のレポート回答例をご覧ください。
通常、ビジネスの企画書は、現状分析→提案という要素で構成されます。その説明資料を作成する場合、(1)巣ごもり需要に関するスライド、(2)供給体制強化に関するスライドは必須だと思いますが、3Cや4Pの表はスライドとして必要でしょうか?

例えば私が省略した4Pの残り2箇所について、どういった内容の情報が記載されそうか想像してみてください。おそらく一般の感覚で推測できる領域をはみ出す情報は少なく、すなわち「面白くない、重要でない」情報が羅列された表ができあがると考えられます。
このように、考えを発散したり整理したりするための道具としてフレームワークは役に立つものの、表そのものを埋めて示すことを仕事の目的としてしまうと、重要でないところに時間を使っていることになります。

したがって、他大学の学生が知ったかぶりから「3Cの表を作ろう!」と言い出したとしても、やんわりと断り(全員でやると全滅する危険あり)、そして企画ストーリーを考えることに時間を使いましょう。自分たちは何が見えていて何をわかっていないのか、それを認識するためのツールとしてフレームワークをお使いください。

参考図書

(1)沼上 幹『わかりやすいマーケティング戦略 新版』有斐閣アルマ,2008.
(2)沼上 幹『ゼロからの経営戦略 (シリーズ・ケースで読み解く経営学) 』ミネルヴァ書房,2016.
(3)沼上 幹『経営戦略の思考法』日本経済新聞出版社,2009.

<補足>
(1)商学部のテキスト。数日で読めます
(2)3C,4P,5Forcesと関係ないが、経営戦略論に興味を持ち始めたビジネスパーソン向け
(3)3C,4P,5Forcesとほぼ関係ないが、経営戦略論に関心の高い人向け

(イノウエ コンサルティングファーム勤務 戦略コンサルタント 総合科学部2014年卒)

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