コロナ時代のガクチカとは

就職志望の学生さんと話していると、「自分にはガクチカが・・」という悩みを打ち明けられることがとても多いです。余談ながらガクチカという言葉は、この数年で生まれたものでして、最初に耳にしたときはこっそりスマホで調べてみたものです。要は「学生生活のなかで自分をアピールするエピソード」で、そう言うと長くなるのでガクチカなどという言葉が生まれたのだろうなと想像します。それなら今も昔も変わらぬ面接やエントリーシートでの重要テーマです。

あなたの周囲にも、一見すごいガクチカがある人が居るかも知れません。スポーツで全国大会に行ったとか、ボランティア活動で多くの人を動かしたとか、世界中を見て回ったとか、日本の全市町村をバイクで巡ってきたとか。

普通に学生生活を送っている人にとっては、「かなわないな」と臆する気持ちになるはずです。そしてバイトでの苦労話とか、サークルの副部長(副部長ってのが、だいたい怪しさ満載なんですけどね)として何かを勝ち取ったとかいう話を、最大限盛ってストーリーを創作してしまうのですね。

でも、そんな付け足し、盛り放題の作り話なんて、ちょっと話をしたら底の浅さは分かってしまうものです。何より何十人、何百人という志望者が似たような話を作ってくるので、聞く方に印象が残っているはずもありません。

さらにはこのコロナ禍です。大学に顔出す時間も少なく、経験できることも限られます。人との出会いも機会は減っているはずです。

「どうしたらいいんだろう」、そんな気持ちになっていること、痛いほど分かりますよ。

しかし、誇るべきガクチカがある人も、ない人も、共通して誤解していることがあります。それはガクチカの評価が、そのレベルや大きさで決まるのではと考えているところです。

たとえば「世界一周してきました」という人がいたとします(コロナ禍では不可能ではありますが)。それをアピールされた採用担当者は、どう思うでしょう。

「ふーん」

でおしまいでしょう。

世界一周なんてヒマとカネがあれば、だれにだってできることです(くどいようですが、今はだれにとっても不可能ですが)。

でも飛行機も豪華客船も使わずに世界一周したなら、そりゃすごいことです。作家の沢木耕太郎は、香港からロンドンまでバスだけで旅行をして、長く読み継がれる旅行記をものして有名作家になりました(『深夜特急』全6巻 新潮文庫)。まさに「どうやった」が価値であることが分かります。

『マツコの知らない世界』というバラエティ番組をご存じでしょうか。些細なテーマを突き詰めた人に、奥深い世界と、それを探求する姿を紹介する内容で、登場するマニアの人となりが見事なまでに見えてきて面白いです。テレビに出るくらいだから、それぞれのテーマに対して観る人が驚くだけの「深み」は必要ですが、印象に残るのは、その深みに「どうやって」たどりついたのかという部分です。

なぜガクチカを聞くのかというと、「どうやって」を通してあなたの人間性、成長、経験を見たいからです。「何をやった」ではなく「どうやった」こそがガクチカの価値なのです。WHATじゃなくHOWがポイントです。

つい先日会った学生さん、英語が得意でTOEICが900点超えているとこのことでした。

そんな人は世の中にたくさんいるので、最初に聞いたときのワタシの印象は「ふーん」でした。

しかし、ほとんどおカネを使うことなくYouTubeと動画配信サイトでの映画視聴だけで勉強したと聞いて、「どひゃー」と驚きました。つまり、このガクチカの価値は点数ではなく学習方法にあるのです。

ガクチカのテーマなんて何でもいいんです。ポイントは「どうやって」があるか、ないかです。どんな些細なことでも、そこに向き合うあなたの「思い」や「創意工夫」「直面した苦悩」を詳細に、具体的に表現することです。

余談ながら、だれもが知る世界的IT企業の採用責任者が、こんなこと言っていました。

「バイトやサークルでの経験なんて聞くのもいや。大学の勉強での苦労話をぜひとも聞きたいのだが、そんなことをアピールする学生はめったにいない」

コロナがあろうがなかろうが、だれでも語ることができるガクチカのテーマだと思いませんか?

(出版社勤務 編集者 総合科学部1985年卒)

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