正しく間違っている面接対策

「人は見た目が9割」と言われます。これはアメリカの心理学者、アルバート・メラビアンが提唱した「3Vの法則」がベースになっています。
人間はコミュニケーションにおいて、視覚(Visual)、聴覚(Vocal)、言語(Verbal)の3つの情報から相手のことを判断しているのですが、その影響度は視覚55%、聴覚38%、言語7%と推定され、言葉が伝えるものは1割に満たない、つまり残り9割(これを非言語、ノンバーバルコミュニケーションと呼びます)は、見た目だというのが、その意味です。
就活において何よりも面接が重要である理由が、まさしくこれです。そこで面接対策として、話す中身を何度も練り直し、友人などを相手に模擬面接をするのですが、それだけでは、正しく間違ったことになります。

なぜか。
問題は、話す内容とはまったく関係ない、あなたの人となりの情報が伝わっていることです。面接の場であなたは全身から自分自身の内面の情報を発信しまくっているのです。よく、「オーラ」があるとかないとか言いますよね。そのオーラのことです。
面接対策のこと、9割を占めるノンバーバルの中身を知ることから始めましょう。

人間は、何気ない体の動きに心の中が表れ、それが相手に伝ってしまいます。キョロキョロしたら、自信のなさや不安が、声の高いトーンは緊張が(つまりプレッシャーに弱い)バレています。
これらはある程度、避けようがないのですが、確実に対策が効くのは、所作と服装です。

他人から好かれる/嫌われる特性について、いくつかの研究があります(豊田弘司 2004、藤平亜耶ほか 2013、アンダーソン 1968)。それはニアリーイコール、面接での好感度でもあるのですが、これらの研究報告からは好かれるポイント、嫌われるポイントには共通点が見いだせます。

好かれるポイント
・優しい、思いやりがある
・明るい、人当たりのよい
・責任感の強い、努力家、信頼できる

嫌われるポイント
・ウソをつく、人をけなす
・責任感がない、不平不満が多い
・落ち着きがない、短気

当たり前といえば当たり前のポイントですが、いくら自分の性格を言葉で伝えようとしても、言葉の効果は1割しかないのは最初に触れた通りです。
ノンバーバルの部分について無自覚のまま、他人から嫌われ兼ねない自分の面を見せてしまっている人、少なからずいそうです。何しろ無自覚ですから。いったん第一印象を持たれたら修正するのはかなり困難であるという、強い影響力のことを初頭効果と呼びます。

アメリカの心理学者(であり数学者)、マービン・ミンスキーによって体系化されたフレーム理論というものがあります。人間は似たような物や事象に触れると、その中から共通した部分を見いだし、既知の知識として利用するという内容です。フレーム、つまり枠にはめて物事を理解することで、情報処理の効率を高めているのです。こうした人間の処理プロセスが存在するため、いったんはめられたフレームは外しにくい、つまり初頭効果が発生するのです。

蛇足ながら、「国立大学の学生は」「地方出身者は」「法学部で学んだ学生は」といった予断も、フレーム理論が説明するところです。これを逆手に取るには、、、というのは別のところで。
就活の指南本では、第一印象が大切で、清潔な服装でとか、相手の目を見て話せとか、大まかには教えています。しかし、私がこれまで数多くの就活生に会ってきた経験からすると、それでは少し足りないなと常々考えています。
カギは所作、姿勢から生まれる信頼感です。

まず、お辞儀。
お辞儀でやっていはいけないことは、首を前に曲げてしまうことです。そうすると猫背になり、手が前に回ってしまいます。他人にやってもらったら分かるでしょうけど、とても貧相に見えます。下心が見えるようで、信頼感に疑問が付いてしまいます。お辞儀は腰から頭まではまっすぐにしたまま、腰を中心にハサミのように曲げることです。警察官や自衛官が参考になります。

社会人でも無自覚な人が多いのは、ジャケットのボタンです。
ボタンは立っているときは必ず留め、椅子に座るときは外すのが大原則です。立っているときはボタンを留めることで本来のあるべきジャケットの形になり、座るときは逆にボタンが掛かっていると形を崩してしまいます。スマートなジャケット姿は信頼感を高めます。アメリカの大統領(T前大統領を除く)の所作を見ていると、かなり忙しくボタンを留め外ししていることが分かりますが、それはイメージを何より大切にする立場であるからです。ついでながら、ジャケットのポケットにモノを入れてはいけません。たちまち形が崩れて、だらしなく見えてしまいます。

椅子に座るときに注意せねばならないのは、背もたれです。
背もたれに体を預けては絶対にいけません。背もたれを使うと、背中が曲がり、腰が出て足が開きがちになります。とてもだらしなく、尊大に見えます。椅子には背中に拳ひとつ分くらい空けて、まっすぐ座ります。
椅子に座ったあなた、面接官の目に付いてしまうのは靴です。学生なので高い靴を履く必要はないのですが、汚れはあなたのものぐさな性格を物語ってしまいます。とにかくとことん磨いておくことです。

何気なく腕組みをするクセはありませんか? 腕組みは、相手が話していることに対する反対の意思表明であり、意見の拒絶の仕草です。仮に単なるクセであっても、相手はそう考えず、あなたの印象は最悪になります。
目線をキョロキョロさせたり、上体をグラグラさせたら、とても落ち着きがなく見えます。それは不安な気持ちの表明、精神の不安定さ以外の何者でもなく、入社後の忍耐力、協調性に疑問符が付きます。

もし面接を受けている会社の社員になったら、あなたが会社の看板になります。その看板が貧相だったり、だらしなくて信頼置けそうになかったら会社の損失は小さくありません。その意味では会社も「見た目が9割」です。採用担当者も自覚はしていないでしょうが、第一印象は想像以上に重要視されていると考えてください。
長年の間に身に染みついたクセや挙動は、他人から指摘されない限り気づきません。面接の場での自分は相手にどんな印象を与えるのか、という視点を意識して修正する。身近な人に見てもらうのでもいいですし、ビデオで自撮りしてみるのでも驚くほどアラが見えてくるものです。

ノンバーバル部分の⽋点をなくしていく、これを加えてはじめて正しい面接対策となるのです。

(出版社勤務 編集者 総合科学部1985年卒)

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