正しく間違ってしまう志望動機の作り方

就職活動では、常に問われますよね、志望の動機。

これまでいろんな学生さんの志望動機を伺ってきましたが、正直、「アピールできるのかな」「自分を語ったことになるのか」と思わされること、かなりの割合に上ります。

それは「正しく考えて、正しく間違っちゃっている」からです。

ある私立大学医学部では面接試験を課しています。そこでも必ず聞くのが「医師を志望する動機」です。

みなさんも、いったん読むのを止めて、医者になる志望動機を考えてみてください。

(30秒経過)

はい、それではお聞きします。

あなたは志望動機として「身内が亡くなった、病気になった」経験を頭に浮かべませんでしたか?

じつはその大学の面接ではかなりの割合で、この身内の話が出てくるというのです。

なかでも「おばあちゃんを亡くした」エピソードです。

だれにとってもおばあちゃんの死は衝撃的で、悲しい思い出です。だからこそ命に向き合う、病に取り組む仕事を選ぶきっかけになるのは極めて自然です。

そうしたピュアな気持ちを軽んじるはずはないのですが、面接する立場に立ってみましょう。

面接で話を聞く100人なり200人なり(実際はもっと多いでしょうけど)の学生が次々に「おばあちゃんの死」を語ったらどうでしょう。

動機としてどこも間違ってはいないのですが、面接も試験。相手に好印象を残せるでしょうか。平均点以上のポイントを期待できるでしょうか。

死の尊厳を軽んじるつもりも気持ちを否定するつもりもありませんが、志望動機も選考の判断材料になっているという点では、残念ながら正しい選択とは言えません。

ワタシが「正しく間違っている」というのはそういう意味です。

企業に対する志望動機もまったく同じです。

どの業界でも同じはずですが、志望動機の正しく間違った「あるある」は存在します。

それは企業や業界が置かれた立場や社会から求められる役割、企業がアピールしているミッションなどに過度に寄り添って「こう言えば正しいはず」、つまり優等生になろうと考えた結果です。

しかし、悲しいかな、同じような経験しか持たない大学生が優等生的に考えると結論は驚くほど似通ったものになっちゃうのです。

これをワタシは「志望動機のおばあちゃん問題」と勝手に名付けています。

人気企業の新卒採用では、何十倍もの競争率になります。こうなると平均点を取っても闘いようがなく、定性的定量的なもの含めてポイントゲット、加点法の争いになります。

志望動機で他の多くの学生と同じようなことを述べて、平均点以上のものを得られるでしょうか。好印象を残すことができるでしょうか。

賢明なみなさまのこと、すでにお気づきのことかとは思いますが、志望動機の点数はプラマイゼロ、空白です。エントリーシートなら、「おばあちゃん問題」みたいな単語が出てきた時点で読み飛ばされます。

逆に考えれば、多くの学生がこうして下手を打っているのだから、ここはポイントゲットのチャンスでもあります。おばあちゃん問題にハマらない志望動機を洗い出すことです。

それはあなたの本当の気持ちに正直になるからはじめなければなりません。

よく考えてみてください。

面接官だって元は就活の学生だったわけで、当時はあなたと同じ「本当の気持ち」を持っていたはずです。

あなたが心を裸にして本当の気持ちを語ることができれば、そこには「うん、そうだよな。きれいごとじゃないよな」って共感が生まれます。

つまり志望動機で爪痕を残し、他の学生とは違う何かをアピールできることになるのです。

分かりやすい例で考えてみましょう。

今も昔も変わらぬ花形職業のひとつ、パイロット。

パイロットを志望する人って、お客さんをA地点からB地点まで運ぶことに一所懸命になりたいからなるのでしょうか。旅先で搭乗客が喜んだ顔を見たいからでしょうか。

いやいや、格好良さに憧れていて超難関のライセンスを取れて高給取りで仕事で世界中を訪れることができるからでしょう。リカちゃんのパパになれるからでしょう。

それを外してどんな志望動機があるのでしょうか。

ただし、本当の気持ちを素のまま出したら単なるアホ、未熟な子供と思われてしまうので、それをオブラートに包むこと、これが就活のテクニックです。

「東京の大手町で働きたい」ではなく「大都市で多くの人と出会いたい」

「有名人に出会いたい」ではなく「有名人を世に広めたい」

「人より多く給料をもらいたい」ではなく「豊かな生活のためにがんばりたい」

「有名企業に入って自慢したい」ではなく「自分の実力を試したい」

「異性にもてるようになりたい」ではなく「自分をとことん磨きたい」

「ヨゴレ仕事はいやだ」ではなく「自分がときめくことを大事にしたい」

こういう言い換えについては、身近な大人に相談すると言葉が見つかります。

人生経験はこういうところで生きているのです。  

(出版社勤務 編集者 総合科学部1985年卒)

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