正しく間違ってしまう希望職種

3月1日は公式に就活がスタートとなりました(本当はすでに内定が2割ほど出ているらしく、大人社会の本音と建て前のいやらしいところではありますがね)。
それに合わせて日本経済新聞が広告の別刷りを発行しているのですが、そのなかで、テレビプロデューサーの佐久間宣行さんが秀逸なアドバイスをしています。なにしろ広告記事なので、いつ虚空に消えるかも知れません。ここでエッセンスだけ書き残しておきたいと思います。

・最初の仕事は、毎日やってくる現場を乗りこなせるかどうか、それが働くことだ
・希望とは違う職種に配属されることは当たり前だが、そんなときこそ、やりたい仕事に掛け合わせる武器を磨く好機だ
・企業は「辞めずに組織でうまくやれる前提の上で、勢いがある若者」を重宝する
・仕事に自分だけの行き過ぎたこだわりを持ち、無意味な自己主張や不満を出せば、現場で信頼されず、裁量も与えられない。時間の無駄。
(エッセンスはここまで)

そうやって信頼関係を築くことで任される範囲が広がる、結果として自分がやりたいように仕事ができるようになる、そんな内容です。
信頼関係が不可欠ってところが重要でして、佐久間さんの著書『ずるい仕事術』(ダイヤモンド社刊)でも重ね重ね、組織内での信頼関係の重要性が語られています。

個性だの、自主性だの、次世代を担うだの、募集広告では美辞麗句が並んでいますが、間違っちゃいけないのは、それはあくまで「組織人として」という絶対的な前提があってのことです。
組織人としての作法を身につけてはじめて、やりたい仕事、自分らしさを発揮できるのです。

もうひとつ重要なことは、自分のこだわりの外にある仕事の経験は武器になるってくだりです。もっといえば、経験した業務の広さ多様性こそが、だれにも負けない個性になるのです。
経理を知っていれば利益を意識した営業ができます。営業の経験があれば顧客に刺さるマーケティングができます。マーケティングで市場を知っていれば、ヒットする製品開発に繋がります。製品開発の現場を知っていれば、必要となる資金調達に経理マンとして柔軟に対応してバックアップできます。

さらに突っ込んでいえば、組織の中でさまざまな経験をするうちに、自分の得意分野、やりたい仕事はどんどん変わっていくものです。
営業にしろ総務経理にしろマーケティングにしろ、学生の段階ではその名称から仕事の中身を想像するしかありません。実際の現場を知らないのに、職種への適性なんて分かるはずもないのです。

つまり、入社して数年間の人事配置、企業によっては職種のローテーションのなかで自分の適性を見つけ、将来のための武器を磨き、本当の職種を見つけていくのです。

自分の職業観、職種をはっきりさせることは、志望動機や本気度を示すための正しい方法だと、就職指南書では書かれています。
実際に、どんな職種を希望しているかと面接で聞かれることは多い筈です。ここぞとばかり「ワタシは●●の職種に向いていると思うのでぜひともやりたいです」と勢い込んでしまうと、「それじゃ、希望が叶わなかったらどうするのですか」と返されます。そこで言いよどんでしまったり、妙に突っ張ってみせたりしたら、組織人として適性に疑問符が付けられてしまいます。
つまり、正しく間違ってしまうのです。

企業では異動、職種転換は当たり前です。職種別採用を行う企業もありますが、それもあくまで最初の配属を保証するってだけの話です。それでも採用プロセスのなかで希望職種を聞いてくるのは、あなたの職業観を探る材料にしているに過ぎません。あるいは組織人としての適性を試しているのかも知れません。

希望職種を問われたら、拙劣な知識で答えるくらいなら、逆手にとって仕事に対する考え方をアピールするように返すのがいいでしょう。

広告宣伝ではなく、「顧客に企業の魅力をアピールするような職種」
経営企画ではなく、「会社の可能性を広げるような仕事」
営業ではなく、「顧客との信頼関係を構築する仕事」
国際部門ではなく、「世界の市場を相手にしたい」
製品開発ではなく、「未知の分野を切り開くような経験」
総務経理人事ではなく、「会社の運営を支える仕事」

重ねて言っておきますが、こうした職業観は、社会人経験のない新卒時点でのぼんやりした気持ちに過ぎません。なによりもまず、現場に⽴つ前提となる組織人としての適性、企業文化との相性のアピールが必須です

佐久間さんは大意、面接の場数を踏むことでコミュニケーション能力を高めて、嘘のない自分を語れるようになれと結んでいます。

(出版社勤務 編集者 総合科学部1985年卒)

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