正しく間違っているんじゃないか広大生の自己評価

 東京でもキャリアセンターの相談員として就活生に会う機会が少なからずあります。
 それぞれ頼もしい面、豊かな経験を持っていることが分かって期待が持てるのですが、残念なことに多くの学生さんは自己評価が低いと感じています。
 これはワタシだけでなく、多くのOBOGが同じ印象を持っており、非常にもったいないことです。
 何を隠そう、ワタシも自己評価低い組だったので、まずは、自分自身の気持ちを振り返りながら背景を考えてみましょう。

・地方都市で生活してきたから最先端を知らない、経験が足りない
・就活の情報が入ってこない
・ビジネスのリアルを感じる機会が少ない
・自分の能力がどのレベルにあるのか、似たような学校が周囲にないので比較できない
・東京の学生は自信たっぷり、就活に関わる知識経験が豊富でキラキラして見える
・田舎者と馬鹿にされるんじゃないか。

 こんなことが気になって、雰囲気に飲まれてしまうのですね。多分、広大生が置かれた状況の認識としては正しいのです。
 しかし、その状況をマイナス要素と捉えて自己評価をするのは間違っている、つまり正しく間違っているんじゃないかと思います。広大生として学んだ4年間はもっと前向きに考えられるはず、そう気づいたのは社会人になってかなり時間が経ってからのことでした。

・地方都市での生活経験があるから、地方都市への転勤に抵抗がない。日本全国をフラットに見ることができる
 企業にとって、これは重要なことです。
  関東圏で生まれ育ち「地元」の大学を出た都会っ子、多くは「大企業に入ったら最初は地方に飛ばされるんですよね」なんてことを口にして人事担当者を悩ませるのです。
 これを耳にしてカチンと来たワタシは「悪かったな、その飛ばされる僻地で生まれ育ったんだよ」と、はるか歳下の若造相手に軽くケンカを売ってしまいます。
 企業にとってみたら、そういう気持ちで本社に帰る日を指折り数えてやる気のない仕事をされたら、たまったもんじゃありません。地方に配属が決まったとたんに辞めちゃう新人も少なくないのです。
 なによりいまどきの企業のビジネスには都会も地方もありません。国境すらなくなりつつあります。
  東京から上から目線の人間って、それだけでビジネスに不適格ですらあると言えるのです。

・就活の情報に振り回されていない
 大都市圏の大学に行っている就活のメリットは、環境が挙げられます。他大学を含めて学生の数が桁違いだから、就活に早くから取り組む同級生の姿が目に入ってくる。
 大企業の採用活動も本社が中心だから、情報がすぐに入ってくるし接触する機会も多い。就職情報会社も大都市圏中心に動いているから、各種のイベントにも気軽に参加できる。ケタ違いの恵まれた環境です。
 しかし、その中で根拠のない噂、都市伝説の類いもジャンジャン入ってきます。多くの先輩たちの成功例をみて、根拠のない自信を持ってしまったり、できもしない真似をしてみたりします。
 スーパーマンのような内定長者(ってのが、ごく少数ですが実際にいるものです)と自分を比較して、足りない部分のあれもこれもと中途半端に食い散らかすように取り組んで、「迷子」になったりします。
 企業が新卒を採用する基準は、基本的には広い意味での人間性です。その企業や業務に合っているか、チームに溶け込めるか、将来に亘って活躍できそうかを判断しているわけで、就活指導でなされるアドバイスは、その人間性をいかにきちんと伝えるかの手段でしかないのです。
 ましてや面接での質問に対する答えやESの内容に正解などあろうはずもありません。過度の情報に右往左往する時間があったら、さまざまな体験を通して人間性を磨くことです。

・広大生(というか、国公立大学の学生)のポテンシャルは、意外なほど高く評価されている
 もちろん、大学での研鑽、教職員の皆さんの努力もありますが、全般的には入試制度が影響しています。入試では一般的に共通テストで7科目以上を課されます。3教科以外は捨ててかかる私学とはまるで違います。この制度による学習歴が社会人になってからジワジワ効いてくることを、企業はよく知っているのです。
 文系の数学、理系の国語社会は昨今、仕事で直面することが増えています。もっというと、必須の知識になっています。
 どんな職種であれ、いまはパソコン無しでは仕事は進みません。なかでも表計算ソフトです。数字を理解する、計算式を立てる、ちょっとしたプログラムを使ってさらに高度な使い方をするといった表計算ソフトの生かし方は、数学の能力に依存します。また、数学をきちんと学ぶなかで論理的に思考する力が養われています。数学ができないばかりに仕事をバンザイしてしまう中高年(いわゆる働かないおじさん)が膨大に生み出されています。また、仕事を進める上で論理的に考えることなく直感で判断して失敗する事例が、あまりにも多いのが現状です。
 理系の場合は、自らの仕事を企画書やマニュアル、設計書、報告書など、さまざまな関係者に向けて伝達する必要があります。それは国語の能力です。また、海外で仕事をする機会が多いのも、じつは技術者です。歴史や地理の知識が欠けていれば、異文化の人物、異国を理解し、信頼関係を結ぶことができません。
 入試における英語の重要性は文系だけではないのですが、社会人になってから英語を必要とする機会はむしろ理系の方です。私学の理工系学部入試では英語が必須でないところもありますが、それで将来どうなるのか、他人事ながら不安になります。
 決して得意ではないかもしれないが、少なくとも最低限の知識、能力が担保されているのが広島大学はじめ国公立大学の卒業生だと評価されています。「やったことあるけど苦手」と「やったことない」というのは雲泥の差なのです。大学の中にいると当たり前になっているので気づくことも少ないのですが、この能力は誇るべき部分です。

 ただし、ビジネスのリアルを知らない、科学技術から流行、芸能まで広く社会の最先端に直接触れていないってところは、正しく決定的なハンディです。
 もしあなたが経済的時間的な余裕があるのであれば、東京大阪あるいは海外など、広島を出て見聞を広める機会を何度も作ることをお薦めします。これが、広大生にとってはもっとも有効な就活対策です。
 田舎者と馬鹿にするヤツなんて、本当は自分に自信がないだけなので、相手にする必要はありません。

 最後にもう1点、東京で働いているみなさんの先輩方とお会いすることが多いのですが、もうひとつの共通点があるように思います。
 とある友人(広大卒じゃない)が、同じ職場にいる広大OBのことをこう評していました。
 「あいつは見た目はチャラいが根は真面目。逆は山ほどいるが、あんなの見たことないぞ」
 チャラいかどうかは別にして、ワタシも広大OBOGに似たような印象を持っており、これを「広大真面目伝説」と呼んでいます。そうです、あなたの隠れた取り柄は「まじめ」であることなのです。もちろん、例外もあるでしょうけどね。

 先輩たちが築いてきた広大の看板は決して小さくない。自信を持っててっぺんにチャレンジしてください。

 (出版社勤務 編集者 総合科学部1985年卒)

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