正しく間違ってはいけない「出る杭求む」

よく見かけますよね、求人広告での売り文句、「出る杭を求む」。他にも「個性を最大限発揮できる職場」とか「新しい発想こそ宝」とか「自由に暴れ回れ」とかなんとかかんとか。

なんだか自分が生き生きと光り輝いている社会人になる夢を持ってしまいますよね。ほぼ魔法に近い売り文句なんですが、これは「自分が一番、縛り付けられる社畜人生御免被る、ノビノビやりたい」って就活生の本音になんとか寄り添おうという採用者の、前掛かりになった気持ちの現れでもあるのです。

正直に言いますと、「よくもどの口でそんなこと」って私は思ってしまいます。就活生は、こうした惹句の前提になっている会社の理屈を知っておかないと、「あれっ違うじゃん」から早期退職、漂流の人生になりかねないと心配になります。

こうした一連の個性尊重のこと、とりあえず「出る杭」とでも名付けておきましょう。
この出る杭について企業のスタンスは4つのグループ分けができます。

1. 本当に出る杭として好き放題にやらせてその成果を期待する
2. 会社が考える範囲での出る杭を期待している
3. 採用のために出る杭とは言ったものの、現場にその意識はない
4. はなから出る杭は迷惑極まりないし、採用で口にもしていない

もちろん就活生は「1.」を期待するのでしょうけど、こんな会社、ごく少数しかありません。会社が傾かない範囲でありとあらゆるトライアルをして、10に1つでも成功できればそれでオッケーという、ITサービス系や、あるいは飲食業や一部のサービス業のように最先端の流行を取り入れ続けることで競争力を担保するような業態。最初から倒産上等の一発勝負に出ているベンチャー企業もそうですね。他には社員個人の創造性がそのまま本業になる、極端な例を挙げれば、社員としてアーティストやお笑い芸人を雇うような業態です。

罪なのは「3.」の場合で、たとえば開発の仕事のはずがコールセンターで顧客対応とか、広告制作といいながら飛び込み営業とか、いざ配属になったら怖い顔した上司が「人事がなに言ったが知らぬが、まずは5年は修行だ」と激ツメしてくるとか、まぁいろいろありまして、その数は決して少なくない。

こうした採用と現場の乖離がある企業はOBOG訪問で見抜くしかありません。

問題は「2.」です。たしかに会社はフレッシュなセンス、若い世代に刺さる視点、若いからこその情熱に期待はしています。実際に事例も数多く在ります。ただし、その前提となっているものがあります。それは「決められた土俵の上で、決められたルールに従って、決められた範囲まで」ってことです。野球にラグビーのルールを持ち込んじゃいけないし、場外乱闘とかギャンブルの穴埋めにカネをくすねるような真似は論外なのと同じです。

駆け出し社員にとって難しいのは、決められた土俵やルールってのが暗黙の了解で出来上がっていることが多いことです。「空気を読む」とはそういう意味だし、空気が読めるようになるまでは、好き勝手はできない、それが出る杭会社にとってのごく当たり前のルールなんです。

となると、出る杭企業の面接やESで自分の出る杭ぶりをアピールするのは、ちょっと気を遣わねばなりません。こうした企業には、過去に採用した「出る杭社員」がはじけすぎて失敗した経験があるので、自分たちにとって心地よい程度の「出る杭」を採用しようとしています。そしてそれは就活生の考える出る杭とは、レベルも方向性もかなり違うものなのです。

企業の出る杭アピールは会社を選ぶ上での参考程度に考えて、自分が出る杭になれるかどうかは採用側が判断すること、程度に流しておくべきです。

もう一点、みなさんが気がついて欲しいところがあります。「出る杭」など一切アピールしていない企業が結構な数、存在することです。「ないこと」に気づくことは難しいとはこういうことですが、気にしてみると、意外な人気企業が「個性」や「出る杭」に一言も触れていないことに気づきます。

その代表的な企業、具体名は記せませんが、つねに就職人気の上位に名を連ねるインフラ系企業がそのひとつです。当の企業の人事担当者がこっそり教えてくれました。

「うちの会社では個性は重視していません。なによりも顧客の安全を第一に考えてチームワークで業務が進められているので、手前勝手に個性を発揮されるのは危険極まりないことなのです」。そのような企業では、自然とチームワークやリーダーシップが身に染みついている体育会出身者とか、調整・協調型の人間が評価されます。

出る杭は反面、協調性に欠ける面があります。個性はいいことばかりじゃないってことは教えられることが少ないので、気をつけなければなりません。

ただし、最初から個性全開でできる仕事もあります。それはあなたが自ら起業することで、ならば最初から好き勝手、やりたいようにできます。ただし、上場までこぎ着けて億の二ケタを手にする確率なんて0.1%もなく、しかもその成功者の多くは大手企業からのスピンアウト組、つまり空気の読み方が分かった人だということは、知っておいても損はありません。

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