新社会人に辛口の祝辞

新社会人となった皆さん、新しい人生の門出をお祝いいたします。

薄々お気づきだったかも知れませんが、大学というのは、あなたを守ってくれるきわめて恵まれた環境でした。最高の温室です。そこでの人間関係は利害関係抜きの仲間でした。失敗の責任も多くを問われることはなかったはずです。

しかしこれからの人生は違います。あなたは、無限の自己責任と孤独に向き合うことになります。社会に出れば、だれもが現在進行形で経験することです。

教育、労働、納税。ご存じのことかと思いますが、これは国民の3大義務です。皆さんは大学を卒業している(ということは、中学校を卒業している)から教育の義務は達成しています。これからは、大学生であることで無縁でいられた「労働」と「納税」についての責任を全うしていかねばなりません。

新社会人にとっての納税とは、ほとんどが労働の先にあるものなので、まず心がけねばならないのは、労働です。

企業にしろ公的機関にしろ、多くはないかと思いますが起業やフリーランスにしろ、皆さんは新社会人として労働にたずさわることになります。働いて、経済的な自立を果たし、納税の義務を果たさねばなりません。

ただし、どんな仕事をしろ、とは誰も求めていません。どんな職業選択は保証された自由です。裏返せば、職業選択もあなたの自己責任です。職業斡旋や生活保護など、最低限のセイフティーネットは用意されていますが、黙っているうちはだれも助けてはくれませんし、有益な助言を得る機会もそんなに多くはありません。

だれも助けてくれない、つまりあなたは、そして誰もが孤独なのですが、この孤独こそ自分で解決していかねばならないことは、あまり指摘されることがありません。孤独であることに気がついていない人も、少なからずいるものです。

仕事場では多くの仲間との出会いがあります。そのなかに、無二の親友や恋人との出会いもあるでしょう。ただし、間違ってはいけないのは、仕事の上での仲間は、基本的に仕事という共通の利益がある前提でのつながりです。意識しているかどうかはさておき、仕事上のメリットを計算して人間関係ができあがっているのです。本当の友達になるためには、仕事を超えた信頼関係づくりが必要です。

また、その仕事についての勘違いも時間がたつほどに生まれてきます。

これから何年か経験を積むうちに、大きな成果を上げる、高い評価を受ける、ひいては出世を遂げる経験もすることでしょう。

しかし、考えてみてください。あなたの仕事は、あなたひとりの力で成し遂げたものでしょうか。

会社や組織の看板があり、そこでの資金や設備が用意され、仕事を支える仕組みがある。職業教育をしたのも就職した組織。成果があろうなかろうが日々の暮らしは給料というカタチで保証されています。成果とは、そのなかで成し遂げただけのことであり、それはあなたの力が何十倍にもかさ上げされた結果でしかないのです。出世だって、その組織の中で評価されただけで、世間一般の評価基準はまったく別のところにあります。

社会人生活は長くなればなるほど、自分自身の評価に対する誤解が積み重なっていきます。まったくもって砂上の楼閣です。仕事を離れた途端に、仲間が冷たくなる。会社の後ろ盾がなくなったとたんに、仕事がうまくいかなくなる。体を壊してしまったら、ハイさようなら。はるか先のことに思えるかも知れませんが、定年退職したとたんに、何もやることがなくなる。ほとんどの人が経験し、あるいは目の当たりにしていることです。

転職の際に「あなたは何ができますか」と問われて「わたしは部長ができます」などと、間抜けなことを真剣に答える、どうしようもない無能な社畜は驚くほど多いのです。

長く社会人を続けていくうちに、自分が孤独であること、すべては自己責任であることが間違いなく見えなくなっていきます。偉い人もそうでない人も、そしてあなたもまったく同じです。

皆さんには、そうなって欲しくない。押しつけがましいようですが、そのような親心から、あえて厳しい現実をお伝えしている次第です。

これからの人生を歩んでいく上で、3つのことを常に心がけるようにして欲しいというのが、ワタシからの新社会人になるあなたへのアドバイスです。

1 仕事に関係のない友達を作り、大切にすること
2 常に自分の能力、社会的評価を客観的に意識すること
3 森羅万象を学び、心身を鍛錬、見聞を広め教養を深めること

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