傾聴する姿勢があなたを劇的に変える(はず)

2022年7月の参議院議員選挙、いつもながらテレビの開票速報番組は、いろんなことを考える機会を与えてくれます。なかでも名物となった池上彰氏の番組で、「政党はどうやって候補者を選んでいるのか」を担当者に聞きに行くコーナーがありました。

そこで登場した日本維新の会の担当者が候補者(の候補者)へのアンケート項目を紹介するのですが、もっとも重要な要素として挙げたのが「協調性」でした(そして創設者である橋下徹氏は、もっとも協調性に欠けていたというオチがつくのですが)。

協調性が重要なのは、なにも政治の世界だけではありません。企業であっても公共的な仕事であっても、チームの一員となる以上、協調性が問われることは言うまでもありません。

では、協調性の正体とは何か。

先を急がず、もうひとつ事例を紹介します。

アメリカをはじめとして先進各国の有名大学がMBAコースを開設しています。そこでは、世界中の有名無名企業の経営戦略を調査研究し、それを元に学生を鍛え上げて、明日の経営者を育て上げていることは、みなさんもご存じのことと思います。なかでも歴史と実績で最高の評価を得ているMBAのひとつがハーバードビジネススクールです。

そこが発行している経営論文誌に、じつに興味深い論文が掲載されています。

「DESIGNING WORK THAT PEOPLE LOVE」(邦訳は「ダイヤモンド・ハーバードビジネスレビュー」2022年8月号、「従業員が仕事に愛情を持てる職場を作る」マーカス・バッキンガム著)です。

粗々紹介しますと、

・米国企業では退職者が記録的な水準に達しており、経済のあらゆるセクターが欠員の補充に苦慮している
・世界中の勤労者に調査してみたら、長く勤続し企業に高い貢献をしている人の共通点は、賃金水準でも勤務地でも組織への忠誠でもなかった。
・重要なのは「楽しく仕事ができた」「チャンスに恵まれた、チャンスを与えられた」という気持ちである

問題は、楽しい仕事、チャンスとは、ひとそれぞれ十人十色、千差万別で業績評価や組織が考えるキャリアパスなどカタにはめることはまるで不可能であって、著者は代わって「LOVE&WORK」という概念を提示します。要するに、数字の積み上げや人事評価システムではなく、愛情と信頼を持って従業員に向き合うことをマネージャーに求めているのです。論文では、世界的アウトドア用品企業が定期的にキャンプファイヤーやハイキングを実施して、従業員を深く知る取り組みを紹介しています。日本企業であれば、アフター5の飲み会とか会社主催のレクリエーションイベントになるでしょうか。

これまでの組織のあり方の変化を振り返ってみても、時間を30年も40年も巻き戻すような話です。ガチな昭和型大家族主義企業こそが、競争力を培うことになる、そんな風にも読めます。こんな言説が、ドライで、個人主義で、ゼニカネが何よりも先に立つアメリカの、経営学教育機関から発せられた最新論文が説く教えであることに驚きを隠せません。

愛情を持って信頼関係を構築する、十人十色のメンバーの個性を知るためにはどうしたらいいか。

それは「心を開いて、相手の言葉を傾聴する」こと。洋の東西を問わず太古の昔から変わらない、この姿勢に尽きます。先に挙げたハイキングや飲み会も、傾聴のための下地づくりだと考えれば、腹落ちするのではないでしょうか。

さて、協調性に戻ります。協調性のベースにあるものは、相互の理解と信頼です。これがあってはじめて、相手に理解を求めたり持論を譲ったりしながら最適解を見つけられるわけで、協調って、その結果です。

理解をするためには、相手が何を考えているのかを知らねばなりません。まず、予断を持たずに相手の考えを聞く。分かるまでとことん聞く。つまり傾聴です。そして、自分の考えを理解してもらう。お互いをよく知ることで生まれるのが信頼です。然る後に納得いくまで共同して答えを探す。一連のプロセスを勧める能力を「プレゼン能力」「論理的思考」「問題解決力」などとMBAでは教えているのです。

繰り返しになりますが、そうした能力の出発点が「傾聴」なのです。相手の心をちゃんと把握できなければ、議論が平行線となるか、誤解から生まれた憎しみを持ってしまうか、見放されてしまうか、いいことは一つもないのです。

ある有名企業経営者が講演でこう述べていました。「ビジネスで不可欠とされるコミュニケーション能力って、つまりは聞く能力なんです」

ほら、ここでも傾聴が出てきました。

何事に取り組むにせよ、まずは傾聴から始める。仕事も家庭も友人関係も全て同じです。これができれば、あなたを取り巻く人間関係は劇的に変わる、、、はずです。

正直にいえば、イラチで頑固なワタシにとって、時に無理難題をふっかけてくる奥さんの話を傾聴することって、とても苦手なことなんですけどね。

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