広大OB田中太郎~リアルを語る~第17弾 「同期が先に昇進しました、悔しいです」

Q. 同期が先に昇進しました。ちょっと悔しいです

A. 4月は多くの企業で新しい事業年度のスタートの時期です。これに合わせて組織改編や新入社員の入社がありますし、昇進の辞令も出されます。人事はビジネスマンの最大の関心事。悲喜こもごものドラマが展開されます。

 じゃぁ昇進すれば勝ちか。一面的にはそうです。
 昇進すれば給料が上がり、権限も拡大し、社内外からの見る目も変わります。それはとても気持ちのいいことでしょう。なによりも、心理学者のマズローが定義した「承認欲求」、つまり組織内で認められたってことが大きな満足に繋がります。
 しかし、こうしたメリットには必ずデメリットもついて回ります。分かりやすくいえば「人相が悪くなる」ことです。

 どういうことか。

 ある企業の社長経験者がため息交じりにこう言っていました。「社長時代はカネのことばかり口にするカネ太郎だったなぁ」。
 営利企業である限り、企業と企業の最高責任者には売上げと利益に最終的な責任が課せられます。対外的にはにっこり笑って企業の社会的使命を口にしていても、本当のところ四の五の語った理想を実現する余裕はまったくないのです。かっこいいことを口にしたら外の人たちの評価が高くなって、結果的に儲かるから、そうしているだけなのです。

 もちろん、心の底から「カネ儲け命」なんて人間はそんなにいるものではありません。でも、トップがカネに無頓着になったら企業はあっという間に倒産です。だれかがカネの亡者の役割を演じて組織を締めなければならないのです。それが企業のトップの宿命なのです。
 程度の差こそあれ、昇進とは部門のタスクと利益に責任を持つ立場になることを意味します。仕事にはトラブルがつきものです。ヒラなら言い訳が許されても、組織のリーダーは数字に言い訳をすることは許されません。数字達成のためなら言いたくもない一言もいい、やりたくない仕事もせねばなりません。プライベートは二の次です。こうして、上に立つ人間はどんどん人相が悪くなるのです。憎まれ役の代償として、少し多い給料と権限と名誉が与えられるとするのがまっとうな考え方です。

 昇進を目指すなら、その悔しさをバネにがんばればいいでしょう。しかし、いまどきの働き方は、必ずしも栄達を求めるばかりが価値あることとは考えなくなりつつあることは頭に入れておくべきです。ワークライフバランスってそういうことです。

 先日、中高年の転職についての週刊誌の特集記事を読みました。転職マーケットで苦労するのは、大手企業の管理職だと書かれていました。どの企業でも同じですが、管理職としての能力には社内の人脈など、多分にその会社限定の要素が含まれています。それを取り除いていったら、残るものは、現場を知らない、威張ることだけは長けた扱いにくいおっさんです。
 ならば、現場の仕事に通暁していた方がよほど社内外での評価を高めることにつながります。「誰がなんといおうが、この仕事はワシしかできない」。こういう達成感をマズローは「自己実現欲求」と呼んで、「承認欲求」より上の最高位のモチベーションと位置づけています。その視点では昇進は無意味です。

 死ぬときに後悔することのひとつに「仕事ばかりした」という声が多いってことをホスピスの医師が書いた本で知りました。
 あせったりうらやんだりする必要はまったくありません。残業なんてほどほどにして、自分のペースで生きることです。同窓会にも顔出して仕事場以外の友達を増やしましょう。

 待ってますよ。
 

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