苦手分野は中学生に戻ってみればなんとかなる

中小企業経営者を対象に産業育成を手がける公的機関の担当者に話を聞いたことがあります。この種の組織では数多くの講演会、セミナーを開催するのですが、登壇する人には同じお願いをするのだそうです。それは

「聞いている人たちは小学校5年生だと思って話をしてください」

そのレベルまで下りて話をすると、事後のアンケートで評価がグーンと高くなるとのこと。

それはもちろん、「分かりやすかった」ってことですが、なにも中小企業が小学校5年生レベルの知識で経営されているって訳じゃありません。

「分かりやすかった」というのは、「分からないところがなかった」という意味だと捉えなければなりません。

人間だれしも得意とすることがあります。逆に苦手なものがあります。完璧に全方位が得意なんて天才は、ほぼ存在せず(ほんのときたま、それとおぼしき人がいるものですが)、得意と不得意のでこぼこでできあがっているのです。

中小企業経営者であれば、得意分野なら大学院レベルの話でも、あるいはそれ以上でも食いついていけます。そこで闘っているのですから当たり前です。しかし、苦手分野だと、長年積み重なったコンプレックス含めて、まったくのお手上げです。

じゃぁ、その人それぞれの苦手分野は、どのレベルだと考えたらいいのか。経験則から生まれた、その相場観が小学校5年生です。小学校5年生レベルで話を砕いていけば、どんなでこぼこの人にも最大公約数的に理解してもらえる、だから分かりやすい、SNS的に言えば「いいね!」をたくさんもらえるようになるのです。

これを読んでいるアナタにも、得意と苦手があるはずです。科目名でたとえれば、数学、国語、歴史、生物、、、まぁ森羅万象、あらゆる分野ででこぼこが発生しているはずです。

それでも、日々の生活はときに残酷です。苦手な分野についても、あなたに解決を迫ってきます。仕事で統計解析に向き合わなくてはならなくなった。子どもに生き物のことをしつこく問われるようになった。外国人とのつき合いをせねばならない。ある地域での活動のためには歴史的背景を知っておく必要に迫られている、、、。

「苦手だからパス」と逃げることは可能かも知れませんが、それじゃ人生が縮小衰退のスパイラルに落ち込んでいくだけです。

苦手のでこぼこをどこで設定するか。これを読んでいるのが広島大学の関係者であるという前提で言うならば、小学5年生とまでは行かないでしょうが、中学校レベルで取り残されているって点が多いのではないかと考えます。

ならばと、その苦手克服するために、手っ取り早くその世界の先端に触れようとする人は少なくない。かくいうワタシも、妙なプライドが邪魔をしたからか、背伸びしていきなり先端に取り組んでえらく苦労をしたことが数多くあります。今どきの話題で言えば、北条義時の事跡を辿る、あるいはノーベル賞を受賞した遺伝子組み換えの技術を学ぼうとするようなものですが、にわかにはまったく理解できない以上に、ピンポイントの知識しか持たないと正しいかどうかの判断も下せず、近接分野への応用もままなりません。

理由は簡単で、基礎ができていないからです。沼地に高層ビルを建てようとしても、どだい無理なのです。

そうじゃなく、平安から鎌倉、室町期の時代の流れをおさらいするとか、遺伝子の基本的な構造から学び直すとかすれば、結果的に必要な知識を早く手軽に血肉化できるのです。

その基礎が、中学校レベルです。

歴史なら、教科書や参考書もいいでしょうけど、最近の歴史学習漫画はどれも出色の出来です。生物学も、子ども向け図鑑がかなり高度なレベルまで解説しています。英会話なんて中学校までの語彙と文法しか実際には使いません。国際情勢を描いたマンガなら『ゴルゴ13』と言われてきましたが、最近は『紛争でしたら八田まで』の評判がいいようです。ワタシ個人の話でいえば、高校時代から化学が苦手で、それがために理系進学を諦めたのですが、最近、化学とは要するに元素間の電子のやり取りであり、やりとりを決定するのはイオン化傾向であると教える本(『暗記しないで化学入門』平山令明 講談社)に出会って、目からウロコが落ちまくる(そして役にも立たない後悔をする)経験をしたところです。

分かりやすいニュース解説といえば、ジャーナリストの池上彰さんが活字でもテレビでもひっぱりだこですが、この方のベースはNHKの社会部記者時代に「週刊こどもニュース」の担当となったことをきっかけに作られています。当初は「子ども向け」と馬鹿にしていたのですが、根本のところからちゃんと語らないと分かってもらえない、じつは自分も知ったつもりになっていることがたくさんあったと大意、いろんなところで回顧しています。そうやって子どもにも分かるような報道とは何かを、苦労しながら突き詰めていった蓄積・ノウハウがあるから万人に理解してもらえるのです。

なんのことはない、池上彰さんが新聞やテレビで解説しているのは子ども向けであって、受け取る側は勝手に大人向けだと勘違いして「分かりやすい」と感心しているだけです。

要するに、あなたの問題を解決するのは大学院ではなくEテレの中高生向け番組であり、図書館の専門書コーナーではなく児童書・学習参考書エリアなのです。

学習サイトもお薦めです。こういう場ですから具体名は避けておきますが、日本最大の就職情報・人材派遣会社が運営する「勉強栄養補助食品」みたいな名前のサービスでは、小中学生から社会人までラインナップが用意されています。あなたの苦手克服のためなら、中学の総復習など基礎レベルから学び直す授業も用意されている高校生対象のコースを選びましょう。評判の高い一流講師の神授業が月額2178円で見放題。博覧強記で知られる元外務省主任分析官殿も、これを利用して知識を日々アップデートしているのだとか。ネットゲームとかネトフリとかに無駄金使っている場合じゃないですよ。

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