支援を受けた学生のご紹介

Vol.13 STARTプログラム「インドネシアで学ぶ多様性」

名前: 髙橋 拓大

所属: 教育学部 第三類言語文化教育系 日本語教育系コース 1年

基金を活用し、STARTプログラムへ参加。
インドネシア教育大学へ2022年9月3日~2022年9月14日まで留学。

※START: Study Tour Abroad for Realization and Transformation
海外経験の少ない学部生が海外の大学を訪問し、現地学生との交流や日本と異なる文化・環境を体験することで、国際交流や留学への関心を高めることを目的としたプログラムです。長期休暇中の実施と、参加費用の一部を広島大学基金からの補助により、より多くの学生が留学する可能性を広げます。

派遣先大学はどんな大学ですか。

インドネシア教育大学(UPI)が位置する都市バンドンは、インドネシアの首都ジャカルタから南東に車で約2時間のところにある、比較的大きな都市です。バンドンはスンダ系文化の中心地であり、反帝国主義と民族自決の原則を提唱した「第1回アジア・アフリカ会議」が開催された都市でもあります。

UPIはその名の通り教員養成のための国立大学であり、将来教員になることを目指している学生が最も多く、中でも大学の教員を志す学生が多かったことが印象的です。学生の民族的、宗教的ルーツはスンダ系イスラム教徒やバリ系ヒンドゥー教徒など様々ですが、お互いの信仰を決して否定することなく、礼拝のための時間や宗教的な規則を配慮しあっている様子が見られました。

インドネシアで学んだことについて教えてください。

今回の留学では、「大学の世界展開力強化事業(アジア)」のSTARTプログラムとして、「包括性と多様性」というテーマのもと、その前半をUPIのあるバンドンで、後半をUPIの提携大学であるガネーシャ教育大学があるバリ島の北部の町シガラジャでインドネシアの教育や文化についての実際的な学びを得ました。

留学3日目にバンドン市内にある公立中学校を訪れました。この中学校では、イスラム教徒の生徒が最も多かったのですが、ヒンドゥー教やキリスト教を信仰する生徒も在籍しており、また教員も多様な宗教的ルーツを持っていて、校内では少数派となる宗教を信仰している生徒と同じ宗教を信仰する教員が必ずいるなど、皆に配慮が行き届くような体制が構築されていました。

また、この学校ではアニメの世界でしか知らない日本人と会うのが初めてという生徒が非常に多く、訪問した我々は映画俳優のように大人気でした。日本のアニメに影響を受けて独学で日本語を学ぶ中学生がいましたが、かなり流暢に日本語を話すので大変驚きました。

バンドン市内の公立中学校にて 
中央の子は日本語がほんとに上手!

留学4日目にはUPIの附属高校を視察しました。ここでは授業中に挨拶をさせてもらいましたが、先ほどの中学校とは打って変わってものすごく静かでした。質問もありませんでした。しかし、休み時間になると何人かで集まって私たちのところへ話しにきて、気づけば皆で楽しく話をしていました。ここで思ったことは、インドネシアの高校生も日本の高校生も同じだということ。(日本の高校生もこんな感じですよね) 留学に来てから日本との「ちがい」ばかりがたくさん見つかって、そればかりを意識していましたが、日本とインドネシアとで「おなじ」ところもあります。少しでもこれは「おなじ」だと感じるところがあるからこそ、「ちがい」を受け入れられるのかもしれないと感じました。

留学6日目にはバリ島のシガラジャへ移動しました。バリ島の中心都市デンパサールから車で山道を含め3時間かかります。ヒンドゥー教文化の根強い町です。

そして8日目にはブンカラ村を訪問しました。この村は遺伝的に耳が聞こえない1割の村民のために、他の村民のほとんどが常に手話を用いて会話するという村です。村にある小学校ではすべての授業に手話通訳がつき、健常者と聴覚障がい者とが同じ教室で学んでいるそうです。日本では障がいを理由に学習空間自体を分けてしまいますが、ブンカラ村では健常者が障がい者に合わせているのです。大変印象的でした。

UPI附属高校での授業の様子 黒板ではなくガラス板?

ブンカラ村のヒンドゥー教寺院

現地の学校を訪問するのは貴重な経験ですね。これからの学生生活にどのように活かしていきたいですか。

私は高校教員志望ですが、今回の留学での見聞を経て「外国にルーツを持つ児童生徒に対してどのような配慮をするべきか」についての考えを深めることができたと思います。信仰する宗教によって必要な支援は異なりますが、同一の宗教であっても信仰に対する熱量は個々によって異なります。したがって、日本の教育現場では外国にルーツを持つ児童生徒、その一人一人に対してどのような配慮が必要かを聞き取り、それに応じた柔軟な支援を行うべきと考えます。出身国や宗教で決して一括りにして考えてはいけないのです。また無宗教と言われる日本人は宗教を軽視してしまいがちですが、外国にルーツを持つ児童生徒にとっては宗教が生きる上で欠かせない所属意識になっているなど、生活と切り離せない重要なものになっている場合もありますので、その点にも注意が必要であると考えています。

将来は、外国にルーツを持つ児童生徒に対して、日本語指導が可能な高等学校国語科の教員を志望しています。
また来年度、第2外国語として履修している中国語をさらに強化するため、中国もしくは台湾の大学に半年間程度、HUSAによる交換留学ができればと考えています。

今回の留学では日本人があまり訪れることのない地域や施設などを訪問し、「本物の」インドネシアを見て学んでたくさん考えることができ、11日間の素晴らしい留学になりました。

UPI構内にて

 

(2022年10月取材/基金室)


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