支援を受けた学生のご紹介

Vol.17 「国際学会International Symposium on Avian Endocrinologyに参加して」

名前: 加藤 正暉

所属: 統合生命科学研究科 博士課程後期2年

基金を活用し、12th International Symposium on Avian Endocrinology (ISAE2022)へ参加。

参加した学会について教えてください。

International Symposium on Avian Endocrinologyは鳥類の内分泌学の分野に関する国際学会です。内分泌学とは、体内で作られる物質(ペプチドホルモンや神経伝達物質など)による、生体のさまざまな機能の調節や制御メカニズムを研究する分野です。本学会は、鳥類の生理、繁殖、遺伝、行動など多岐にわたる分野に関わる内分泌の最新の研究成果を共有することを目的に、4年に一度開催されています。

ご自身の研究内容について教えてください。

脳の中には本能行動(食欲や睡眠など)を司る視床下部という領域があります。視床下部の神経細胞は神経伝達物質やペプチドホルモンというメッセージ物質を分泌することで、行動をコントロールしています。所属研究室では、2014年に、この視床下部で分泌される2種類の新しいペプチドホルモン(NPGL、NPGMと命名)を発見しています。

私は、これらのペプチドホルモンが生理的にどういう機能を持っているのかということについて興味を持ち、鳥類(ニワトリやウズラ)を用いて、研究を行っており、これまでこのNPGLとNPGMがニワトリで肥満を誘導することを発見しています。

ニワトリを含めた鳥類では、脂肪を溜め込むメカニズムがまだ解明されていないことから、今後は鳥類の視床下部と肥満メカニズムの関係に焦点を当てて研究を進めていきたいと考えています。

学会での発表の感想をお聞かせください。

本研究会ではポスター形式で発表を行ったため、自身の研究内容について時間をかけて説明することができました。質疑応答では、日本語であればすぐに答えられる内容にも関わらず、瞬時に英語が出てこない場面があり、質疑応答の対策をもっとしておけばよかったと反省しました。

しかし、研究内容に対してはポジティブな反応が多く、自身の研究が国際的にも通用することを実感したことで自信にもなりました。将来はオーラル形式での発表も視野に入れて、英語能力の総合的な向上に努めていきたいと思っています。

学会会場の様子

学会会場前での集合写真

将来の進路や展望を教えてください。

私は修士号取得後、大学発の創薬ベンチャー企業の研究員として勤務した経験があります。
これまでの職歴を踏まえたうえで、今後のキャリアでは研究に関してより大きな責任を持つ役職に就きたいと考えるようになりました。博士課程修了後は、アカデミックでの研究職を志望していますが、これまでの職務経験を活かすために企業での研究職も視野に入れています。

企業の研究所には博士号取得者が多数在籍しており、社会人を経て博士号を取得した方や、様々な大学、研究機関、企業を渡り歩いた方、海外での研究員を経て帰国後に大学のポストや企業に就職した方など、キャリア形成の多種多様さを学ぶ良い機会となりました。その中で海外の大学、研究機関での研究活動に特に興味を持っており、博士号取得後の海外特別研究員などの制度に応募したいと考えています。

寄付者へのメッセージ

イギリスのエディンバラで開催された国際学会が、私にとって初めての国際学会の参加となりました。

コミュニケーションにも不安があり、とても緊張しましたが、様々な国の研究者の発表を聞くことで、どういった分野が今世界で注目されているのかを肌で感じることができました。また、自身の研究が、世界中の研究者に理解してもらえるかとても不安ではありましたが、多くの研究者に私の研究を聞いてもらう機会に恵まれ、ディスカッションも行うことができました。

今回の経験を通じて、自身の見識が広くなったと実感するとともに、これからも積極的に国際的な研究活動を進めていきたいと強く思いました。
このような機会を与えていただいた国際学会発表支援制度に、大変感謝しております。さらに、若手研究者に贈られるEarly Career Researcher Runner up Awardを受賞することができました。皆様のご支援に対して、形となる成果を得ることができとても嬉しく思います。これからもこの支援制度が存続されることを願っております。

イギリス、エディンバラ市内にて

 

(2023年3月取材/基金室)


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