支援を受けた学生のご紹介

Vol.5 「最先端のがん研究に触れ、研究活動に専念」

名前:臼井 颯哉

所属:先端物質科学研究科博士課程前期2年

基金を活用し、アメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)Moores Cancer Centerへ2020年1月~2020年2月までインターンシップ派遣。
 

インターンシップへ参加した経緯を教えてもらえますか。

 私が所属する大学院先端物質科学研究科は、医療系の学部・大学院や病院のある広島市の霞地区キャンパスではなく、東広島地区キャンパスにありますが、分子生命機能科学専攻の研究室では、バイオ、細菌、微生物等を扱った研究室も多く、また、私の研究室ではがんや免疫の研究を行っていました。実際に私は、がんになったときに診断できる腫瘍マーカーを見つけるための研究に携わっていました。
 そんな時に、このインターンシップの募集を見つけました。派遣先が世界トップレベルの研究や、最先端設備のあるUCSD校への派遣であること、活動内容には、優れた指導教員のもとで、頭頚部扁平上皮(とうけいぶへんぺいじょうひ)がんや唾液腺腫瘍に関する研究の実施や、基礎的な実験手技の習得などがあり、今後の自身の研究活動を考えると、意義があると思い、応募しました。また、派遣に係る費用の多くが奨学金として支給されることもとても魅力的でした。

インターンシップ先での研究はどのようなものでしたか。

 まず、UCSD校での研究室は、大学病院に隣接した建物にあり、がん研究を行っている研究室、診察や治療などを行う臨床施設で構成されていました。所属するJ. Silvio Gutkind教授の研究室では、学生、研究員、臨床の先生など様々な人々が研究活動を行っていました。
 そのような中で、がん細胞の増殖に関する研究を行いました。
 少し専門的な話になりますが、頭頚部扁平上皮がんをはじめとする多くのがんでは、特定の物質が異常に活性化(細胞増殖など)しており、それを抑制する治療薬の開発が望まれています。一方で、糖尿病治療薬のメトホルミンには、その特定物質の活性を抑制する可能性が示唆されていましたが、詳細が明らかではありませんでした。
 今回は、メトホルミンが、特定物質を抑制するメカニズムを解明するための研究を行い、メトホルミンを投与することでがんの増殖を抑える機能の解明に近づくことができました。

インターンシップを振り返っていかがでしたか。

 現地での指導教員である、安藤先生の丁寧な指導の下で多くのことを学ぶことができました。
 研究内容はもとより、実験手法、研究に対する姿勢など研究者として大切な経験ができたと心から感じています。ラボには優秀な研究者が多く在籍し、彼らとの交流の中で刺激をもらうことができました。がん研究のセミナーにも参加することができ、最先端のがん研究に触れることができました。
 UCSD校では多額の予算が投じられ、研究が行われています。予算があるため、実験手法の選択肢も幅広くあります。また、研究室の構成員は大学の教員、学生のほか、研究員が多く雇用され、研究内容についていつも議論が活発に行われています。この点は、アメリカの大学の強みであると感じました。一方で、日本での研究内容そのものが遅れているとは思わなかったことは、最先端の地に身を置いた中でも一つの発見となり、自信となりました。
 振り返ると、今回のインターンシップでは、派遣先での研究そのものだけではなく、先輩研究者や、仲間とのネットワークを築く貴重な機会にもなりました。何かあれば相談できる環境ができ、心強く思っています。また、インターンシップに参加する1年ほど前に、HUSAプログラム(広島大学の長期留学プログラム)で約10か月の間、スウェーデンへ留学経験があったことも、インターンシップを円滑に、有意義に過ごすことのできた一つの要因だったように思います。留学を経験していたことは、幸運でした。

将来の進路や展望を教えてください。

 大学で研究していることでもありますが、ヘルスケア関連の企業で研究者となり、医療や健康に関する研究開発を通じて社会に貢献したいと考えています。
 
 最後になりましたが、株式会社にしき堂様より、「にしき堂海外留学支援金」として奨学金を頂いたことに心よりお礼申し上げます。奨学生として採用頂いたおかげで、派遣先において最先端のがん研究に触れながら研究活動に専念することができました。

 

(2020年3月取材/基金室)


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